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2010年01月04日

『本の現場―本はどう生まれ、だれに読まれているか』永江朗(ポット出版)

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「出版流通を理解し、考えるために」

 平成21年7月、出版業界において画期的な書籍が出版された。
 「希望小売価格」と表示されたこの書籍は、ある商品の生産者または供給者が卸・小売業者に対し商品の販売価格を指示し、それを遵守させる「再販売価格維持制度」を基本スタイルとする出版業界において、「新刊」書籍として小売業の側(書店)が自由に価格を設定できる「非再販」を意味する正に「画期的」と言わざるを得ない商品である。出版不況が叫ばれる昨今、「新刊」として新たに出版される書籍の点数が30年前の約4倍になっていると言う現状を鑑みると尚更である。

 本書はこの様な「新刊」書籍の発行点数の増加と言う現状に関して、一見、言論・出版の自由が厳密に機能しているように見えるが、不況に強いと言われていた出版業界においてもバブル経済崩壊以後の経済状況の悪化が影響し、1点あたりの実売部数減少を背景に発行点数が増加していると指摘する。
 「新刊」発行点数の増加とそれに伴う返品率の上昇は、結果として本の短命化が加速度的に進み、読者が本当に欲しいと思う本を手に入れる確率が限りなくゼロに等しくなる事を意味する。本書はこれを踏まえ、出版社、編集プロダクション、書店、読者への綿密な取材で現行の出版流通システムにおける問題点を解りやすく浮かび上がらせている。

 実際、ジュンク堂書店池袋本店副店長で仕入業務の統括責任者である中村文孝氏もここ数年の「新刊」書籍の発行点数増加に対して、「実際には、発行点数はもっと多い。また、出る本も多いけど無くなる本も多い。」と指摘し、更に、「人口減も含めて、日本語マーケットは縮小するでしょう。その意味では、出版業界は斜陽産業ですよ。縮小均衡できるかどうかは解らない。ただ、破綻してもゼロになる事はない。書店も出版社も無くなりはしない。それでも、今の様な状態では続けられないと思いますよ。」と語っている。
 そうであるならば、出版業界としても「再販売価格維持制度」・「委託販売制」の廃止をも含めた業界全体における改革が必要であろう。本書にも書かれている「朝の読書」や「読書マラソン」運動などは、その初めの一歩としての一例ではないだろうか。

 しかしそれだけではなく、読者にとって一番喜ばしい事は、目当ての書籍があるか無いかだけでなく、その関連分野の書籍が如何にそろっているかではないだろうか。私自身も、一書店人として限られた場所の中で、如何にしたら「より良い仕入・より良い売り場作り」ができるのか出版流通最前線の現場から日々考え精進していきたいと考えている。
 その意味においても、本書は全ての出版業界関係者、また出版業界を志す学生に贈る最強の業界書であるし、出版流通を理解し考えるための最良書であると言える。


(新宿南店仕入課 西山純一)


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