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2008年01月05日

『つっこみ力』パオロ・マッツアリーノ(ちくま新書645)

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 タイトルの中の「つっこみ」とは、漫才コンビのボケ役とツッコミ役のあのツッコミのことである。そしてこれは、ボケ役が発する言葉の中で笑うべきポイントがどこかをわかりやすく際立たせ、笑いを盛り上げる役である。で、この本の著者は、昨今はやりの「メディアリテラシー」というわけのわからない言葉を使うのをやめて、かわりに「つっこみ力」といったらよいのではないかと提案している。

 リテラシーとは「読み書きの能力」、「活用能力」などの意味であり、メディアリテラシーとは、「メディア --- テレビや新聞、雑誌、広告が伝える内容は制作側の意図による偏りが含まれているから、鵜呑みにせず、制作者の意図をきちんと見抜いて判断しましょうね」という意味である。そして、これをつっこみ力と言い換えようという提案は、単にこの方がわかりやすいからというだけでなく、メディアリテラシーという考え方の重点の置き場所を変えようという提案も含んでいる。

 どんな主張も、人に耳を傾けてもらい理解してもらわなければ、単なる自己満足にすぎず、意味がない。耳を傾け手もらうためには、なによりもおもしろくなければならない。したがって、つっこみ力が大切である。つっこみ力を効かせたおもしろい話こそが、人に聞いてもらうことができ、本に書けばベストセラーにもなる。

 たとえば、社会現象の分析や批判は、データに基づくことによって客観性をもつことができるとよく言われるが、それは幻想であるという。なぜなら、データは自然に湧いてくるわけではないからである。データは、誰かがなんらかの目的をもって社会現象の一部を切り取ったものであり、すべてのデータには、それを集めた人間の何らかの意図や偏見が裏に隠されている。したがって、「データが正しいかどうかではなく、データを使ってどれだけおもしろいものの見方を提供してくれるか、がキモだ」とこの本の著者は言い放つ。

 主張や批判の価値はおもしろさで決まると、ここまではっきり言われると、最初はえーっとたじろいだが、そのうちじわじわとすがすがしさを感じてしまった。

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