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2011年10月31日

『地方食ぶらり旅 駅前グルメの歩き方』森田信吾(講談社)

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「「常食」を巡る旅」

 旅行に行った際、みやげ物を買いに、スーパーマーケットに行くことが多い。特に海外旅行ではよくあることなのだが、いわゆるみやげ物屋に並べられているのは、まさに観光客だけをターゲットにした法外な値段の品物だったりする。それと比べて、スーパーマーケットに行くと、実際に現地の人が食べたり好んでいる品物が、かなり安価で手に入るのだ。

 数年前に韓国に行った時も、ガイドに連れられて行ったみやげ物屋には、法外な値段のキムチやサムゲタンが並べられていたが、それらを一つも購入せず、あとで自分でスーパーマーケットに出かけた。そして、『コアラのマーチ』や『きのこの山』といった日本のお菓子を模したものをみやげにしたことがある。(私の周辺に特異な人が集まっているのかもしれないが)むしろ、そのほうが喜ばれたのだ。


 さて、本作で取り上げられているのも、そういった「今 現に生きてる地元の人が日常に食べるもの」であり、著者はそれを「常食(じょうしょく)」と呼んでいる(P31~32)。このネーミングも柳田國男の「常民(じょうみん)」という概念を想起させる卓抜なものと思う。


 たしかに、著者がいう「常食」とは、「伝統しょった観光食とは次元が違う」(P31)ものであり、一見すると、伝承文化を担う「常民」とは異なるものに感じられるかもしれない。しかし柳田が取り組んだ民俗学が、「作られた伝統」とは違って、生きられた文化として日常に根づいた伝承文化を対象にしていたことを考えれば、やはり適切なネーミングといえよう。


 近頃ではこうした地方食を取り上げて、「B級グルメ」と呼び表し、それを競わせるコンテストなども盛況なようである。それはそれで町おこしに貢献しているであろうことは評価に値しようが、やはりネーミングにおいては、「B級グルメ」よりも「常食」に軍配を上げたいと思う。


 具体的に取り上げられているのは、長野県伊那市の「ローメン」、長崎県長崎市の「トルコライス」など、未読の方からすると、名前からは到底それがどのような料理かも想像できないようなものが多い。しかし、実際に読んでいると、現地に赴いて食べたくなるようなおいしそうなものばかりである。また、マンガであるだけに、ただ単にその食べ物を紹介するだけではなく、ストーリー仕立てになっているのがなんともニクい。


 今のところ本作には、「第一巻」とも何とも記されていないが、おそらく日本中にこうした「常食」は存在するであろうから、ぜひとも続編を期待したいところである。また日本といわず、世界の「常食」を紹介するような作品も期待したい。


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