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2006年06月17日

『やめたくてもやめられない脳-依存症の行動と心理 』廣中直行(筑摩書房)

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 夜遅くなると何となくお酒が飲みたくなって、今日こそは少しだけにしておこうと思いながら飲み始めると、ついつい深酒になってしまうという毎日を送っている。自分では明らかにアルコール中毒だと思うのだが、人に話すと中毒とはそんな甘いものではないと笑われる。人が笑おうがどうしようがどうでもいいが、自分では何とかしたいと思っている目に飛び込んできたのが、この本のタイトルである。

 ひょっとすると、アルコール依存症から脱する方法が書いてあるかもしれないと期待した。しかし、結論から言うと、そんな方法が簡単に見つかるわけはない。この本には、なぜ人が薬物におぼれるのかを、脳科学の立場から解説してあるが、解決法までは書かれてはいない。

 この本では、ラットなどを使った動物実験の結果がたくさん紹介してある。それによれば、モルヒネや覚醒剤などを与えると、ほぼ確実にそれを好むようになる。このような実験事実から、著者は、薬物依存に陥るのはその最初のきっかけをあたえる環境が存在することが問題だと指摘している。言い換えれば、当人の自覚が足りないからとか、不注意だとか、意志が弱いからとかではなく、いったん経験すると、体がそれをほしがるという現象が必然的に起こる。

 薬物は、摂取した直後に快感が訪れるが、その後で不快が襲う。しかもその不快感は、薬物を摂取する前より大きくなる。この不快から逃れようとして、再び薬物を使用する。これが循環して、薬物が切れたときの不快感がだんだん増大し、依存症になるそうだ。このような現象が、脳のどの部分でどのような化学物質の働きによって起こっているかをいろいろな実験結果とともに紹介している。

 では、それから脱するためにはどうしたらよいかというと、それはわからない。

 ところで、私はこの書評の最初の方で、アルコール中毒とかアルコール依存という言葉を漠然と同じ意味のつもりで使ったが、本書によれば、薬物依存にはいろいろな種類がある。乱用、中毒、耐性、身体依存、精神依存、精神毒性などである。

 また著者によれば、なぜ薬物を使うことが悪かというと、人がそのようにルールを決めたこと以外に根拠はないという。昔は健康を守るための薬として使われていたものが、今では悪と見なされているものもあるなどである。

 とまあ、本書を紹介しようとすると、私自身がよく理解できていないことを暴露するだけになってしまう。しかし、これがこの本に対する私の偽らざる読後感である。やめたくてもやめられないという状況は、非常に複雑でひとくくりには論じられないらしいということを勉強できた。

 同じような依存症は、悪いこととは必ずしも思われていないが、インターネット依存症、読書依存症、携帯依存症など、薬物以外でもいろいろ現れる。私は、自分のことを読書依存症だと前からうすうす感じている。電車に乗ったとき、人を待っているときなどに、手元に本がないと落ち着かない。だから、いつも何か本を持ち歩いている。ジャンルを問わず、とりあえず本であれば安心できる。本を開いて著者の世界へ引っ張り込まれるよりは、本を閉じて自分自身のことを考えた方が、時間を有効に使えるはずなのに。。。

 やめたくてもやめられない状況とどう付き合っていくのがよいかは、私たち読者自身が考えなければならないようだ。

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