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プロの読み手による書評ブログ

『The Happiness Project』Gretchen Rubin(Harpercollins)

The Happiness Project

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「幸せの青い鳥を探す「幸せプロジェクト」」


 人間の人生の目的は、その時の状況によりいろいろ変わるだろう。お金を儲ける、家族を持つ、家を建てる、世界をまわる、行きたい学校に行くなどだ。

 こう考えると、一生を貫く目的を見つけるのは難しい。ところが、時間を超え万人に共通した人生の目的というのもある。それは「幸せになる」というものだ。

 アメリカの独立宣言でも「幸福の追求」は人の権利として保証され、日本国憲法でも「幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政上で、最大の尊重を必要とする」と謳われている。

 ではこの「幸せ」とは何だろうか。それはルイ・アームストロングが「ジャズとは何かと聞かなければならないようなら、ジャズがなんだか絶対に分からない」と言ったように、「幸せ」とは何かを尋ねるようなら、なにが「幸せ」なのか分からないだろう。

 「幸せ」は、各人が心の中で感じるもので、他人にとっての「幸せ」が自分にとって同じものであるとは限らない。

 今回紹介する本は、その「幸せ」を1年間に渡って追った体験談だ。本のタイトルは「The Happiness Project」。著者はニューヨークに住む女性作家グレッチェン・ルービン。

 彼女はよき夫と、ふたりの娘とともにアッパーイーストサイドに暮らし、弁護士から作家に転じた経歴の持ち主だ。僕などから見ると、これだけで充分幸せなはずなのだが、彼女はそうは感じていなかった。

 彼女は「幸せ」になるために、毎月目標をたてる。例えば1月は「早寝をする」「運動をする」「片付けをする」「やり残している、やらなくてはいけないものをやる」「活気に溢れているような振りをする」というものだ。

 この目標は各月の大きな項目(1月はバイタリティ、2月は結婚、3月は仕事、4月は親業)に沿ってたてられている。大きな項目はそのほか友情、お金、余暇などがある。

 彼女は、それぞれの目標を実践し、その過程、結果を報告している。その結果、セルフ・ヘルプ本とノンフィクションの中間に位置するような内容になっている。

 「幸せ」になるための有効なヒントも散りばめられているが、面白いのは「幸せ」へのアプローチの仕方だ。つまり、僕にとっては本のノンフィクションの部分の方が面白かった。

 問題の解決策の見つけ方、解決策を実行に移すそのやり方、そうして絶えず分析をおこなう自己のありかた。合理的、直線的、そうして自分をあまり疑わないその思考回路は、僕がアメリカの白人と接したときに感じるものと同質のものだった。

 つまり、彼女はアメリカ、少なくともマンハッタンでは主流白人のなかのひとりであり、合理性、直接的行動を以て問題解決に当っている。

 「幸せ」になるということもさることながら、アメリカ社会の断面を見る目的でこの本を読むと非常に興味深い。


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