書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

辻泉(つじ・いずみ)

『白書出版産業2010』日本出版学会(文化通信社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「出版の大転換期を考えるための「事典」」 本書は、2004年に日本出版学会によって出された『白書出版産業』の続編、または改訂版にあたるものである。前作が1990~2002年の間の変化を対象としていたのに対して、本書は1999~20…

『いつかティファニーで朝食を』マキヒロチ(新潮社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「「28歳・朝食女子」たちの群像」 これもいいマンガだった。正直に記せば、あまり深く考えずに「衝動買い」したのだが、大当たりだったと言ってよい。いや、正確に言えば、評者は食べることが大好きなので、タイトルに「朝食」…

『君曜日-鉄道少女漫画2』中村明日美子(白泉社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「鉄道少年と鉄道少女のさわやかラブストーリー」 いいマンガである。久しぶりに爽快な読後感を味わった。 本作は、中村明日美子による鉄道少女漫画の2作目であり、前作同様、小田急線沿線に住む、登場人物が織りなすラブストー…

『私とは何か―「個人」から「分人」へ』平野啓一郎(講談社現代新書)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「ほどけゆく個人のゆくえ」 本書は、作家の平野啓一郎が、2009年の小説『ドーン』の作中で描いた概念「分人主義」について、スピンオフ的に別の著作にまとめあげたものである。 『ドーン』は近未来の社会を描いた小説であり、…

『凍りの掌―シベリア抑留記』おざわゆき(小池書院)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「記憶をめぐる情報戦」 本作は、作者の父親のシベリア抑留についての語りに基づいて構成されたマンガ作品である。50万人とも言われる日本人が抑留され、多数の死者を出したこのできごとについては、おそらくその重大さと比べる…

『重版出来』松田奈緒子(小学館)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「このマンガが「あえて」か「素」かに、出版業界の浮沈が掛かる」 本作は、長期的な不況に見舞われている出版業界の様子について、マンガの制作過程を中心に、マンガで描き出した、いうなれば「自己言及的」な作品である。 そ…

『メディアと日本人―変わりゆく日常』橋元良明(岩波新書)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「実証的なデータからメディア社会の変容を読み解く」 本書は、東京大学大学院情報学環橋元良明研究室を中心に、1995年以来5年おきに行われてきた「日本人の情報行動」調査の結果を元にして、メディア社会の変容を読み解いた著…

『UFOとポストモダン』木原善彦(平凡社新書)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「UFO論と社会の変容をパラレルに追求した傑作」 本書は、UFOやそれに乗ってくる宇宙人を題材としてはいるものの、その存在の真偽を問うことを目的としたものではない。 むしろアメリカをフィールドとしながら、そうした…

『検証・若者の変貌』浅野智彦(編)(勁草書房)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「90年代における日本の若者の変容を振り返る」 本書は、1990年代を中心とする若者文化における変容について、実証的な質問紙調査の結果に基づいて論じたものである。 第1章で編者の浅野智彦も記しているように、1990年代は「失…

『モノローグジェネレーション』小坂俊史(竹書房)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「誰もが、「よそ者/観察者化」する中で、織りなされるモノローグの饗宴」 本作は、漫画家小坂俊史のモノローグシリーズの最終作にあたる。前作の『遠野モノがたり』、前々作の『中央モノローグ線』と書評を書かせていただいた…

『ビッグデータ時代のライフログ―ICT社会の”人の記憶”』安岡寛道 編(東洋経済新報社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「ライフログはいかに活用されるか=便利でお得で、安心安全な社会は築けるか」 本書は、近年注目を集めつつある「ライフログ」に関する総合的な研究の成果である。ここでいうライフログとは、「人間の行い(Life)をデジタルデ…

『テレビという記憶―テレビ視聴の社会史』萩原滋 編(新曜社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「歴史化されるテレビ」 本書のサブタイトルは、「テレビ視聴の社会史」であり、テレビを歴史的な視点からとらえようとする先鋭的かつ意欲的な論文からなる論文集となっている。 評者は、まずこの、テレビという存在が歴史化さ…

『ぽちゃまに』平間要(白泉社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「太めの少女がヒロインのラブコメ少女マンガ」 本作は、「ぽっちゃりな女子校生」本橋紬が、ある一点で「残念なイケメン」と噂される田上幸也に告白され、その後、様々な恋愛模様を繰り広げるラブコメ少女マンガである。そして…

『鉄旅研究-レールウェイツーリズムの実態と展望』旅の販促研究所(安田亘宏、中村忠司、上野拓、吉口克利)(教育評論社)

→紀伊國屋書店で購入 「鉄道そのものを楽しむ、成熟した旅行文化へ」 本書は、JTBグループのシンクタンクである、旅の販促研究所が刊行している「旅のマーケティングブックス」シリーズの第6冊目にあたる。そうしたシンクタンクの存在そのものもさること…

『マンガでわかる社会学』栗田宣義/著  嶋津蓮/作画  トレンド・プロ/制作(オーム社)

→紀伊國屋書店で購入 「日本初のマンガで読む社会学テキスト」 本書は、おそらく日本で初めてのマンガで読む社会学テキストである。といっても、100%のページがマンガで占められているわけではないが、各章ごとにマンガでのイントロダクションや概略説明が…

『ポピュラー文化ミュージアム―文化の収集・共有・消費』石田佐恵子・村田麻里子・山中千恵[編著](ミネルヴァ書房)

→紀伊國屋書店で購入 「ポピュラー文化のミュージアム化/ミュージアムのポピュラー文化化」 待望の一冊である。子どものころ、博物館に出かけて、いつまでも飽きることなく展示物を眺めていたような興奮に近い感覚を持って読んでしまう著作である。 日ごろ…

『若者はなぜ大人になれないのか―家族・国家・シティズンシップ (第2版)』 ジョーンズ,ジル〈Jones,Gill〉 ウォーレス,クレア〈Wallace,Claire〉【著】 宮本 みち子【監訳】 鈴木 宏【訳】(新評論)

→紀伊國屋書店で購入 「卒業生の将来を考えながら、このシーズンに読み返したくなる一冊」 上記のようなタイトルを付けたが、本書の内容は、決して甘酸っぱい学園モノなどではない。むしろイギリスの事例を基にした、非常にまじめな学術書だ。 評者は、この…

『社会学ウシジマくん』難波功士(人文書院)

→紀伊國屋書店で購入 「現代社会の「メディア・エスノグラフィ」として」 本書は、マンガ『闇金ウシジマくん』(真鍋昌平)を題材に、「社会学の成果を紹介しつつ、社会学の多面性や魅力」(P115)を伝えようとしたものであり、現代日本社会の様々な問題点…

『ゲーミフィケーション―“ゲーム”がビジネスを変える』井上明人(NHK出版)

→紀伊國屋書店で購入 「「ゲームの現実化/現実のゲーム化」」 本書は、昨今のウェブ業界やマーケティング業界を席巻しているゲーミフィケーションという言葉について書かれたものである。冒頭で筆者も述べているように、この多義的な言葉の定義を明確化する…

『ドイツにおける男子援助活動の研究―その歴史・理論と課題』池谷 壽夫(大月書店)

→紀伊國屋書店で購入 「男性問題としての社会問題を意図的に考え直すこと」 昨年(2012年)の11月に、『男性不況―「男の職場」崩壊が日本を変える』 (永濱利廣著、東洋経済新報社)という著作を紹介した際、成績優秀者には女子学生が多いのだと述べた。そのこ…

『東京高級住宅地探訪』三浦展(晶文社)

→紀伊國屋書店で購入 「理想の住宅地のなれの果てを歩き回った記録」 本書は、消費社会研究家の三浦展氏が、東京西郊のいわゆる高級住宅地について、いくつもの文献を参照しながらその成立の経緯を辿るとともに、実際に歩き回った記録に基づいてその現状を記…

『水戸岡鋭治の「正しい」鉄道デザイン ― 私はなぜ九州新幹線に金箔を貼ったのか? 』水戸岡鋭治(交通新聞社新書)

→紀伊國屋書店で購入 「JR九州の鉄道デザインはなぜあんなにも「奇抜」なのか」 鉄道を趣味とする人々にはすでに知られた情報だが(一般の新聞にも記事として掲載されていたが)、昨年末、国鉄で副技師長を務められた星晃氏が亡くなられた。星氏といえば、…

『パリ愛してるぜ~』じゃんぽ~る西(飛鳥新社)

→紀伊國屋書店で購入 「「日常化」したフランス」 フランスについて書くのは勇気がいる。日本には、この国に対して異様なまでに思い入れの深い人々がたくさんいるからだ。 かつて永井荷風は、『ふらんす物語』の中で、帰国日の嘆きを次のように書いていた。 …

『ライジングサン』藤原さとし(双葉社)

→紀伊國屋書店で購入 「今どきの若者からみた自衛隊」 本作は、自らも自衛隊入隊経験のある漫画家、藤原さとし氏によって書かれたマンガであり、現在『漫画アクション』で連載中である。 主人公の甲斐一気は、「夢もとりえもない平凡な日々を送る」(裏表紙…

『第四の消費―つながりを生み出す社会へ』三浦展(朝日新聞出版)

→紀伊國屋書店で購入 「個人化の果てに生まれた、消費社会の新たなステージ」 現代は、個人化社会であるといわれる。人の手を煩わせずとも、ほとんどのことが自分一人でできるようになりつつある。ケータイやスマートフォンさえあれば、いつでもどこでも、好…

『日本はなぜ敗れるか―敗因21カ条』山本七平(角川書店)

→紀伊國屋書店で購入 「「安倍晋三“想定外”内閣」成立時にこそ読み返すべき著作」 先日行われた衆院選の結果、自民党が圧勝し、安倍晋三氏が再び首相の座につくこととなった。選挙での勝利それ自体については、大方の予想通りであったものの、その後彼らが進…

『ギャルと不思議ちゃん論―女の子たちの三十年戦争』松谷創一郎(原書房)

→紀伊國屋書店で購入 「女子コミュニケーションの通史として」 女子会という言葉がある。男子抜きで女子だけで気ままに集まる会合を意味しており、今や多くの人が知ることとなった言葉だが、先日、ツイッター上でその裏側の定義ともいうべきものを見つけて、…

『受動喫煙の環境学―健康とタバコ社会のゆくえ』村田陽平(世界思想社)

→紀伊國屋書店で購入 「ジェンダー地理学の興味深い実践例として」 ふと考えてみたのだが、タバコを吸う女性とタバコを吸わない男性とでは、どちらが肩身の狭い思いをするのだろうか。 今日の日本社会で考えてみると、特に女性の若年層における喫煙者の割合…

『毎度!浦安鉄筋家族 』浜岡賢次(秋田書店)

→紀伊國屋書店で購入 「今に生きる、古き良きギャグマンガの王道」 「研究しています」と胸を張ってまでは言えないけれども、私にとって、マンガを読むことはほぼ欠かせないライフワークとなっている。 漫画家を志した兄の影響もあって、生まれた時から数百…

『男性不況―「男の職場」崩壊が日本を変える』永濱 利廣(東洋経済新報社 )

→紀伊國屋書店で購入 「男の生きづらさを社会の変化から読み解く一冊 」 いつ頃からかは失念してしまったが、大学で成績をランキング化すると、女子学生がほぼ上位を独占するような傾向が見られるようになって久しい。個人的な体験から言っても、少なくとも1…