書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

ジョッシュ・ウェイツキン『習得への情熱―チェスから武術へ―』(みすず書房)

Theme 5 ひらめきを得るために www.kinokuniya.co.jp 飛んでくる弾すらも静止して見え、相手の次の一挙手一投足が手に取るようにわかる――SF映画『マトリックス』で、主人公ネオが覚醒したシーンである。 本書を読んでいて、何度となくこのシーンを連想させら…

鈴木宏昭『教養としての認知科学』(東京大学出版会)

Theme 5 ひらめきを得るために www.kinokuniya.co.jp 「これが教養です」と差し出されたものは中身も見ずにご勘弁願いたくなってしまう性分なのですが、この本は外面と中身が違うような……タイトルの雰囲気でもちょっと損をしている本のような気がします。だ…

山岸俊男『信頼の構造』(東京大学出版会)

Theme 4 協力と信頼 www.kinokuniya.co.jp 信頼は社会的不確実性の高い状況で必要とされるが、それが低い関係においてこそ生まれやすい。アメリカよりも安定した社会関係にある日本の方が、一般的信頼の水準が低い。他者一般を信頼する傾向の強い人間は単な…

中村隆文『不合理性の哲学』(みすず書房)

Theme 4 協力と信頼 www.kinokuniya.co.jp 近年、いわば純粋無垢の「合理的な人間」という描像がさまざまな形で見直されている。たとえば経済学では、行動経済学の登場により、われわれの実際の行動が必ずしも「自己の利益を最大化する」ものではないことが…

イヴォンヌ・シェラット『ヒトラーと哲学者』(白水社)

Theme 3 そのとき人はどう振る舞うか www.kinokuniya.co.jp 我々は書物から学ぶ必要がない。我々は運命によって、この奇跡を生きるように選ばれたのだ」と演説したヒトラーだが、彼の反知性主義を説得力あるものにするには哲学が必要だった。『我が闘争』に…

ハンナ・アーレント『イェルサレムのアイヒマン』(みすず書房)

Theme 3 そのとき人はどう振る舞うか www.kinokuniya.co.jp ニュルンベルク裁判以降、身を隠したアドルフ・アイヒマンは、秘密組織の斡旋で南米アルゼンチンに向かい、リカルド・クレメントとして亡命生活を送る。二年後には妻子を呼び寄せ、新たな生も授か…

パンカジ・ミシュラ『アジア再興』(白水社)

Theme 2 亜細亜へのまなざし www.kinokuniya.co.jp 予想に反した読後感が残った。なにせこのタイトルにこの帯の煽り文句(アフガーニーが煽る/梁啓超が跳ぶ/タゴールが唸る)である。「アジア再興」をめざし「帝国主義に挑んだ志士たち」の活躍を描いたノ…