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2009年08月20日

『NPOと観光振興』清水一憲(あさを社)

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「若者の強き言挙げ」

 新世紀を迎え9年。今も尚、日本を取り巻く環境は大きな転換期を迎えている。
 その大きな転換の流れの1つが地方分権問題である。

 従来、我が国の体制は中央集権であり、それが確立した時代には当時の必然性があったのだと多くの識者が指摘する通り、時代の要請と言うものであったと考える。
 確かに、安全保障問題を中核としたであろうその要請は、必然性そのものが無くなった訳では無いもののかつて程の必然性は薄らいだのが現状であり、国の財政難による地方交付金見直しの論議を含め、今や地方の自立こそが時代の求めるものになって来ている。
 しかし、地域は国家の構成単位であり地域の衰退は国家の衰退に連動する事を考えると、現状の寄生意識が存在する中での地方分権社会への移行は、国家の衰退をもたらす事になりかねない。

 著者はこの様な地方の時代が叫ばれる現在、産業構造の転換やライフスタイルの変化によって文化や観光の振興が地域活性化の大きな軸になりつつある事を予言し、群馬県藤岡市において「地域づくり」と「地域活性化」を旗印に「特定非営利法人(NPO法人)ヒューマンコミュニケーション」を20代の若者で結成した。
 そして、藤岡市制施行50周年記念市民自主企画事業に選定された「LOVEフェスタ3」と言うイベントを平成16年8月に400人のスタッフで開催し、5000人を集客し成功させた。
 特記すべきは先にも述べたが、設立当時、構成メンバーが20代だった事である。これは正に若い力が集結した事を意味し、自ら企画運営し成果を出したものの中では、史上最もメンバーの平均年齢が若い。

 著者である「NPO法人ヒューマンコミュニケーション」会長兼理事長の清水一憲氏は言う、「これからは、NPOが社会を形成して行く。行政や企業への依存から脱却し、各地域の市民自らが企画し、実践し、提言して特色をアピールして行く真の意味での市民による地域形成が必要である。それは、市民としてのネットワーカー達が集積するアソシエーションの可能性を意味している。そう、アソシエーションの可能性は始まったのだ。」と・・・。

 今年、日本文学館・出版大賞の特別賞を受賞した本書は、「若者の強き言挙げ」であると共に、研究と実践を地で行く清水氏が著した全てのNPO関係者に贈る究極のNPO理論書である。


(新宿南店仕入課 西山純一)


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