書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

石村清則(いしむら・きよのり)

『フランス人の流儀 日本人ビジネスパーソンが見てきた人と文化』日仏経済交流会(大修館書店)

→紀伊國屋書店で購入 「フランス(人)との上手なつきあい方が学べる!」 フランスに赴任する人や長期滞在を考えている人は元より、短期留学を考えている人、または単なる観光旅行よりももう少し深くフランス人と触れ合いたいと思う人々にとって、『フランス…

『コルシア書店の仲間たち』須賀敦子(白水社)

→紀伊國屋書店で購入 「「せつなさ」の溢れるエッセイ」 本に関してはどうも時々天の邪鬼な癖が出る。人が良いといったのに、なかなか手に取ることができない。そして、後でとうとう読み始めた時に後悔する。何故もっと早く読まなかったのだろう、と。須賀敦…

『血液と石鹼』リン・ディン(早川書房)

→紀伊國屋書店で購入 「エスプリの利いた大人の寓話」 ブラックユーモアとも風刺とも違う。文学作品をジャンル分けすることが無意味だということを、見事に思い知らせてくれるのが、リン・ディンの『血液と石鹼』だ。40近い短編が収められているが、冒頭の作…

『原発アウトロー青春白書』久田将義(ミリオン出版)

→紀伊國屋書店で購入 「原発作業員の証言」 「福島」は「Fukushima」になってしまった。1945年に「広島」や「長崎」が「Hiroshima」、「Nagasaki」になったように。今も世界中が「Fukushima」に注目している。だが私たち日本人は何を通して「福島」を見てい…

『歴史を考えるヒント』網野善彦(新潮文庫)

→紀伊國屋書店で購入 「「日本」という国名はいつできたのか?」 「日本」という国の名前が決まったのはいつか? 一体どれだけの人がこの基本的な質問に対して正確に答えられるだろうか。網野善彦の体験によると、大学生の解答は「紀元前一世紀から始まって十九…

『おそめ』石井妙子(新潮文庫)

→紀伊國屋書店で購入 「伝説の銀座マダムの新たな伝説」 「伝説の○○」という言葉はよく見かける。しかし、石井妙子の著した『伝説の銀座マダム おそめ』の、おそめほど「伝説」にふさわしい人はいないのではないか。そもそも「伝説」は噂によって形作られる…

『北海道の旅』串田孫一(平凡社ライブラリー)

→紀伊國屋書店で購入 「自然と同化する旅」 日本人がヨーロッパを旅行する時「ユーレイルパス」という、一定期間鉄道乗り放題のパスが買える。ヨーロッパ在住の日本人はそれを買えない代わりに、国際結婚をしているか、永住権を持っていれば「ジャパンレール…

『ホテルオークラ総料理長の美食貼』根岸規雄(新潮選書)

→紀伊國屋書店で購入 「自信を取り戻すための一冊」 S君という教え子がいる。数年前、東京のホテルオークラで友人と昼食をとり、エントランスの付近で午後から向かう会議の場所を地図で確認していたら、「どこかお探しですか?」と一人のドアマンが優しく声…

『羆撃ち』久保俊治(小学館文庫)

→紀伊國屋書店で購入 「生と死に対する畏敬の書」 北海道帯広市の隣に芽室という町がある。ここに弟一家が動物と共に住んでいるのだが、「フチ」という名前の北海道馬がいたことがある。名の由来を尋ねると、アイヌ語で「お婆さん」という意味だと教えられた…

『舟を編む』三浦しをん(光文社)

→紀伊國屋書店で購入 「読後、心地よい風が吹く作品」 日本に一時帰国するたびに、気になる言葉が増えてくる。こちらが普段海外に住み、目まぐるしく変わる日本語に対応できていないのが原因か、歳を取ると共に若者との感覚がずれてくるせいかは分からない。…

『大往生したけりゃ医療とかかわるな』中村仁一(幻冬舎新書)

→紀伊國屋書店で購入 「「終活」のバイブル」 日本では「終活」という言葉が流行っているらしい。紛れもなく老人大国であるから、それは当然の現象であるし、自分の身の始末を元気な時に考えておくことは、重要なことであるに違いない。だが、我々はなかなか…

『震災と原発 国家の過ち』外岡秀俊(朝日新書)

→紀伊國屋書店で購入 「文学に見る不条理克服の知恵」 東日本大震災のような圧倒的な自然の力を前にして、我々は何を思うのだろうか。犠牲者や被災者の事を考えるのは当たり前としても、自然に対して怒りを向けても虚しい。それは自然の力を甘く見たり、自然…

『とどめの一撃』マルグリット・ユルスナール(岩波文庫)

→紀伊國屋書店で購入 「命と愛の緊張関係」 一冊の本の記憶というのは、どのようなものなのだろうか。ある人にとっては、それはいくつかの印象に残る文章で表されるかもしれない。またある人にとっては、プルーストの『失われた時を求めて』におけるマドレー…

『蛇・愛の陰画』倉橋由美子(講談社文芸文庫)

→紀伊國屋書店で購入 「「どこにもない場所」とはどこか?」 パリでは先日「Salon du livre」という書籍展が開かれていた。今年の招待国が日本で、大江健三郎、辻仁成、平野啓一郎等の作家や、萩尾望都、ヤマザキ マリ等の漫画家まで、多彩な顔ぶれが来仏し…

『不可能』松浦寿輝(講談社)

→紀伊國屋書店で購入 「三島由紀夫は生きている?」 1970年11月25日、三島由紀夫は本当に死んだのだろうか。私は当時高校一年生で、三島がバルコニーで演説する姿をテレビのニュースで見、新聞社がヘリコプターから撮影した、割腹自殺した後の首が転がってい…

『真珠の耳飾りの少女』トレイシー・シュヴァリエ(白水社)

→紀伊國屋書店で購入 「魅惑の少女の正体は?」 フェルメールの「真珠の耳飾りの少女(青いターバンの少女)」に出会ったのは、1981年の事だった。ようやくパリに行く切掛けをつかみ、アリアンス・フランセーズで3ヶ月間フランス語を学んでいる時だった。フ…

『私にとっての20世紀』加藤周一(岩波書店)

→紀伊國屋書店で購入 「20世紀を理解するために」 年の瀬は一年を振り返る事が多い。ついでに前世紀を振り返ってみるのも悪くない。歴史が「現在」である時はその姿を現しにくいが、それが「過去」となってきた時に、初めて我々にも理解できる形で見えてくる…

『稲垣足穂』稲垣足穂(筑摩書房)

→紀伊國屋書店で購入 「星とヒコーキをこよなく愛した男」 稲垣足穂の作品と出会ったのは高校生の頃だから、かなり前になる。しかし、時々無性にあの独特の文章に触れたくなる。疲れた時や、雑然とした世の中に倦んだ時など最適だ。特に『一千一秒物語』など…

『小説の方法 ポストモダン文学講義』真鍋正宏(萌書房)

→紀伊國屋書店で購入 「読んで楽しい文学理論書」 文学の理論書というと、堅くて、難しいことが書いてあって、睡眠導入剤にはうってつけだが(失礼!)一般の読者が読んでも面白くないと思われがちである。高校生に文学を教えている手前、そのような本も結構…

『切除されて』キャディ(ヴィレッジブックス)

→紀伊國屋書店で購入 「目を背けてはいけない事実」 読もうと思って買ってきても、何となく手を付けられないで机の隅でほこりをかぶっている本が、誰にでも一冊や二冊はあるだろう。私にとって、キャディの『切除されて』はそんな一冊だった。忘れていたわけ…

『永遠の0(ゼロ)』百田尚樹(講談社文庫)

→紀伊國屋書店で購入 「痛切なる愛の物語」 先日知人から熱心に紹介された本を借りて読んだ。タイトルが『永遠の0(ゼロ)』であり、第二次世界大戦の名機である零戦にまつわる物語であることは知人から聞いた。だが作者の百田尚樹を知らなかったし、戦争物…

『風のCafé アラブの水音』西野鷹志(響文社)

→紀伊國屋書店で購入 「洒脱なフォト&エッセイ」 西野鷹志さんと初めてお会いしたのは、20年ほど前だろうか。日本に一時帰国した際に、当時パリで親しかったファッションジャーナリストの竹花さんの縁で、FMいるかというラジオに出演したことがあった。その…

『奇跡』岡本敏子(集英社文庫)

→紀伊國屋書店で購入 「岡本敏子の「太陽の塔」」 今年は岡本太郎生誕100年ということで、種々のイベントが企画されている。1970年の大阪万博の時私は高校2年生で、修学旅行で万博を見ている。普段は高校3年生で修学旅行に行くのだが、この時は学校側の計ら…

『プリンセス・トヨトミ』万城目学(文春文庫)

→紀伊國屋書店で購入 「豊臣家と大阪城に捧げるメルヘン」 日本へ一時帰国すると、書店めぐりをしながら、今どんな本が注目されているのか、平積みになっている作品を見て歩くのが常となっている。売れているから読みたいとは思わないが、気になるタイトルや…

『破獄』吉村昭(新潮文庫)

→紀伊國屋書店で購入 「脱獄の天才」 毎年夏休みで日本に一時帰国するが、今回はJRを利用し故郷の北海道を一周した。網走での暑い一日、流氷館や網走刑務所博物館を訪れた。犯罪者が更生のために苦しんだ場所を、興味本位で訪れる事は気が引ける所もあったの…

『秘花』瀬戸内寂聴(新潮社)

→紀伊國屋書店で購入 「恋は秘すれば花」 瀬戸内寂聴の『秘花』は、何とも艶な作品だ。観阿弥、世阿弥親子の名前は、能楽の完成者として教科書にも必ず出てくるので、能のフアンでなくとも聞き覚えのある人が殆どだろう。だが、現在能は歌舞伎ほど人口に膾炙…

『高橋悠治 対談選』小沼純一編(ちくま学芸文庫)

→紀伊國屋書店で購入 「希望は自分で作り出すもの」 『高橋悠治対談選』は面白く刺激的だ。作曲家、作家、研究者等との対談なのだが、実に見事に高橋の姿が立ち上がってくる。約450ページと、文庫本としては厚い方だが、一気に読ませてくれる。何がそんなに…

『アスペルガー症候群』岡田尊司(幻冬舎新書)

→紀伊國屋書店で購入 「アスペルガー症候群は天才予備軍」 ある時、試験問題を作っていると、学校のスクールカウンセラーからメールが届いたことがあった。ある生徒の試験問題について、白い紙ではなく黄色い紙に問題をプリントして欲しいというものだった。…

『天空の蜂』東野圭吾(講談社文庫)

→紀伊國屋書店で購入 「蜂の教訓は何か?」 「想定外」という言葉が随分目に付く。津波の被害の「想定外」は天災だが、原発の「想定外」は人災だとも言われている。私たちの想像力はそれ程衰えているのだろうか。だとしたらどうすれば「想定外」などという語…

『大江健三郎 作家自身を語る』大江健三郎 聞き手・構成 尾崎真理子(新潮社)

→紀伊國屋書店で購入 「作家自身による作品誕生譚」 「作家」という名の人はいない。だが「作家」というカテゴリーに属する人達がいるのは確かなようだ。一体どのような人を「作家」と言うのだろうか。辞書の定義では「詩歌・小説・絵画など、芸術品の制作者…