書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

伊藤智樹(いとう・ともき)

『差別論―偏見理論批判―』佐藤 裕(明石書店)

→紀伊國屋書店で購入 「理論社会学の醍醐味」 今回は、私と富山大学で一緒に仕事をしている佐藤裕さんの研究をご紹介します。 佐藤さんの研究対象は差別です。ただし、ここでいう「差別」は、一般的にイメージされやすいものと必ずしも一致しません。 私たち…

『しあわせの王様――全身麻痺のALSを生きる舩後晴彦の挑戦――』舩後晴彦・寮美千子(小学館)

→紀伊國屋書店で購入 「病いの物語を支える他者の存在」 前回(2008年10月)のこのブログで、神経難病ALSを持つ人々による自己物語集『生きる力』を取り上げましたが、それに連なる一冊が最近出版されました。『生きる力』の寄稿者の一人でもある舩後晴彦…

『生きる力――神経難病ALS患者たちからのメッセージ』「生きる力」編集委員会編(岩波書店)

→紀伊國屋書店で購入 「患者の語りに導かれてALSの世界へ」 ALSは、近年、ケアと生き方に関する関心と情熱が高まっている領域の一つです。ALS(筋萎縮性側索硬化症 Amyotrophic Lateral Sclerosis)というのは、神経細胞(脊髄の側索および脊髄前角…

『癒しとしての笑い――ピーター・バーガーのユーモア論――』ピーター・L・バーガー(森下伸也訳)(新曜社)

→紀伊國屋書店で購入 「病いを滑稽に語ること」 著者であるピーター・バーガーは、1929年生まれの非常に著名な社会学者です。『日常生活の構成』や『聖なる天蓋』(ともに新曜社)に代表される、個人の意味世界と社会の構造、近代、宗教といった大きなテーマ…

『わたしのリハビリ闘争――最弱者の生存権は守られたか』多田富雄(青土社)

→紀伊國屋書店で購入 「翻弄される「リハビリテーション」」 著者の多田富雄さんは、1971年の「サプレッサーT細胞」の発見で有名な免疫学者です。2001年5月、旅先の金沢で、脳梗塞の発作が彼を襲います。右半身麻痺の他に、重度の嚥下障害(「えんげしょう…

『医師アタマ――医師と患者はなぜすれ違うのか?』尾藤誠司編(医学書院)

→紀伊國屋書店で購入 「これからの「医師」像はどこへ?」 何度見ても可笑しい駄洒落のようなタイトルと、非常に重く大きな問題をストレートに表したサブタイトルとのコントラストが印象的です。この本は、プライマリ・ケアやへき地医療を経験した医師、そし…

『ろう文化の歴史と展望――ろうコミュニティの脱植民地化――』パティ・ラッド(森壮也監訳)(明石書店)

→紀伊國屋書店で購入 「「聞こえない」から「ろうである」へ」 今回は、病い研究に隣接する、ろう研究に足を一歩だけ踏み入れてみます。 著者パディ・ラッド(Paddy Ladd)は、1952年生まれ、イギリス育ちで生来のろう者です。彼女は、大学で最初の学位を取…

『医療・合理性・経験――バイロン・グッドの医療人類学講義』バイロン・J・グッド(江口重幸・五木田紳・下地明友・大月康義・三脇康生訳)(誠信書房)

→紀伊國屋書店で購入 「「説明モデル」から「物語」へ」 前回(2007年10月)の当ブログで、A.クラインマンの「説明モデル(explanatory model)」概念をご紹介しました。この概念を一歩進めて「物語」という言葉を導入したのが、バイロン・グッドです。 私…

『病いの語り――慢性の病いをめぐる臨床人類学』アーサー・クラインマン(江口重幸・五木田紳・上野豪志訳)(誠信書房)

→紀伊國屋書店で購入 「「病いの語り(illness narrative)」研究の産声」 この本は、「病いの語り(illness narrative)」研究の道を切り開いた記念碑的な一冊です。著者は1941年生まれで、研究者であると同時に精神科医としての臨床経験を持っています。真…

『分野別実践編 グラウンデッド・セオリー・アプローチ』木下 康仁編(弘文堂)

→紀伊國屋書店で購入 「グラウンデッド・セオリー・アプローチを物語論的に読む」 前回はグレイザー&ストラウス『質的研究の基礎』を取り上げました。これはグラウンデッド・セオリー・アプローチの方法論に関しては必読の一冊ですが、経験的研究にこのアプ…

『質的研究の基礎――グラウンデッド・セオリー開発の技法と手順』アンセルム・ストラウス&ジュリエット・コービン[著]操華子・森岡崇[訳](医学書院)

→紀伊國屋書店で購入 「データを比較する」 質的分析に関して、現在最もシステマティックな方法として提示されているのがグラウンデッド・セオリー・アプローチです。 このアプローチは、B.グレイザーとA.ストラウスによる『データ対話型理論の発見――調…

『続・発想法――KJ法の展開と応用』川喜田二郎(中公新書)

→紀伊國屋書店で購入 「質的分析とKJ法――データを捨てずに一緒に考える――」 質的調査の授業をしていて常々感じることは、フィールドノーツやトランスクリプト(インタヴューを文字に起こしたもの)といったデータを蓄積する段階までは言うことがたくさんあ…

『方法としてのフィールドノート――現地取材から物語作成まで――』R.エマーソン・R.フレッツ・L.ショウ(佐藤郁哉・好井裕明・山田富秋訳)(新曜社)

→紀伊國屋書店で購入 「フィールドノワーカーへの頼もしい援軍」 フィールドワークを行うときには必ず記録を残しますが、この記録のことを「フィールドノーツ」と呼びます。「フィールドノーツ」などというと、何か学問的で特別なものをイメージしてしまうか…

『これでいいのか市民意識調査――大阪府44市町村の実態が語る課題と展望――』大谷信介編著(ミネルヴァ書房)

→紀伊國屋書店で購入 「社会調査の質と目的」 「社会学って何?」という疑問に対する一つの答えになるのが「社会調査」です。アンケートやインタヴューのことだと言えば、ほとんどの人がイメージできるでしょう。社会調査は、社会学の専売特許ではありません…

『フィールドワークの技法――問いを育てる、仮説をきたえる――』佐藤郁哉(新曜社)

→紀伊國屋書店で購入 「物語としての質的調査法テキスト」 東京大学大学院(社会学専門分野)に進学した1994年、私はどうやって研究を進めてよいのか分からず、悶々としていました。というのも、そこは「理論社会学の総本山」という雰囲気が濃厚で、後に私が…

『悲しい本』マイケル・ローゼン作、クェンティン・ブレイク絵(谷川俊太郎訳)(あかね書房)

→紀伊國屋書店で購入 「物語の両義性」 東京に出張したとき、空き時間に絵本売り場をうろうろしていると、子供向けの絵本としてはちょっと変わった本を見つけました。この本は、単に死別という避けられがちなテーマをストレートに扱っています。 主人公は、…

『ラッキーマン』マイケル・J・フォックス(入江真佐子訳)(ソフトバンクパブリッシング)

→紀伊國屋書店で購入 「喜劇俳優からストーリー・テラーへ」 著者のマイケル・J・フォックスは、テレビドラマ『ファミリー・タイズ』と映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で大ヒットをとばした喜劇俳優です。その彼が、1998年11月、『ピープル』誌のイ…

『癌とたわむれて』アナトール・ブロイヤード(宮下嶺夫訳)(晶文社)

→紀伊國屋書店で購入 「病の物語の支え方」 アナトール・ブロイヤードは、1920年に生まれ、『ニューヨークタイムズ』などで活躍した評論家・編集者です。1989年8月、彼は転移性前立腺癌と診断されました。この本は、それから翌1990年10月に彼が亡くなるまで…

『笑いと治癒力――生への意欲』ノ-マン・カズンズ/松田銑訳(岩波書店)

→紀伊國屋書店で購入 「圧倒的な生への意志と探究心、そして物語の陥穽」 前回のこのブログで取り上げたアーサー・フランク『傷ついた物語の語り手』で、「探求の物語」の一例として引用されていた本から1冊を選んでみたいと思います。(「探求の物語(the …

『傷ついた物語の語り手――身体・病い・倫理――』アーサー・W・フランク(鈴木智之訳)(ゆみる出版)

→紀伊國屋書店で購入 「病の物語への視座」 初めて読んだときは、何のことを言っているのか分からなかったけど、読み返してみるにつれてピン!と来た――こんな経験は誰しも持っているでしょう。本を読む醍醐味ですよね。 私にとって、そんな経験を与えてくれ…

『からだの知恵に聴く―人間尊重の医療を求めて―』アーサー・W・フランク(日本教文社)

→紀伊國屋書店で購入 「病と付き合える社会に向けて」 アーサー・フランクは、39歳の時に心臓発作を、そして40歳の時に睾丸癌を経験します。これら(特に後者)の経験は、医療社会学者としての著者に決定的な影響を与えますが、この本はその始まりを告げる自…

『病院で死ぬということ』山崎章郎(文藝春秋)

→紀伊國屋書店で購入 「私たちが好む死のあり方を映し出す鏡」 この本には、医師である著者が病院での死のあり方に疑問を抱き、ホスピスを志すようになる軌跡が綴られています。前半部分には、病院での死を示す典型例がいくつかの物語として収められており、…

『エキスパートナースとの対話――ベナー看護論・ナラティブス・看護倫理――』パトリシア・ベナー(早野真佐子訳)(照林社)

→紀伊國屋書店で購入 「物語の共同体としての看護師集団」 私は現在、東京で定期的に行なわれている「セルフヘルプ・グループとナラティヴ研究会」で、いわゆる世話人の役割をしています。研究会といっても数人のこじんまりしたものなのですが、自分の研究上…

『社会学になにができるか』奥村 隆 編(八千代出版)

→紀伊國屋書店で購入 「読者を当たり前の世界から説いて引き剥がす一冊」 前々回(2005年11月)には、初学者向けの入門書としてお勧めの浅野智彦編『社会学が面白いほどわかる本』を取り上げましたが、少し違ったタイプのものとして挙げられるのがこの本です…

『もうひとつの人生』シグロ(編著)(影書房)

→紀伊國屋書店で購入 「記録映画の真骨頂」 私自身は、現在、セルフヘルプ・グループにおける人々の語りを研究テーマにしています。つまり、アルコホリズム(アルコール依存)や死別体験、あるいは吃音といった体験を人々がセルフヘルプ・グループを通じてい…

『図解 社会学のことが面白いほどわかる本』浅野智彦(中経出版)

→紀伊國屋書店で購入 「社会学教員にとっては「救い」の一冊」 「社会学がどういうものか1冊で分かる日本語の本を教えてください」――こんな何とも虫がいいニーズを日々肌で感じながら、私は大学教員生活を送っています。でも考えてみると、大学生のニーズと…