« 2011年01月 | メイン | 2011年03月 »

2011年02月11日

ピクベス!2010 番外編

「ピクベス!2010」ランキング30も発表し終えたところで、今度はゆるーく番外編です。


今回のフェアは二本立て。

ひとつは先日発表させていただいたランキング。
そしてもうひとつが「2010年にピクウィック・クラブを騒がせた本」です。

こちらは既刊あり、絶版ありのフリーダムブックリスト。

絶版本は店頭で手に取っていただくことはできませんが、表紙写真とともに、もちろん担当者のコメントもご用意してあります。


なぜ「騒がせた本」なのかというと、なんとなく「おすすめ!」とか言いたくないからです。変にこだわっていてすいません。


というわけで、今回は「2010年にピクウィック・クラブを騒がせた本」ブックリスト公開です。
 
 

『クラッシュ』 J.G.バラード/柳下毅一郎 創元SF文庫
『久生十蘭短篇選』 久生十蘭 岩波文庫
『マジック・フォー・ビギナーズ』 ケリー・リンク/柴田元幸 早川書房
『20世紀SF 〈4〉1970年代— 接続された女』 中村融・山岸真編 河出文庫
『二匹』 鹿島田真希 河出文庫
『西城秀樹のおかげです』 森奈津子 ハヤカワ文庫JA
『生きて、語り伝える』 ガブリエル・ガルシア=マルケス/旦敬介 新潮社
『崩壊』 オラシオ・カステジャーノス・モヤ/寺尾隆吉 現代企画室
『女と人形』 ピエール・ルイス/生田耕作 晶文社
『澁澤龍彦ドラコニア・ワールド』 澁澤龍彦・澁澤龍子 集英社新書ヴィジュアル版
『あまりにも騒がしい孤独』 ボフミル・フラバル/石川達夫 松籟社
『ソドムの百二十日』 マルキ・ド・サド/佐藤晴夫 青土社
『ポムレー路地』 マンディアルグ/生田耕作 奢覇都館
『ライオンの皮をまとって』 マイケル・オンダーチェ/福間健二 水声社
『昼が夜に負うもの』 ヤスミナ・カドラ/藤本優子 早川書房
『サーカスの息子 上・下』 ジョン・アーヴィング/岸本佐知子 新潮文庫
『あなたまかせのお話』 レーモン・クノー/塩塚秀一郎 国書刊行会
『肉体の悪魔』 ラディゲ/中条省平 光文社古典新訳文庫
『ボートの三人男』 ジェローム・K・ジェローム/丸谷才一 中公文庫
『最低で最高の本屋』 松浦弥太郎 集英社文庫
『アメリカにいる、きみ』 C・N・アディーチェ/くぼたのぞみ 河出書房新社
『鳥を探しに』 平出隆 双葉社
『ことばのために 大人にはわからない日本文学史』 高橋源一郎 岩波書店
『淑やかな悪夢』 シンシア・アスキス他/倉阪鬼一郎・南條竹則・西崎憲 創元推理文庫
『バートルビー—偶然性について』 ジョルジョ・アガンベン/高桑和巳 月曜社
『夜の声』 W・H・ホジスン/井辻朱美 創元推理文庫
『蠅の王』 ウィリアム・ゴールディング/平井正穂 新潮文庫
『渚にて―人類最後の日 新版』 ネヴィル・シュート/佐藤龍雄 創元SF文庫
『銀河ヒッチハイク・ガイド』 ダグラス・アダムス/安原和見 河出文庫
『偽書「東日流外三郡誌」事件』 斉藤光政 新人物文庫
『泰平ヨンの航星日記 改訳版』 スタニスワフ・レム/深見弾・大野典宏 ハヤカワ文庫SF
『地獄のコウモリ軍団』 バリー・ハナ/森田義信 新潮社 絶版
『美しい水死人 ラテンアメリカ文学アンソロジー』 ガルシア=マルケス他/木村栄一 福武文庫 絶版
『ブルー・シャンペン』 ジョン・ヴァーリイ/浅倉久志 ハヤカワ文庫 絶版
『ペンネンネンネンネン・ネネムの冒険』 宮沢賢治 金の星社 絶版
『一万一千本の鞭』 ギヨーム・アポリネール/須賀慣 富士見ロマン文庫 絶版
『アルゴールの城にて』 ジュリアン・グラック/安藤元雄 白水Uブックス 絶版
『ファニ-・ヒル』 ジョン・クレランド/吉田健一 河出文庫 絶版


2011年02月07日

山尾悠子さん特別寄稿エッセイ

こんにちは。今回は、「ピクベス!2010」ランキング第1位とさせていただきました『夢の遠近法 山尾悠子初期作品選』(国書刊行会)の著者である、山尾悠子さまより特別寄稿していただいた「夢の遠近法あるいは書店熱のこと」というエッセイを公開させていただきたいと思います。



夢の遠近法あるいは書店熱のこと

山尾悠子


 特別な街の特別な書店というものは、本好きならば誰にでもあるのかもしれない。私にもそれがあったのは学生時代、三十年以上も前のことで、店は今はない。それでも店名を思い浮かべるだけで、アドレナリンが暴走するほど思いつめ通い詰めた当時の光景が眼に浮かぶ。古都の繁華街に面したK書院の一階はやや一般的な品揃え、目当ての書棚は階段を上がった二階にあり、この階段をいつか一回は転げ落ちるのではないかという危惧がずっとあったのを覚えている。慎重に手摺に手を置いて段を上るあいだにも心拍は期待に高まり、さてと書棚に眼を凝らし、うわっTKの新刊がまた出ている、と確認する頃にはすっかり取り乱している有り様。大型の箱入り豪華本が毎月一冊か二箇月に三冊のペースで出ていた作家に当時は夢中になっていて、夏休みなどに帰省すると地方の書店では絶対にお眼にかかれないものだから、K市にいる間はとにかく食事抜きで本を買う、貧血してへたりこもうが買う、鬱蒼とした著作群を我が物とするためならば脳内麻薬は確かに出たのだった。彦の字の尻尾が竜の落とし子のようにくるりと巻いたSTのサイン本を購入したのもここ、ここでしか買えないあらゆる本にこの場で出会い、高額すぎて我が物とできない本をこの場で恨めしく撫で擦ったものだ。
 その若い頃に書いた下手な小説を、数十年も経ってから無闇に高価な全集本として出版することになった時、分不相応、僭越、それより何より申し訳なさに身の置き所がない気分になったのは当然というべきことだった。まさか貧血してへたりこむ人などは。心配するうちに『山尾悠子作品集成』は予想外に版を重ね、しかしここへ来て軽量廉価版『夢の遠近法』を別に出すことができたので、ようやく少しばかり安堵した次第。版元の考えとしては特に若い人のためとか。私が若い頃に出会った豪華絢爛な面子には及びもしないが、ごく若い人間が夢想でいっぱいになった頭で書いた本としてもしも親近感を持って頂けるようならば望外の喜びなのである。



「ピクベス!2010」フェアは2月20日(日)まで開催中です。