ごあいさつ
五月祭で何か面白いことがしたいと思い、東大にふれてもらうという五月祭のコンセプトの中で人々に興味を持ってもらえることは何なのだろうと考えたとき、「本」と東大生というのは関わりの深いもので本を通して東大生の本質を捉えることができるのではないかと思い、この企画を行いました。
本を借りるとき、100人には単純に、「あなたのおすすめの本を貸してください。」としか言っていません。
そう言われたときに100人の東大生はいったいどんな本を差し出すのか、そこに一つの東大の縮図が見えるのではないかと思っています。
そんな企画を今回、書評空間内の1つのコーナーにすることができました。
100冊のリストとコメントを見て、少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。

東京大学 農学部 3年 賈 一丁

« 薬学部 | メイン

2011年07月11日

『アルジャーノンに花束を』ダニエル・キイス(早川書房)

アルジャーノンに花束を
ダニエル・キイス

農学部・男性

→bookwebで購入

アルジャーノンに花束を

1.この本との出会いはいつですか?

初めて読んだのは高校生の頃。改めて読み直したのは大学生になってからです。

2.どんな内容の本ですか?

知恵遅れの心優しい主人公が、脳外科的手術によってIQ180以上の天才に変貌してしまう。

アルジャーノンとは動物実験に使われたネズミで、主人公は自分とアルジャーノンを重ね合わせながら、自己認識の変化、周囲の人間の対応の変化に苦悩していく。

3.この本のどういうところが好きですか?
(抽象的にでも具体的にでもいいです)

印象に残る主人公の台詞があります。

「知能は人間に与えられた最高の資質のひとつですよ。しかし知識を求める心が、愛情を求める心を排除してしまうことがあまりにも多いんです。これはごく最近ぼくがひとりで発見したんですがね。これをひとつの仮説として示しましょう。すなわち、愛情を与えたり受け入れたりする能力がなければ、知能というものは精神的道徳的な崩壊をもたらし、神経症ないしは精神病すらひきおこすものである。つまりですねぇ、自己中心的な目的でそれ自体に吸収されて、それ自体に関与するだけの心、人間関係の排除へと向かう心というものは、暴力と苦痛にしかつながらないということ………略………あーたら、どうしておれをそんなふうに見るの?おれ、何かまちがったこと言った?悪いこと言った?正しくないことは言わねーつもりだけど。ぼく、いつだって正しいことをしようとしたんだ。お母さんはいつもいってた、人には親切にしなさい、そうすれば、もめごとなんかにまきこまれなくてもすむし、お友だちもたくさんできるって」

主人公チャーリーは、心優しい人間ですが、急激な知能増進に戸惑い、様々な問題に直面します。

分裂した自分を感じる中で彼自身が見つけた答えがこの台詞に凝縮されていると思います。

天才となったチャーリーは最後まで母親の愛情を求め続けます。
しかし、……………

誰もがもっている心の中の暗い一面や暖かい一面、それら全てをチャーリーは背負って苦悩してくれています。我々の代わりに。
チャーリーの気持ちを思うと涙を禁じ得ません。

4.この本からどのような影響を受けましたか?

チャーリー自身からも自分自身の在り方について示唆を受けますが、周囲の登場人物からも大いに影響を受けました。

なぜなら我々自身はチャーリーではなく、周囲の一般人にほかならないからです。

彼らからは、チャーリーという特殊な目線を通した自分自身、普段と異なった角度から見える自分自身というものを深く考えさせられます。

例えば、街中で知恵遅れの人々を見た時、自分たちは何を考えてしまっているのかということ等。


様々な方向から、自分自身とは……と考えさせられる名著です。

『まなざしのレッスン』三浦篤(東京大学出版会)

まなざしのレッスン
三浦篤

農学部・男性

→bookwebで購入

まなざしのレッスン

『永遠の0』百田尚樹(講談社文庫)

永遠の0
百田尚樹

農学部・女性

→bookwebで購入

永遠の0

1.この本との出会いはいつですか?

去年くらい

2.どんな内容の本ですか?

自分の祖父が第二次世界対戦中に飛行機乗りだったことを知った二人の姉弟が、祖父の足跡を探していく話。

3.この本のどういうところが好きですか?
(抽象的にでも具体的にでもいいです)

特攻隊員について、知ってるつもりで知らないことが分かった…気がする。

4.この本からどのような影響を受けましたか?

流行ってるからとりあえず読んでみましたが、実際に戦争体験者の方から話を聞いているようなリアルさがあって、戦争について、いろいろ考えるきっかけになりました。

『経済学の名著30』松原隆一郎(ちくま新書)

経済学の名著30
松原隆一郎

農学部・男性

→bookwebで購入

経済学の名著30

1.この本との出会いはいつですか?

大学2年生

2.どんな内容の本ですか?

経済学というものが本質的にどのようなものなのかを教えてくれる本

3.この本のどういうところが好きですか?
(抽象的にでも具体的にでもいいです)

経済は、社会の理想に対する哲学や思想あってはじめて動くと思わせてくれます。

4.この本からどのような影響を受けましたか?

あるべき社会を、自分のビジョンを考えるようになった。

『邪魅の雫』京極夏彦(講談社文庫)

邪魅の雫
京極夏彦

農学部・男性

→bookwebで購入

邪魅の雫

1.この本との出会いはいつですか?

今年の4月。

2.どんな内容の本ですか?

「姑獲鳥の夏」から始まるシリーズの今のところの最新作です。一見バラバラに見えるけど実は関連しあっている毒殺事件を巡り、警察官の青木や探偵の益田が真相を探っていきます。そこに現れた拝み屋の京極堂がどのように解決していくのかが見所です。人殺しは何故起きてしまうのか、人の心とは一体どのようになっているのか考えさせられる作品です。

3.この本のどういうところが好きですか?
(抽象的にでも具体的にでもいいです)

見て分かる通りこの本はとんでもなく分厚く、表紙も怖くてとっつきにくいですが、内容が知的好奇心をくすぐる面白いものなので引き込まれてどんどん読み進めてしまいます。
登場人物も一人一人個性が強く、彼らの活躍を追って行くのはすごく楽しいです。

4.この本からどのような影響を受けましたか?

シリーズ全体として言えるのは、読み終えると価値観だったり世界に対する見方が変わること。特殊な殺人事件を題材にして、それに絡む様々な事柄、例えば宗教、哲学、倫理、精神といったことについて掘り下げられているので、新たな知見をいくつも得ることができます。
今回紹介している「邪魅の雫」では、世間というものの実態や、人間誰しも持っている邪(よこしま)な心について考えさせられます。

『生態学入門』日本生態学会(東京化学同人)

生態学入門
日本生態学会

農学部・男性

→bookwebで購入

生態学入門

1.この本との出会いはいつですか?

1年前の春。

2.どんな内容の本ですか?

生物の生態について書かれた本。

3.この本のどういうところが好きですか?
(抽象的にでも具体的にでもいいです)

生物の生態について書いてる所。

4.この本からどのような影響を受けましたか?

他の生き物が気になり出した。

『読めばテニスが強くなる ウイニング・アグリー』ブラッド・ギルバート、スティーブン・ジェイミソン(日本文化出版)

読めばテニスが強くなる
ウイニング・アグリー
ブラッド・ギルバート、スティーブン・ジェイミソン

農学部・男性

→bookwebで購入

読めばテニスが強くなる ウイニング・アグリー

1.この本との出会いはいつですか?

今年の1月くらい
著者が錦織圭のコーチになったから興味が湧いて購入した!

2.どんな内容の本ですか?

タイトル通り、不格好でもなんでも勝負に勝つ方法が書かれている本

3.この本のどういうところが好きですか?
(抽象的にでも具体的にでもいいです)

格好はともかくとして、実際にトッププロだった著者が良い結果を出すために用いてた誰でも実践できそうな方法が書いてあるところ

4.この本からどのような影響を受けましたか?

単純に試合の勝率が上がった のと、試合に対しての姿勢が変わった!

『日本その心とかたち』加藤周一(ジブリLibrary)

日本その心とかたち
加藤周一

農学部・女性

→bookwebで購入

日本その心とかたち

1.この本との出会いはいつですか?

最近。大学三年生に上がる春。

2.どんな内容の本ですか?

縄文時代から現代までの日本の造形文化を扱う。具体的に造形芸術の作品を挙げ、解説しながらも、そこにあらわれた日本文化の基本的な特徴をあきらかにすることを主眼とする。

3.この本のどういうところが好きですか?
(抽象的にでも具体的にでもいいです)

わかりやすい。面白い。「日本のこころ」という切り口で書かれていて、読みやすく、門外漢にもわかりやすい。内容がしっかりしていて面白い上に、加藤周一のすごさに改めて感動できる。

4.この本からどのような影響を受けましたか?

自分の世界の中での立ち位置はどこ?日本人としてのアイデンティティは?といった問いに直面したとき、日本人であることに自信を持つためにはまず知ることが必要だった。日本(文化・芸術)の魅力をたっぷりと伝え、日本のことを知りたい!という気持ちに答えてくれた上に、これからも向き合い続けていくきっかけを与えてくれた。

『白銀ジャック』東野圭吾(実業之日本社文庫)

白銀ジャック
東野圭吾

農学部・男性

→bookwebで購入

白銀ジャック

1.この本との出会いはいつですか?

今年の3月

2.どんな内容の本ですか?

スキー場に埋められた爆弾をめぐる心理戦

3.この本のどういうところが好きですか?
(抽象的にでも具体的にでもいいです)

ミステリーでありながら、スキーやスノボーの臨場感がしっかりと描かれているところ

4.この本からどのような影響を受けましたか?

スキー場に行きたくなった

『門』夏目漱石(新潮文庫)


夏目漱石

農学部・女性

→bookwebで購入

門

1.この本との出会いはいつですか?

高校1年あたりに学校の授業で夏目漱石の『こころ』を読むことになり、そこから夏目漱石の本に興味を持ったので買いました。

2.どんな内容の本ですか?

夏目漱石の『三四郎』『それから』に続く3部作の最終作です。
度重なる不幸を自らの責任であり罪だと苦しむ妻と、過去に犯した罪への罪悪感に苛まれて生活する夫が、寄り添いながら生きるお話です。

3.この本のどういうところが好きですか?
(抽象的にでも具体的にでもいいです)

特に大きな事件もなく淡々と話が進んでいくところや、何度読んでもわからないところが出てくるところが好きです。

4.この本からどのような影響を受けましたか?

高校時代にはこの本をきっかけに夏目漱石の本が嫌いになりました。淡々とした掴みどころの無さが嫌いでした。
大学生になってこの本を楽しめるようになって、掴めないものを掴めないまま大枠で理解することに慣れてきたような気がします。