書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

加藤弘一(かとう・こういち)

『カントの人間学』 フーコー (新潮社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 カントは1772年度の冬学期から『実用的見地からの人間学』(以下、『人間学』)を開講した。カントは当時48歳で『純粋理性批判』を準備する10年間の沈黙の期間にはいっていた。 『人間学』はコペルニクス的展開のただ中ではじま…

『カントの人間学』 中島義道 (講談社現代新書)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 カントの『自然地理学』と対をなす『実用的見地における人間学』(以下『人間学』)の概説本かと思って読んだら、そうではなかった。 本書の元になった本は『モラリストとしてのカントⅠ』という表題で、『人間学』などを材料に…

『カント先生の散歩』 池内紀 (潮出版社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 カントというと謹厳実直な哲学者を思い浮かべる人が多いだろう。毎日規則正しく散歩したので時計がわりになったという逸話がいよいよ気難しそうなイメージを強める。 しかしカントを直接知る同時代人の書簡や回想によると、実際…

『永遠平和のために』 カント (光文社古典新訳文庫)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 カントが還暦を過ぎてから発表した政治哲学と歴史哲学に関する論文を集めた本である。 60歳は当時としては大変な高齢だが、カントは3年前に『純粋理性批判』を世に問うたばかりで、本格的な活動はこの頃からはじまる。『実践理…

『自然地理学』 カント (岩波書店)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 『カント全集』の第16巻で『自然地理学』をおさめる。 『自然地理学』とはカントがケーニヒスベルク大学の私講師となった翌年の1756年夏学期から事実上の引退をした1798年まで、実に43年間にわたって講義した科目である。1772年…

『カント「視霊者の夢」』 カント (講談社学術文庫)/『神秘家列伝〈其ノ壱〉』 水木しげる (角川ソフィア文庫)

→『カント「視霊者の夢」』を購入 →『神秘家列伝〈其ノ壱〉』を購入 『視霊者の夢』は1766年、カントが42歳の時に出版したスウェーデンボリ論である(英語読みではスウェーデンボルグ)。 スウェーデンボリはカントより36歳年長のスウェーデンの科学者である…

『悲しき熱帯』Ⅰ&Ⅱ レヴィ=ストロース (中公クラシックス)

→『悲しき熱帯Ⅰ』を購入 →『悲しき熱帯Ⅱ』を購入 世界的なベストセラーとなったレヴィ=ストロースの自伝的紀行である。 原著は1955年に刊行されたが、日本では1967年に『世界の名著』第59巻にマリノフスキーの『西太平洋の遠洋航海者』(これも文化人類学の…

『改訂普及版 人類進化大全』 ストリンガー&アンドリュース (悠書館)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 古人類学の図鑑である。原著は2005年に刊行され、2011年に改訂版が出た。日本では2008年にハードカバーで邦訳が出ているが、1万2600円という個人には手の出しにくい価格だったので、2012年に装幀を簡略化し価格を6,090円におさ…

『人類の進化大図鑑』 アリス・ロバーツ編 (河出書房新社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 『人類20万年 遙かなる旅路』のアリス・ロバーツが企画・編集した図鑑である。すこし前に邦訳されたストリンガー&アンドリュースの『人類進化大全』が専門的に勉強したい人向けなのに対し、こちらは一般読者向けの図鑑であり、…

『人類20万年 遙かなる旅路』 アリス・ロバーツ (文藝春秋)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 2009年にBBCで5回シリーズとして放映された「The Incredible Human Journey」の書籍化である。異なる立場の意見も丁寧に紹介されており、現時点で人類のグレート・ジャーニーものとしてはもっとも内容豊かで信頼できる本だと思…

『ヒューマン なぜヒトは人間になれたのか』 NHKスペシャル取材班 (角川書店)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 2012年1月から4回にわたって放映された同題のNHKスペシャルの書籍化である。 10年前だったらアート紙でカラー図版をふんだんに入れ、全4巻で出たところだろうが、厳しい出版事情にかんがみ一冊にまとめたということか。 本書は4…

『宗教を生みだす本能』 ウェイド (NTT出版)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 山極寿一の『暴力はどこからきたか』では狩猟採集時代までのヒトはわかちあいの心をもったやさしい平和な生き物だったが、農業の開始とともに所有の観念が生まれて国家が誕生し、戦争をするようになった。集団内部でも階級が分…

『暴力はどこからきたか』 山極寿一 (NHKブックス)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 近年、母親の彼氏による児童虐待や子殺しが増えている。ガールフレンドの子供をうるさがるくらいなら子供嫌いの延長かなと思わないではないが、実の子と義理の子がいると、実の子は猫かわいがりするのに義理の子には食べ物を食…

『ヒトの心はどう進化したのか』 鈴木光太郎 (ちくま新書)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 ヒトはチンパンジーとの共通祖先から600万年前にわかれ、独自の道を歩みはじめたが、1万年前に農耕牧畜生活をはじめるまでは狩猟採集生活をつづけていた。600万年を24時間に見立てると、農耕牧畜時代は最後の2分半にすぎず、そ…

『脳に刻まれたモラルの起源』 金井良太 (岩波科学ライブラリ-)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 道徳は長らく理性の働きと考えられてきたが、18世紀英国で同情心や共感といった感情の働きに根ざすという道徳感覚説が登場した。ハッチソン、ヒューム、アダム・スミスらで、特にヒュームは道徳を情念の働きと見なした。 高級な…

『<small>哲学の歴史 別巻</small> 哲学と哲学史』 中央公論新社編集部編 (中央公論新社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 日本哲学界の総力をあげて編纂された『哲学の歴史』の別巻である。 10ページにわたる全12巻の総目次と170ページにわたる総索引、40ページにわたる1700年以降の総年表(18世紀をあつった第6巻以降は言語圏別の編集になるため、各…

『エッフェル塔』 バルト (ちくま学芸文庫)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 『エッフェル塔』はバルトが1964年に発表した本文100ページに満たないエッセイである。日本では1979年に審美文庫から本文より長い解説というかバルト論が付されて(それでも薄い本だった)宗左近・諸田和治訳で出た後、1991年に…

『ロラン・バルト中国旅行ノ-ト』 バルト (ちくま学芸文庫)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 文化大革命末期の1974年、バルトはテル・ケル派の論客らと中国に招待され、三週間にわたって各地を観光して歩いた。 テル・ケル派とは1960年にフィリップ・ソレルスが創刊した前衛文学誌『テル・ケル』に拠った作家、思想家のグ…

『ロラン・バルト伝』 カルヴェ (みすず書房)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 ロラン・バルトが亡くなって10年後に出た初の本格的な伝記である。 力作といっていいと思うが、「作家の死」を提唱した文学理論家に普通の伝記を書いてしまったために(伝記素がどうのこうのと能書を書いているが、結局は物語風…

『ロラン・バルト』 アレン (青土社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 英国のラウトリッジ社から比較文学を勉強する学生向けに出ている「シリーズ現代思想ガイドブック」の一冊である(邦訳は青土社から)。ガイドブックだけに随所に用語解説のコラムをはさみ、各章の末尾に要約を載せている。 同シ…

『<small>哲学の歴史 12</small> 実存・構造・他者』 鷲田清一編 (中央公論新社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 中公版『哲学の歴史』の第12巻である。このシリーズは通史だが各巻とも単独の本として読むことができるし、ゆるい論集なので興味のある章だけ読むのでもかまわないだろう。 20世紀の三冊目でフランス語圏の哲学をあつかう。副題…

『記号の経済学批判』 ボードリヤール (法政大学出版局)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 ボードリヤールの初期論文集である。 原著は1972年刊行だが、最初の三編は1969年から70年にかけて「コミュニカシオン」などに発表した旨の注記があり、内容的にも『物の体系』と『消費社会の神話と構造』と平行している。四番目…

『物の体系』 ボードリヤール (法政大学出版局)/『消費社会の神話と構造』 (紀伊国屋書店)

→『物の体系』を購入 →『消費社会の神話と構造』を購入 ボードリヤールの第一作と第二作で、どちらも消費社会を解明した基本図書としてロングセラーをつづけている。大昔に読んだことがあるが、付箋を貼りながら読みかえしてみた。 以前は緻密に書かれた本だ…

『顕示的消費の経済学』 メイソン (名古屋大学出版会)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「顕示的消費」とはヴェブレンの『有閑階級の理論』で広く知られるようになった言葉で、ブランド品や贅沢品を社会的地位を誇示するために買うことをいう。要するに無駄遣いだが、今日の消費社会は無駄遣いで回っており、顕示的…

『ジャン・ボードリヤール』 レイン (青土社)

→紀伊國屋書店で購入 英国人の書いたボードリヤールの入門書である。ラウトリッジ社の Critical Thinkers というシリーズの一冊で、日本では青土社から「現代思想ガイドブック」として発売されている。 入門書のシリーズだけあって各章の最後には半ページほ…

『ボードリヤールという生きかた』 塚原史 (NTT出版)

→紀伊國屋書店で購入 ボードリヤールは『湾岸戦争は起こらなかった』に懲りて以来御無沙汰していたが、最近読み直す必要が出てきて、全体像を確認するために本書を開いてみた。 著者の塚原史氏はフランス留学時代に今村仁司氏から『消費社会の神話と構造』の…

『<small>哲学の歴史 11</small> 論理・数学・言語』 飯田隆編 (中央公論新社)

→紀伊國屋書店で購入 中公版『哲学の歴史』の第11巻である。このシリーズは通史だが各巻とも単独の本として読むことができるし、ゆるい論集なので興味のある章だけ読むのでもかまわないだろう。 本シリーズは20世紀に3冊あてているが、本巻はその2冊目にあた…

『三島由紀夫 幻の遺作を読む』 井上隆史 (光文社新書)

→紀伊國屋書店で購入 著者の井上隆史氏は三島由紀夫の遺稿を保存する山中湖文学の森三島由紀夫文学館の研究員で、「幻の遺作」とは副題に「もう一つの『豊饒の海』」とあるように、同館が収蔵する創作ノートと草稿の研究から想定された『豊饒の海』の別の結…

『三島由紀夫』 ルシュール (祥伝社新書)

→紀伊國屋書店で購入 フランスではじめて出た三島由紀夫の評伝の邦訳である。 ガリマール書店といえば岩波書店と新潮社をあわせたようなフランスの老舗出版社だが、「ガリマール新評伝シリーズ」という入門的な評伝を出していて、祥伝社から7冊邦訳が出てい…

『評伝 梶井基次郎』 柏倉康夫 (左右社)

→紀伊國屋書店で購入 梶井基次郎の評伝である。著者の柏倉氏はマラルメの研究家で(本欄では『生成するマラルメ』をとりあげている)、フランスの現代批評に親しんでいる人なので作家の人生べったりの評伝とは異なり、批評として読みごたえのある一冊となっ…