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2013年03月24日

『マンガでわかる社会学』栗田宣義/著  嶋津蓮/作画  トレンド・プロ/制作(オーム社)

マンガでわかる社会学 →bookwebで購入

「日本初のマンガで読む社会学テキスト」

 本書は、おそらく日本で初めてのマンガで読む社会学テキストである。といっても、100%のページがマンガで占められているわけではないが、各章ごとにマンガでのイントロダクションや概略説明がストーリー仕立てでなされた後で、数ページの「フォローアップ」という文字ページでさらに理解を深めるような構成となっている。

 授業で使うか、自習用にするかは迷うところだが、ノリがいいクラスならば、講義時間の前半をマンガの読解およびそれを元にしたフリートークなどにあてて(あるいは、マンガは読みやすいので事前に読んでおくことを課題としてもよいだろう)、後半を文字ページの内容を中心としたまとめにあてるといった構成も可能だろう。


 著者の栗田宣義氏は、常に斬新な試みを続ける一方で、研究内容には定評のある社会学者ということもあり、「フォローアップ」の文字ページの内容もしっかりとしているので、「マンガで学ぶなんて・・・」と敬遠せずに、初学者は一度手に取って見るとよいだろう。


 評者も学部生のころから、より分かりやすい社会学テキストはないものかと思案を巡らせてきたこともあり、このような形で、なんとか社会学の魅力を初学者に伝えようとするその著者の姿勢については、拍手を送りたいと思う。


 ちなみに学部生の頃の評者は、大学受験参考書で定着しつつあった「実況中継」スタイルの大学の講義テキストができないものかと思案していた。だが最近では、語り口調の社会学テキストも増えてきたので、より分かりやすさを重視するなら、本書のように思い切ってマンガをメインにするというのも、「アリ」な選択と言えよう。


 その一方で、気づいた点を1つだけ記しておきたい。


本書は「マンガでわかる」という斬新なスタイルをとりながらも、内容においては、きわめてオーソドックスである。すなわち「規範」「行為」「役割」「集まり」「社会化」といった基礎概念にあたるものを順番に押さえたうえで、やや各論的な内容として「ジェンダー」に触れ、最後に付録として調査法が紹介されている。


 こうしたスタイルの著作である以上、おそらく専門的な研究書よりは発行部数を多くすることを求められ、その分、「最大公約数」的にオーソドックスな内容にすることが求められたのではないかと推察する。


 だがそのことが、わざわざ女子大学生を主人公とするマンガをメインにしたことと、どこまでマッチングしているかという点には、やや疑問が残るといわざるをえない。マンガは、今日では多くの人が読むメジャーなメディアではあるが、登場人物の心情を掘り下げつつ、ストーリーをより身近に思わせて感情移入を誘うメディアであるならば、もっと女子大学生の日常生活をメインにした内容に徹底してもよかったのではないだろうか。


 具体的に言うならば、第6章でのジェンダーに関するもの(バイト先のカフェの店長からセクハラを受けている悩みなどが事例)であったり、そのあとのエピローグで触れられている様々な社会問題とその解決(反原発運動など)といった内容を冒頭に持って行った方が、読者がより関心を持ちやすかったのではないだろうか。


 これは昨今において、社会学テキストを作るときには、ほぼ誰しもが通らざるを得ない悩みでもある。今までならば、学問の道具立て(基礎概念)を教え込んでから、応用編として各論に進んでいったものが、そもそも学生たちの社会問題への関心の乏しさゆえに、まずその関心を喚起するところから始めなければならない、という問題があるのである。


 マンガを生かして、なおかつ登場人物をせっかく女性に限定してストーリー立てているのだから、あえて「最大公約数」を狙わずに、「一点突破全面展開」的に女子大生の目から見た社会とその問題から話を始め、そのための社会学へと進んでもよかったのではないだろうか(現実的な言い方をすれば、その構成ならば「女性のことを理解したければこれを読め」と男子学生にも薦めやすいように思われる。なぜか逆は想像しにくいのだが)。


 いずれにせよ、これからの入学後のシーズンに社会学を志す初学者だけでなく、関心があるならば、高校生や中学生…あるいは小学生にも、チャレンジしてみてほしい一冊である。


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