書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

近代ナリコ(こだい・なりこ)

『世界のかわいい刺繍―世界各地の民芸品、アンティーク、フェアトレード、作家の刺繍』(誠文堂新光社)

→紀伊國屋書店で購入 下着デザイナー・鴨居羊子の初期の作品(下着会社チュニックの商品)には、鴨居自らが刺繍をほどこしたスリップやショーツがあったという。下書きなしで、薄い布地に直接チクチクと針を刺していったというのは彼女のデッサン力と手先の…

『孕むことば』鴻巣友季子(中公文庫)

→紀伊國屋書店で購入 幼い娘のことばと、それを獲得してゆくさまをみつめる母親/翻訳家の発見と考察とが織りなすエッセイ。 いわゆる幼児語や、誰しもが必ず通過する「いけないことば」を連発せずにいられないあの一時期、架空のお友だち(著者の娘さんのそ…

『女の旅 ―幕末維新から明治期の11人』山本志乃(中公新書)

→紀伊國屋書店で購入 みまわせば、旅好きなのはきまって女子。ひとり旅、友だちとの旅、三十過ぎたころからは母親とのふたり旅というのもよく話にきくようになった。留学経験があるのも女子が多い。特に、一度学校を卒業して社会へ出てからふたたび海外で学…

『ある女流詩人伝』池内紀(青土社)

→紀伊國屋書店で購入 艶笑詩人として知られるドイツの女性詩人の伝記である。 ユーリエ・シュラーダー。十九世紀末から二十世紀はじめのドイツ、帝政ドイツ時代からナチス政権下までを生きた彼女は、生涯に二千篇もの詩を書いた。発表されたものはそのうちの…

『股間若衆 男の裸は芸術か』木下直之(新潮社)

→紀伊國屋書店で購入 こかんわかしゅう。 まるで男色をテーマにした洒落本のタイトルのよう、と、副題には「男の裸は芸術か」。そう、これは男性裸体表現をめぐるいたって真面目な論考なのだった。 きっかけは、著者が赤羽駅前で発見した男性裸体彫刻である…

『痕跡本のすすめ』古沢和宏(太田出版)

→紀伊國屋書店で購入 古書店の店先に、買い取られてきたばかりらしい、整理もされてないまま紐で括られた、「古本」という商品になる以前の物体が無造作に置かれてあるのをみると、虫食いの葉っぱがそのままだったり、まだ泥がついたままだったりする採れた…

『表参道のヤッコさん』高橋靖子(河出文庫)

→紀伊國屋書店で購入 著者は日本におけるスタイリストの草分け的存在。6、70年代、カメラマンや編集者など、多くのクリエイターたちが事務所をかまえていた伝説的アパート、原宿セントラルアパートにあった広告代理店から彼女のキャリアはスタートした。 あ…

『猫語の教科書―共に暮らすためのやさしい提案 』監修・野澤延行(池田書店)

→紀伊國屋書店で購入 旅、料理、手芸、ファッション、健康や自己メンテなど、最近の実用書には、いかにも実用書然としたのではない、おしゃれなデザインのものがおおい。 実用書といえば!の池田書店のものにもその手の本がいろいろとある。そういえば、現在…

『オオカミの護符』小倉美惠子(新潮社)

→紀伊國屋書店で購入 きっかけは、一枚の護符だった。「武蔵國 大口眞神 御嶽山」という文字の下に、黒い犬のような獣の図像が描かれているその紙切れは、生家の土蔵の扉に貼られていた。 著者はそこから、地元でひっそりと受け継がれている「御嶽講」の歴史…

『富士塚ゆる散歩―古くて新しいお江戸パワースポット』有坂蓉子(講談社)

→紀伊國屋書店で購入 江戸の町のことを思うとき、まっさきに心に浮かぶのは、空気のおいしさ、そして、何にも遮られることのない富士の眺めだ。今の私たちとはくらべものにならないくらい、江戸の人たちは富士山と親密だったろう。けれども、実際に富士を詣…

『英国メイド マーガレットの回想』マーガレット・パウエル/村上リコ・訳(河出書房新社)

→紀伊國屋書店で購入 村上リコ『英国メイドの日常』では、さまざまな元メイドたちの回想録から当時の彼女たちの生活が紹介されていたが、そのなかでも英国でもっとも広く知られているのが、このマーガレット・パウエルの回想録である。 1907年、マーガレット…

『Cooking for Geeks―料理の科学と実践レシピ』ジェフ・ポッター・著/水原文・訳(オライリー・ジャパン)

→紀伊國屋書店で購入 温泉卵を作ろうとネットにあたると、沸騰したら火を止めて放置する、あるいはそのお湯に片栗粉を入れて湯の温度を保つという〝裏技〟、そのほか、魔法瓶を使う、電子レンジを使う、カップラーメンの容器を使う、一度卵を凍らせる等々、…

『猛烈に!アロハ萌え―HAWAII IN HAWAII』橋口いくよ(講談社文庫)

→紀伊國屋書店で購入 親戚や知り合いからの土産物「マカデミアナッツチョコレート」でしかハワイというものに接触したことのない私がなぜこの本を手に取ったのかといえば、年末の寒空の下、サマードレスやビキニの水着、スパムの缶、その他なにやらわからな…

『装幀のなかの絵 四月と十月文庫』有山達也(港の人)

→紀伊國屋書店で購入 口絵には、著者の祖母による一枚の絵。生まれ育った五島列島の風景を思い出して描いたものらしい。波間に浮かぶ緑の小島。遠くの水平線の沿って島の稜線が連なる。画面右下の岩場の上、海に向かって腰掛けているのは幼い日の祖母の姿だ…

『かんさい絵ことば辞典』ニシワキタダシ/コラム・早川卓馬(ピエ・ブックス)

→紀伊國屋書店で購入 京都から東京へ移ったばかりのころ、街中で耳に入ってくるのが関西弁でないのが、なんとも居心地わるかった。 関東に生まれ育った私は関西弁を話せないが、十何年の関西暮らしで耳は完全に関西仕様になっていたのだ。たまに帰省したとき…

『ラーメンと愛国』速水健朗(講談社現代新書)

→紀伊國屋書店で購入 ラーメン屋でラーメンを食べることがない私にとっても、昨今のラーメン屋店主にみられるあの妙な職人気質は、メディアを通して知られるところである。 『ラーメンと愛国』、このタイトルから直ちに頭に浮かんだのは、本書において〝作務…

『洋画家たちの東京』近藤祐(彩流社)

→紀伊國屋書店で購入 「彼等は食う為でなく、実に飢える為、渇するために画布に向う様なものである。」 帯にあるのは、漱石が朝日新聞に発表した文展評「文展と芸術」からの一文である。青木繁、村山槐多、中村彝、関根正二、長谷川利行……漱石のいうように、…

『〈女中〉イメージの家庭文化史』清水美知子(世界思想社)

→紀伊國屋書店で購入 よく、戦前の新婚の家庭に、「夫婦+お手伝いさん一人」が住むという描写を本で読んだり、大正から昭和はじめ頃の住宅関係の本などで、夫婦と子供二人が住む程度の小さな家の間取りにも三畳ほどの女中部屋があるのを見て、不思議な気が…

『くうねるところにすむところ:家を伝える本シリーズ26 おひとりハウス』篠原聡子(平凡社)

→紀伊國屋書店で購入 建築家が、子どもたちに向けて、さまざまな切り口から「家」を伝える絵本のシリーズ。 1994年、著者がはじめて設計した集合住宅「コルテ」は、ワンルームマンションだが、同じ部屋が一列にならぶだけの味気ないプランでは寂しいと、中庭…

『つぶれた帽子―佐藤忠良自伝』佐藤忠良(中公文庫)

→紀伊國屋書店で購入 北海道での幼年期、画学生時代、新制作協会の設立、シベリアでの抑留生活、戦後の再出発。粘土と静かに格闘し、理屈でなく体で表現し続けた彫刻家の自伝の文庫化である。一九一二年(明治四五)の生まれ、今年の春、九十八歳で亡くなっ…

『Made by Hand ポンコツDIYで自分を取り戻す』マーク・フラウエンフェルダー 金井哲夫・訳(オライリー・ジャパン)

→紀伊國屋書店で購入 これは、庭で野菜を育て、愛用のエスプレッソ・マシンを改造し、ニワトリを飼い、シガーケースでギターを作り、木でスプーンを掘り、紅茶キノコを仕込み、養蜂に挑戦する男の勇猛果敢かつユーモアにあふれた活動の記録である。 著者は、…

『もしもノンフィクション作家がお化けに出会ったら』工藤美代子(メディアファクトリー)

→紀伊國屋書店で購入 お盆の時期になるとよくTVで、怪談や心霊話を扱った番組が放送される。そういうものが苦手で、子どものころは、その手の話で盛り上がりそうになると、嫌がって耳をふさいだり歌をうたったりといった幼稚な行為にでてその場をしらけさ…

『正しいパンツのたたみ方 新しい家庭科勉強法』南野忠晴(岩波ジュニア新書)

→紀伊國屋書店で購入 妻のパンツを上手くたためない夫・Aさんの話から本書ははじまる。「たてに三つ折り→さらに三つ折り→先を穿き口にはさむ」という妻のたたみ方ができずに悩むAさん。妻からダメだしを食らうことしばしばなので、洗濯物の山をみると気持…

『英国メイドの日常』村上リコ(河出書房新社)

→紀伊國屋書店で購入 小学校中・高学年のとき、「演劇」と称するごっこ遊びが流行っていて、それはたいてい、シンデレラをはじめとするお姫様もののおとぎ話や、『小公女』や『嵐が丘』や、それを下敷きにしたような少女マンガや昼メロドラマがまぜこぜにな…

『ミドリさんとカラクリ屋敷』鈴木遥(集英社)

→紀伊國屋書店で購入 食道楽、あるいは着道楽と呼べる人になら、いまもお目にかかることはあるだろうが、普請道楽といったらどうか。家を建てたい人のための本は書店にたくさん並んでいるし、自慢のお宅拝見、といったテレビ番組もよくあるけれど、そうした…

『ザ・ママの研究』信田さよ子(理論社)

→紀伊國屋書店で購入 先日観た映画〈ブラック・スワン〉は、「白鳥の湖」の主役に抜擢されたバレリーナが、そのプレッシャーに絶えかねて破滅してゆくさまを描いたスリラー。世代交代の波に押しやられた前・プリマの絶望、配役をめぐってのバレエ団員同士の…

『ふたすじ道・馬 他三編』長谷川如是閑(岩波文庫)

→紀伊國屋書店で購入 明治二九年、二十一歳の如是閑が初めて書いたという小説「ふたすじ道」をはじめ、「お猿の番人になるまで」「馬」「象やの粂さん」「叔母さん」の五編を収録。 スリの少年、元軍人、露天商の男など、市井の人々を描いた四編とは異なり、…

『AQUIRAX CONTACT ぼくが誘惑された表現者たち』宇野亞喜良(ワイズ出版)

→紀伊國屋書店で購入 文庫本大の箱のなかに、リアルな極小の世界を作り出す桑原弘明。正確さの極みが、薔薇という対象への特別な愛を醸し出す豊永ゆきの植物画。シュルレアリスムというイズムを超えて、軽やかな即物性と偶然性を放つ勝本みつるのオブジェ。…

『きれいな風貌 西村伊作伝』黒川創(新潮社)

→紀伊國屋書店で購入 カバーをみてまず驚いた。日露戦争の徴兵を逃れるようにして、シンガポールに滞在していたときの写真の彼は21歳である。日本人離れした面立ち、民族衣装に身をつつんだすらりとした立ち姿はなるほど「きれいな風貌」だ。 2002年に開催さ…

『臍の緒は妙薬』河野多惠子(新潮文庫)

→紀伊國屋書店で購入 四つの短編が収められている。 表題ほか二編はそれぞれ、一風変わった物事にとらわれ、それを追求しようとするあまり、少々常軌を逸した行動にでる女性を描いた物語だが、巻頭の「月光の曲」だけは他とはかなり趣がことなる。 「月光の…