書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

『近代日本の「南進」と沖縄』後藤乾一(岩波書店)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 沖縄の問題は、近代日本そのものが問われるものであり、沖縄にとってだけでなく東アジアにとっての日本問題であったことが、本書を通じてわかってくる。帯にある「現代につながる難問を解く鍵は、沖縄にある」という意味を理解…

『廃墟の零年1945』イアン・ブルマ著、三浦元博・軍司泰史訳(白水社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「いまに続く戦後の原点」 以下の書評を、共同通信から2015年3月5日に配信した。 まず、本書を読むと、戦勝も敗戦も意味をなさないほどの混迷状況のなかで、第2次大戦直後にさまざまな悲劇が起こったことがわかる。この事実を知…

『アウンサンスーチーのビルマ-民主化と国民和解への道』根本敬(岩波現代全書)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 本書巻末の「参考文献」の「日本語文献」だけみても、アウンサンスーチー著6冊、「アウンサンスーチー」をタイトルにした書籍5冊がある。言説だけが先行し、2012年4月に下院議員に当選してからの実際の政治的手腕に疑問をもつ内…

『ナイチンゲールの末裔たち-<看護>から読みなおす第一次世界大戦』荒木映子(岩波書店)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「ナイチンゲール」のタイトルに惹かれて、本書を手にとった人がいるかもしれない。「看護師と雑役婦とが判別しにくかったこの時代に、下層階級から看護を取り戻し、看護師の社会的地位を高めた」ナイチンゲール(1820-1910)の…

『日の丸が島々を席捲した日々-フィリピン人の記憶と省察』レナト・コンスタンティーノ編、水藤眞樹太訳(マニラ新聞)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「本書は当初、日本人読者向けの出版物として企画され」たが、1993年に英語の原文がフィリピンで出版されたままになっていた。その「序」で、編者のレナト・コンスタンティーノは、つぎのように述べている。「日本人はこの間の…

『フィリピンの独立と日本-リカルテ将軍とラウレル大統領』寺見元恵(彩流社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 本書は、「15歳からの「伝記で知るアジアの近現代史」シリーズ」の3冊目である。このシリーズについて、裏表紙見返しでつぎのように説明されている。「欧米中心の偉人伝とは一線を画す、アジアの伝記シリーズ。本シリーズは、そ…

『新興大国インドネシアの宗教市場と政治』見市建(NTT出版)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「二〇一四年七月、大接戦の末、インドネシアに庶民出身の大統領が誕生した。混迷する中東や他のイスラームとは対照的に、宗教は社会に安定的に浸透している。民主化の進展とあいまって、インドネシアは二億五千万人の人口を背…

『兵士はどこへ行った-軍用墓地と国民国家』原田敬一(有志舎)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「靖国参拝の国会議員たち」も、「慰霊という、実は誉め讃える顕彰行為に没頭して、実際に埋葬されている人々や場に関心が薄い」。著者、原田敬一は、「「公」の名の下に国家が占有してきた「軍人の墓地」の歴史と実態を解明す…

『赤vs黄 第2部 政治に目覚めたタイ』ニック・ノスティック著、大野浩訳(めこん)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 本書は、同著者、訳者による2006年から2008年10月までをとりあげた『赤vs黄 タイのアイデンティティ・クライシス』(めこん、2012年)の続編で、2008年12月の民主党アピシット政権の誕生から2009年10月までを扱い、その後は第3…

『蘭印戦跡紀行-インドネシアに「日本」を見に行く』内藤陽介(彩流社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 近年まで、新発売の切手を買いつづけていた。切手からいろいろ学んできたからである。日本の国立公園や国定公園、動植物、歴史(○○周年記念)、国際学会の存在まで、切手に教えてもらった。いま保っているもののほとんどは額面…

『食べること考えること』藤原辰史(共和国)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「読者の食欲を減退させることがここでの目的ではない。目的は違うところにある。食べものは、祈りにも似た物語がなければ美味しく食べられない、という事実を確認するためだ。わたしたちは「食べもの」という幻想を食べて生き…

『アフリカを活用する-フランス植民地からみた第一次世界大戦』平野千果子(人文書院)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「一八八七年、フランスはそれまで植民地省の管轄にあったコーチシナ(南部ベトナム)とカンボジア、保護国で外務省の管轄にあったトンキン(北部ベトナム)とアンナン(中部ベトナム)を一括して植民地省に移管し、インドシナ総督の…

『インドネシア 創られゆく華人文化-民主化以降の表象をめぐって』北村由美(明石書店)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 本書の目的を、著者北村由美は、「序」の最後で、つぎのように述べている。「民主化とは、公正な選挙を行い、言論の自由を保証するための制度を確立し、そして国民の平等をどのように実現していくかという試行錯誤のプロセス[…

『「恩恵の論理」と植民地-アメリカ植民地期フィリピンの教育とその遺制』岡田泰平(法政大学出版局)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 植民地支配は、解放されて独立すれば終わりではない。それをもっとも如実に感じているのは、歴史研究者だろう。植民地時代を支配された側の視点で書くだけの充分な史料がないだけでなく、多くの史料が植民地支配を正当化するも…

『人間科学としての地球環境学-人とつながる自然・自然とつながる人』立本成文編著(京都通信社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 本書は、2001年に大学共同利用機関として設立された総合地球環境学研究所(地球研)の12年目の節目(初代所長6年間を引き継いだ編著者立本成文の退任)を記念して出版された。地球研のミッションである「人間と自然の相互作用環…

『靖国参拝の何が問題か』内田雅敏(平凡社新書)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 本書のタイトルの答えが、帯にある。「問題は歴史認識!」「中国・韓国の批判はただの言いがかりなのか?批判されているのは追悼行為ではない。先の戦争は正しかったという靖国の歴史観は、戦後の平和秩序をご破算にする!」。…

『漁撈の民族誌-東南アジアからオセアニアへ』秋道智彌(昭和堂)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 本書は、著者秋道智彌の40年に及ぶ東南アジア・オセアニアを中心に海や川べりを歩いた成果である。著者は、「現場で漁に参加し、獲れた魚を食べ」、つぎのように長年の調査を述懐している。「魚の獲り方や漁にかかわる人びとの…

『海に生きる-海人の民族学』秋道智彌(東京大学出版会)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「未来をになう世代へのメッセージとすることをねらい」とした最後の章「第6章 海の未来論-これからの海と人間」で、著者秋道智彌は、「本書の結論を先取りすれば、海への総合的な取り組みの重要性を提案することにほかならな…

『フィリピンと日本の戦後関係-歴史認識・文化交流・国際結婚』リディア・N.ユー・ホセ編著、佐竹眞明・小川玲子・堀芳枝訳(明石書店)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 本書の編著者、リディア・N.ユー・ホセ(1944-2014.8.3)は、2012年春「フィリピンにおける日本研究の発展及び日比間の相互理解促進に寄与」した功績で、日本政府から旭日中綬章を叙勲された。このフィリピンにおけるフィリピ…

『レイルウェイ 運命の旅路』エリック・ローマクス著、喜多迅鷹・喜多映介訳(角川文庫)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 本書は、2014年4月19日に日本全国でロードショーされた同名の映画(コリン・ファース、ニコール・キッドマン、真田広之ほか)の原作である。帯には、「英国人捕虜と日本人通訳の奇跡の実話」とある。「レイルウェイ」とは、太平…

『観光メディア論』遠藤英樹・寺岡伸悟・堀野正人編(ナカニシヤ出版)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「『メディアからの観光論』と『観光からのメディア論』が交差するところ」 「観光メディア」といったときに思い浮かぶものはなんだろうか。名所、史跡を網羅した旅行ガイドブック、地域の名店や名物料理を満載したグルメ雑誌、…

『日本は戦争をするのか-集団的自衛権と自衛隊』半田滋(岩波書店)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 日本が戦争をすれば、まず最初に戦闘に参加するのは自衛隊である。その自衛隊の現場の声が聞こえてくるのが、最後の章である「第6章 逆シビリアンコントロール」である。その最後は、つぎのことばで締めくくられている。「自衛…

『集団的自衛権と安全保障』豊下楢彦・小関彰一(岩波書店)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「「他国防衛」のための戦争が日本の安全を高める、という論理を根底から問い直す」と帯にある。本書の1節でも理解している国民が大多数を占めれば、本書は無用の長物になる。だが、現状は首相の「国民に分かりやすく」のことば…

『ALL ABOUT ALASKA アラスカへ生きたい 』石塚元太良 井出幸亮 (新潮社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 古代より多くの人間たちがその厳しい自然の中に何とか爪痕を残そうと悪戦苦闘を続けてきたこの土地は、一筋縄ではいかない。簡単に商業化され、レジャーランドになってしまうようなヤワなエリアではない。もちろん、世界屈指の…

『新興アジア経済論-キャッチアップを超えて』末廣昭(岩波書店)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 本書は、著者末廣昭が、2000年に出版し、2008年に増補改訂版を英語で出した『キャッチアップ型工業化論-アジア経済の軌跡と展望』(名古屋大学出版会)の続編である。だが、副題「キャッチアップを超えて」に示されているよう…

『復興の文化空間学-ビッグデータと人道支援の時代』山本博之(京都大学学術出版会)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 5.03, 5.69, 5.50, 6.35, 6.01, 4.63, 6.22, 6.49, 6.26, 5.78%。これらの数字は、2004年以降のインドネシアの経済成長率をあらわしている。2004年12月26日のスマトラ島沖地震・津波、2005年3月28日のニアス地震、2006年5月27…

『ファストファッションークローゼットの中の憂鬱』クライン,エリザベス・L【著】鈴木 素子【訳】(春秋社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 ここ10年あまりのあいだにファッション業界を席巻したファストファッションブランド店や、ディスカウントストアばかりで買い物をしつづけ、気がつけば、クローゼットの中の服の平均価格が30ドルほどだったという著者。不景気の…

『災害復興で内戦を乗り越える-スマトラ島沖地震・津波とアチェ紛争』西芳実(京都大学学術出版会)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「津波で何もかも失ったのに、アチェの人たちはなぜみんな笑顔なんですか。」著者、西芳実は、この問いに答えるために、本書で「二〇〇四年一二月二六日に発生したスマトラ島沖地震・津波で甚大な被害を受けたインドネシア共和…

『近代東アジア史のなかの琉球併合-中華世界秩序から植民地帝国日本へ』波平恒男(岩波書店)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 本書の要約は、カバー見返しに、つぎのように要領よくまとめられている。「従来「琉球処分」は日本史の狭い枠内で、近代的な国家形成・民族統一・国民形成などの一環として解釈されてきた。「琉球藩」設置は、琉球人遭難事件を…

『インドネシア 九・三〇事件と民衆の記憶』ジョン・ローサ、アユ・ラティ、ヒルマン・ファリド編、亀山恵理子訳(明石書店)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「訳者あとがき」の冒頭で、本書について、つぎのように説明されている。「本書は、インドネシアの民間団体である「市民による調査とアドボカシー研究所」「人道のためのボランティアチーム」「インドネシア社会史協会」の三団…