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2011年07月17日

『博士漂流時代―「余った博士」はどうなるか?』榎木英介(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

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「博士課程と科学技術振興」

 1950年代以降、科学技術振興政策によって大量に生まれた「博士」は、不安定な任期付きの職で研究を続ける若手研究者として「ポストドクター」(ポスドク)と呼ばれ、大きな問題を起こしている。増えすぎた博士はその価値を下落させ、「高学歴ワーキングプア」と言うべき現象を引き起こし、本当に優秀な人材が科学技術を研究する道を閉ざしてしまった。

 それは、不安定で低収入、しかも将来的に考えて研究機関や企業での就職が保証されていない事からも博士の就職難により大学院進学者も減少し、「高学歴ワーキングプア」への道は日本の科学技術が崩壊する事、そして、人材が最大の宝である日本の将来をも危機にさらす事を意味する。なぜならば日本の科学技術を政策的に考えた場合、常勤の研究職に就けずに常に任期付きの仕事をやり続ける高齢ポスドクの増加は、その政策上最大の課題となるからである。

 本書は上記の事を指摘し、博士余剰の実態と原因、問題点などを多くの緻密なデータを用いて鋭く分析し、今後どうすべきかを考え著者なりの解決策を提言している。これに関しては、著者が同じ経験をしている関係上、その考察は流石であると言わざるを得ないと感服している。

 また、「結局、「適材適所」の問題だ。」とも指摘し、博士の生きる道を模索している。この博士の生きる道を模索する事は大学や研究職だけに固執するのではなく、アメリカの博士号取得者の多彩なキャリアを例に「博士+X」として、中小企業や地域活動などで専門知識を生かす道をも考察するものである。

 これらを鑑みても、著者である榎木英介氏が本書の中での「今こそ社会全体で博士を活用しよう!」との言葉は尊敬に値する。私自信、この事を踏まえ本書を通じて、「博士」がただの学位、研究職としてのただの雇用問題と言う一側面に限らず、博士が「夢を持つ事の大切さ」をライフスタイルの1つとして提案し実現して行く上で大切な職業であると感じずにいられない。

 最後になるが、本書「博士漂流時代―「余った博士」はどうなるか?」に付随し、文中にも紹介されていた「高学歴ワーキングプア―「フリーター生産工場」としての大学院」(9784334034238/水月昭道/光文社)も合わせてご一読頂ければと考えている。


(新宿南店 西山純一)



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