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2013年12月29日

『格付けしあう女たち―「女子カースト」の実態』白河桃子(ポプラ新書)

格付けしあう女たち―「女子カースト」の実態 →紀伊國屋ウェブストアで購入

「「女子カースト」に対する社会学的分析と処方箋」

 見つけた途端に、すぐにでも講義で紹介したくなる本というのがある。加えて、紹介した途端に、学生からも非常にいい反応が返ってくる本というのもある。本書はまさにそうした著作である。平易な書き方をしながら、その一方で、今日の社会における何がしかの本質的な点を指摘しているような著作というのは、なかなかお目にかかれないものである。

 さて、本書『格付けしあう女たち』は、家族社会学者の山田昌弘との共著によって、「婚活」というキーワードを世に広めたジャーナリストの白河桃子氏が、今日における女性たちのコミュニケーションの実態を社会学的に分析したものである。


 サブタイトルにおいて「女子カースト」と呼び表しているように、今日の女性たちのコミュニケーションにおいては、影に日向に激しい差異化競争が繰り広げられ、その結果を元にした厳しい「格付け」がなされていくのだという。冒頭でも取り上げられている「ママ友」の事例などはその典型で、「友」という文字とは裏腹に、場合によっては競い合う「敵」にすらなりうるのだといい、他にも「恋愛・婚活カースト」「女子大生カースト」「オフィスカースト」といった事例が取り上げられている。


 本書が優れているのは、こうしたコミュニケーションが生まれる社会的背景について、的確でなおかつわかりやすい分析がなされていることだ。すなわち「「女子カースト」が生まれる四つの原因」(P34~)として挙げられているのは、「ヒマがある集団」「狭くてぬるい均質な集団」「逃れられない集団(会社、ママ友など)」「「悪の種」が集団に紛れ込んだ場合」だが、ここからは、いわゆる集団主義的で、他に逃げ場のない同質的な集団において(例えば、管理教育の徹底された学校などを想像するとよい)、いじめが起こるのと類似した構造を見出すことができるだろう。


 だが、本書がさらに注目に値するのは、こうした実態をただ批判するだけではなく、さらなる深い分析に基づいて、建設的な処方箋を提示していることである。


 すなわち本書によれば、いじめが起こるのと類似した構造である、逃げ場のない同質性の高い集団は根強く残存していくものの、その一方で「格付け」競争がますます激化していく背景には、社会全体の流動性の高まりとともに、むしろ人々の間での多様性が徐々に高まり始めていることが指摘できるという。


 いわば「出る杭は打たれる」ということわざがあるように、同質性の高い集団においては、少しでも異質なものが紛れ込むと激しい反発が生じうる。つまり本書によれば、今日において「女子カースト」が非常に過激になっているのは、「多様性社会への過渡期」にさしかかりつつあるからだというのである。


 こうした「多様性社会」の到来を前に、選ぶべき道はおそらく二つありうるのだろう。一つには高い同質性に固執して激しいバックラッシュ的な反応を見せることであり、もう一つには、流れに棹さして、時代の変化への適応能力を高めていくことである。


 そして白河氏が進めるのは後者の選択肢である。「女子のカーストをサバイバルするための三つの技術」(P180 ~)において、提示されているのは「複数の足場を持つこと」「問題解決能力を持つこと―集団の居心地に敏感になる」「自分を肯定すること―自分を嫌いな人とは仕事できない」といった内容である。


 こうした処方箋は、すぐにでも問題を解決し救われたい女性たちにとっては、即効性のある特効薬とはならないものかもしれない。だがむしろ社会学的な処方箋は、「対症療法」というよりも「気長な根治」に向いたものである。


 「女子カースト」に悩む世の中の多くの女性たちに対して、その実態を冷静に分析し対処していくために、本書を強くお勧めしたい。


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