• 愛読者諸兄諸姉。週2回(火・金)ということで2007年5月にスタートしたぼくの書評ですが、近々100回目を迎えるところで一応決着ということにさせていただきます。

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  • 高山宏の読んで生き、書いて死ぬ
    ―ぼくの中に貪婪の書評魔が帰ってきた―

    かつては一日に一冊読んだ。そして気に入ったものがあれば諸誌紙に週二、三冊は書評を載せてもらっていた。書評に名を借りた論文というスタイルで、よくものを書いた。読みについても魔と呼ばれ巧者と言われ、達人の名をたまわった。十年も前のことである。 長い長い中断が入った。

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  • 紀伊國屋創業80年記念・連続セミナー“9 days talk live”
    「学魔・高山宏、知の系譜と人文科学の未来を語る」
    2007/9/8(土) 13:00~15:40 新宿・紀伊國屋ホール
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2007年12月18日

『江戸絵画入門-驚くべき奇才たちの時代』~「別冊太陽」日本のこころ150号特別記念号 河野元昭[監修] (平凡社)

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夢の美術館から戻ってきた感じ

その世界のバイブルとなった『奇想の系譜 又兵衛‐国芳』の著者辻惟雄氏を中心とした日本美術史研究の新風・新人脈で、江戸260年の長大な展望を試みた。『奇想の系譜』は1970年刊(初出)。当時、マニエリスムだグロテスクだと騒いでいた一般識者にしてもほとんど知らなかった若冲や蕭白を教えられた衝撃は大きかったし、まして狩野山雪や岩佐又兵衛など存在すら知らなかった。本書は、不遇なる南画家祇園南海の言った「奇」の趣味(「趣は奇からしか生まれない」)、同じく芥川丹邱(たんきゅう)の「狂」の趣味が、辻氏名著以来もう40年経とうとしている今、江戸美術を見る目としてなお有効かを問う一大紙上展覧会である。意図や壮。

当然、若冲や蕭白に割かれる紙数は多いし、逆に一人一作の扱いも多くなるが、人選は過不足なく、一人一作で選ばれる作品も画工の特徴がよく出ているものなので感心した。紙面デザインもこの四半世紀のヴィジュアル本編集の精華というべき達者な出来栄えで、「別冊太陽」のノウハウが生きたお世辞抜きの永久保存版。まさしく『奇想の系譜 又兵衛‐国芳』の余波というべき1970年代初めの「みづゑ」800号記念の若冲蕭白大特集(1971年9月号)以来の保存版である。江戸が、やりたいっ!

過不足ないのは見事である。やればやるだけややこしい狩野各分派の動きがはじめてよくわかった気がするし、画期的だったRIMPA展で発見された光琳周辺の斬新も改めて衝撃的。さほど奇でも狂でもないはずのフツーの絵師の作までどこか奇矯と感じられてくるところが、実は本書の眼目なのである。

監修の河野元昭氏との対談で辻氏は「江戸時代の絵画のイメージ変革というのか、奇想派の方が逆に表に出てきてしまうのは、あまりにもやりすぎかもしれない(笑)」とおっしゃっているが、どうやら今が正念場、江戸美術はもう少し「奇」に引っ張っていってもらわねばならない。個人的には伝俵屋宗雪の菊花図簾屏風のイリュージョニズムに魅了された。

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