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2010年04月29日

総合ランキング途中経過 他

とうとう4月も下旬です!
以前から予告していた途中経過を、
ここに発表致します!

■ワールド文学カップ世界ランキング集計方法
参加している作品の売上冊数を文庫本1冊=1ポイント、単行本1冊=3ポイントとしてそれぞれの所属チームの得点を集計し、世界ランキングを決定致します。 ランキングは毎週、一週間の売上を集計して「今週のランキング」として発表(「往年の名選手たち」「日本文学代表選抜会」は別枠にて発表)。会期通算のランキングは、途中経過を4月下旬に、会期終了の5月17日以降に最終的なランキングを発表する予定です。

と思っていたものの、
今までのランキングをただ集計しても味気ないことは間違いない。
ということで今回の発表では週間ランキングとは趣向を変えて、
集計期間中ポイントを稼ぐことが出来なかった、
つまり売れていない国のランキングを公表致します!


今こそ注目!
売れていない国ランキング
集計期間:4/1~4/25


【ワールド文学カップ】
第1位 6pt 1930年代スペイン
第2位 7pt 芸術と頽廃の国オランダ
第3位 12pt 劇場としてのドイツ

サッカーではあれほどの勢いを見せるスペインが、何と売上ランキング最下位に! ヘミングウェイとキャパとリャマサーレスの三人のみが所属という、恐ろしいまでに偏ったラインナップが原因なのでしょうか。なかでもリャマサーレスの『狼たちの月』は一冊も売れていない! 円城塔さんがセンターフォワードに、国書刊行会樽本さんが左サイドバックに起用しているというのに、これでは申し訳が立ちません。第2位のオランダもサッカーでは「オレンジ軍団」の愛称を持つ常勝国。1位のスペインも同様ですが、この二国は幅の狭い棚、言わば「死のグループ」に属しています。オランダにはマキューアンやカミュといった強力な外国人助っ人選手も所属しているのですが、肝心のオランダ人作家の不在が痛手になっているのかもしれません。第3位は複数エントリーしているドイツの中でも、特に古典が多いラインナップ。ご来場される方のほとんどが既に読んでいる可能性もありますが、ゲルマン魂を見せて欲しいところです。


当たり前ですが、自分の好きな本は既に読んでいるからこそ好きになれるもの。この集計方式ではどうしても未読率の高い本が上位にのぼり、逆に有名な古典作品など既に多くの人の手に取られている本は、どれほどの名著でも下位に留まらざるを得ません。そこで、こんなものをご用意致しました。

じゃあーん。

その名も「ワールド文学カップ 特別観覧ご招待券」!!
裏返すと…。

じゃじゃあーん。

あなたの応援する国や作品への、
コメントを寄せるスペースとなっています!!
お書き頂いたコメントは会場内の掲示板に貼りつけます!

既に貼られている推薦コメントには、著名人の方々の名前がちらほら。
(※一般のお客様は個人情報をお書きにならないようお願い致します)

このチラシは会場入口付近、
「お客様ノート」の真横に常置しています。

用紙投函口に、ぽいっと投げ入れて頂ければ、
順次貼りつけさせて頂きます。

あなたの大好きな本、
多くの方に手に取ってもらいたい本を、
どしどしご投函下さいませ。

熱い推薦、お待ちしております!

2010年04月26日

ブックレット掲載:最終回

前回から随分と間が空いてしまいましたが、
これが最後のブックレット掲載となります!
新宿まで来られない方々、大変お待たせ致しました!
最後は「日本文学代表選抜会」と「あとがき」、
そしてこれを作るため丸一日を棒に振った「索引」です!

冊子となったブックレットは、
紀伊國屋書店新宿本店
2階中央催事場にて大好評無料配布中!
大好評すぎて残りわずかです!!
お求めの方は全速力で新宿へ!


◎PDFを開く◎


保存してご覧になる方は右クリックの上、
「対象をファイルに保存」をお選び下さい。


■ピクウィック・クラブ黒澤のベストイレブン

FW:ポール・オースター『ムーン・パレス』
FW:筒井康隆『時をかける少女』
MF:レイ・ブラッドベリ『塵よりよみがえり』
MF:イタロ・カルヴィーノ『不在の騎士』
MF:テッド・チャン『あなたの人生の物語』
MF:ジョン・クロウリー『エンジン・サマー』
DF:村上春樹『風の歌を聴け』
DF:アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグ『オートバイ』
DF:カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』
DF:カート・ヴォネガット『猫のゆりかご』
GK:J・D・サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』

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「「タケシ、ゆりかごだ!!」
 「って、ヒューガさん、それはとりかごです!!」
  ……。」(黒澤)

2010年04月25日

売上ランキング:第三週

さあ、今週もこの時がやって参りました。
第三週のランキング発表です!
世界王者への道は長く険しく、
どの国が栄冠を手にするのか、
開催者も全く予想が立ちません!

■ワールド文学カップ世界ランキング集計方法
参加している作品の売上冊数を文庫本1冊=1ポイント、単行本1冊=3ポイントとしてそれぞれの所属チームの得点を集計し、世界ランキングを決定致します。 ランキングは毎週、一週間の売上を集計して「今週のランキング」として発表(「往年の名選手たち」「日本文学代表選抜会」は別枠にて発表)。会期通算のランキングは、途中経過を4月下旬に、会期終了の5月17日以降に最終的なランキングを発表する予定です。

第一週の王者「諸外国の文学:タイ」は
翌週には「エロスの大国フランス」に
その玉座を譲り渡すこととなりました。
果たして初めてのディフェンディング・チャンピオンは誕生しうるのか!?
ランキングは以下の通りになりました!


売上ランキング(第三週)
集計期間:4/15~4/21


【ワールド文学カップ】
第1位 34pt 魔法の右足コロンビア
第2位 25pt 短篇小説ランドアイルランド
第3位 21pt 郷愁を誘うイラン
第3位 21pt 諸外国の文学:タイ
第3位 21pt 笑いの帝王イングランド
次点 狂気の温床フランス、ザ・ルーツナイジェリア

【得点王】
9冊 ガブリエル・ガルシア=マルケス『エレンディラ』
   (所属チーム:魔法の右足コロンビア)
9冊 ミヒャエル・エンデ『モモ』
   (所属チーム:子ども心の国ドイツ)

【往年の名選手たち】
第1位 8pt ジョージ・オーウェル『一九八四年』
第2位 7pt テッド・チャン『あなたの人生の物語』
第2位 7pt サキ『サキ短編集』
第4位 6pt ロバート・A・ハインライン『夏への扉』
第4位 6pt カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』

【日本文学代表選抜会】
第1位 11pt 円城塔『Self-Reference ENGINE』
第2位 6pt 幸田文『台所のおと』
第2位 6pt 向田邦子『思い出トランプ』
第2位 6pt 武田百合子『犬が星見た』
第5位 5pt 矢川澄子『兎とよばれた女』
第5位 5pt 小栗虫太郎『黒死館殺人事件』

とうとう振り抜かれた魔法の右足! 皆様、これが世界文学の旗手の実力です。今や必読書とも喧伝される『百年の孤独』は勿論のこと、『エレンディラ』と『予告された殺人の記録』も凄まじい勢いで得点をあげ、チームメイトのホルヘ・フランコは驚異の1トップの真価を後列からただ呆然と眺めるばかり。そして第2位につけたのは「短篇小説ランドアイルランド」。ベケットの不参加もなんのその、再評価の気運が高まるウィリアム・トレヴァーと新時代を告げるクレア・キーガンの単行本組に加え、フランク・オコナーとジェイムス・ジョイスも新しいエースたちにスルーパスを流し続けています。3位はなんと同着で三ヵ国がランクイン! 颯爽と抜けだしたイランはオマル・ハイヤームとサーテグ・ヘダーヤトという『ルバイヤート』コンビが独走、二列目からアシストを出し続けるシリン・ネザマフィの姿も輝いています。「笑いの帝王イングランド」では『スナーク狩り』が相変わらず好調です。そして復活した孤高のエース、ラッタウット・ラープチャルーンサップ! 『観光』に再び火がつき、初代王者の風格を漂わせるランクインとなりました。

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世界ランキングは一体どうなってしまうのか!?
気になる途中経過は近日中に発表予定です!

2010年04月23日

円城塔先生がご来店!

紹介が大変遅くなってしまいましたが、
円城塔先生がワールド文学カップにご来店、
サイン本を大量に作って下さいました!

円城先生の作品は二作品が参戦中。
こちらは最新作の『後藤さんのこと』、
「Road to 2014現代日本」にエントリーしています。

文庫化されたばかりの『Self-Reference ENGINE』は
「日本文学代表選抜会」に参戦中!

ワールド文学カップに来て下さるお客様に向けての、
メッセージも頂戴致しました!

隅に描かれた前衛的な絵は、
拡大するとこんな感じ。
円城先生の「想像」が、
我々の感覚では測り得ないことを再確認しました。

さらにさらに。
ワールド文学カップ出場中の作品に絞って、
ベストイレブンを選出して頂きました!

■円城塔のベストイレブン

FW:アドルフォ・ビオイ・カサーレス『モレルの発明』
FW:ミルチャ・エリアーデ『ムントゥリャサ通りで』
FW:フリオ・リャマサーレス『狼たちの月』
MF:リチャード・パワーズ『舞踏会へ向かう三人の農夫』
MF:スティーヴ・エリクソン『黒い時計の旅』
MF:イタロ・カルヴィーノ『冬の夜ひとりの旅人が』
DF:ジャック・ルーボー『麗しのオルタンス』
DF:P・G・ウッドハウス『比類なきジーヴス』
DF:ミハイル・ブルガーコフ『巨匠とマルガリータ』
DF:スタニスワフ・レム『虚数』
GK:イスマイル・カダレ『死者の軍隊の将軍』

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ここに挙がっている作品は、
全てワールド文学カップ会場にて購入頂けます。
数量限定のサイン本をお求めの方は、
是非、これらの作品も合わせてご覧下さい。

円城先生、色々とわがままを聞いて下さり、
どうもありがとうございました。

2010年04月19日

解説者による戦力分析:国書刊行会樽本さん

4336049394.jpg今回の「解説者による戦力分析」では国書刊行会編集部の樽本さんにお話を伺います。「未来の文学」や「短篇小説の快楽」といったシリーズで海外文学ファンの涎をだらだらと流れさせ続けている樽本さん。彼の選ぶベストイレブンは必見です。樽本さん、今日はよろしくお願いします。

──まず今回のブックレットをお渡しさせて頂きます。
樽本:ありがとうございます。ブログ上のPDFは少し見させて頂きました。「ウリポを生んだ国フランス」の『煙滅』のコメントがちゃんと「い段抜き」で書かれていましたね。
──よくぞお気付き下さいました。初めて指摘されました。
樽本:「そればっか」や「ノベル」と書かれていたので。「そればっかり」や「小説」では駄目ですからね。
──ありがとうございます。それではインタビューを始めさせて頂きます。まず、この企画「ワールド文学カップ」始めて聞いたとき、どんなものが出てくると思われましたか?
樽本:この「ワールド文学カップ」ってサッカーの事ですよね? フォーメーションが載っているのをブログでも見たんですけど、スポーツ全般が分からないので、位置関係が全く分からなくて。
──6月から本当のワールドカップがあるので、それを意識してみました。
樽本:はいはい。外国文学の翻訳家って、意外とサッカー好きが多いんですよ。大森望さんや柳下毅一郎さんもそうですし。そういう人たちってサッカーが始まると本当にそれに集中してしまうので、原稿が上がってこなくなるんです。スポーツは前から好きではなかったんですけど、最近ではさらに嫌いになりました。全ての仕事を放棄して開催地まで行っちゃったりするから、困るんですよね。
──それは本当に困りますね(笑)。
樽本:最近はTwitterとかもあるからわかってしまうんです。確認できますからね。
──では実際にブックレットをご覧になって頂いてどうでしょう?
樽本:こう見るとドイツでも色々と分かれているんですね。ああ、カフカはカフカなんですね。
──一応チェコですが、一つの国として取り上げました。
樽本:国書刊行会に関して言うと「文学の冒険」があらゆる国の文学を取り上げたシリーズだったのですが、もう終わっちゃったんですよ。最初はきちっとセレクトしてやっていたんですけど、だんだんずるずるとしていったというか、面白そうなのが入ってくるとシリーズに入れちゃうという風になって次第に混沌としていって、だらだら続いているからやめようということになったんです。国書刊行会は文庫が無いので、色々なものがごちゃまぜになっている外国文学のシリーズはあってもいいんじゃないかなと思いますけど。文庫的な意味合いを含めて。
──「文学の冒険」というタイトルもいいですよね。
樽本:意味があるようでないんですけどね。あのシリーズは私が入社する前から始まっていて、当時は外国文学の紹介が少し停滞していた頃だったので、それまで訳されていなかったジョン・アーヴィングやトマス・ピンチョンなどを紹介する意味合いがあって、全15冊くらいのシリーズとして始めたところがベースとなっています。私は実は『レッド・ダート・マリファナ』というテリー・サザーンの作品しか担当していません。
──テリー・サザーンというと『キャンディ』の作家ですよね?
樽本:そうそう。でも、実はこれが一番売れていないんですよ。「文学の冒険」は結構「へぇ」っていうものが多いのに、その中でも一番売れていないというのは余程のことなので、嫌なんですよね。
──余程のことですね(笑)。
樽本:今実際に私が担当しているのはSFシリーズの「未来の文学」です。
──フェアにはラファティの『宇宙舟歌』が入りました。
樽本:ありがとうございます。他には「短篇小説の快楽」を担当しています。
──今度ビオイ=カサーレス(注1)の新刊が出るんですよね? 待ち侘びました。
樽本:時間がかかるんですよ。
──このシリーズに関して言うと、僕はクノーの『あなたまかせのお話』ほど自分の琴線に触れた作品はなくて、コメントに「ここ十年で最高の本」なんて書いちゃいました。
樽本:PDFで見て嬉しいなと思いましたよ。もっと売れてもいいと思うんですけどね。「短篇小説の快楽」は「文学の冒険」に代わる新しいシリーズを考えろ、というところから始まったんです。最初は「文学の快楽」という名前で企画を出したんですけど、「冗談っぽい」という理由で却下されました。あと英米の作家ばかりだったので、「アメリカ、イギリスばっかりか、失望した」とか罵倒されました(笑)。それで、まあ色々と考えて、いろんな国の、短篇集のシリーズがいいかな、と思いまして。短篇集はあんまり売れないというイメージがあるから、それを逆手にとってシリーズにしちゃおうと思ったんです。「快楽」だけが残りました。
──本当に素晴らしいシリーズだと思います。「快楽」(笑)。
樽本:パンフレットを作るときも、ボルヘスの「短ければ短いほどいい」という言葉を採用しました。長篇小説なんて読んだことないなんて言っているし。
──「『ドン・キホーテ』大好き」って至るところで言ってるくせに(笑)。
樽本:そうそう。「短篇小説こそ小説」みたいな感じでパンフレットを作って、それをやりながら一方でアラスター・グレイの『ラナーク』やサミュエル・R・ディレイニーの『ダールグレン』など、超分厚い作品をやったりもしてます。
──「短篇小説の快楽」の話題が出たところで質問させて頂きたいのですが、第一弾と第二弾はとんとん拍子で出たじゃないですか。その後クノーまでに少し時間が空き、今回ビオイ=カサーレスの朗報を頂きましたが、最後の一冊カルヴィーノはいつになるんでしょうか?
樽本:カルヴィーノは今年中になんとかなればいいな、と思っています。あと、ウィリアム・トレヴァーはまた出します。前回の『聖母の贈り物』はトレヴァーの初紹介だったので、ベスト盤のような意味合いで出版したんです。だから舞台がアイルランド以外のものもあったんですが、今回はアイルランドが舞台の作品に絞って出します。すごく面白いですよ。
──楽しみです。『聖母の贈り物』を読んだときにはびっくりしましたから。
樽本:トレヴァーには私もかなり驚かされました。若島正さんが絶賛されていたので、そんなに面白いのなら、と始めたんです。でも、トレヴァーは既に海外では「最も短篇小説の上手い人」「短篇小説の神」として扱われていて、トレヴァー賞という文学賞の名前にもなっているほどの人なんです。それなのに日本では全然紹介されていなくて。これだけすごい作家がもう何十作と書いているのに全然紹介されていない、というのは不思議なんです。まだまだ他にもこういう作家はたくさんいると思うんですよ。よく「紹介されていないのには理由がある。出てない作家はその程度の作家なんだ」なんて言う人がいるんですが、私はそんなことはないと思うんです。ただ単に出版社の編集者が怠惰なだけなんですよ! 新しい作家をどんどん紹介するのは基本なので良いんですが、その過程で編集者やら翻訳者からスルーされる作家・作品が必ず出てくるんです。選ぶ人の趣味とか感性とか、そのとき流行っていることに影響されますからね。それでとりこぼしたものに凄いのがあったりする。過去数十年、見逃されつづけた凄い作家がたくさんいるはずなんです。トレヴァーのおかげで確信しました。そういう作家、作品をどんどん発掘していかないといけない。新しい作家を探すだけではなくて。それと「翻訳が難しい」という理由もよく聞くんですが、それについても「そんなことはない」とはっきり言える。だってジョイスの『フィネガンズ・ウェイク』が訳されている国ですよ。あれが訳せるならどんな作品だって訳せますよ。と言うと、「気楽に言いやがって」と怒られるでしょうが……自分で訳すわけじゃないので。
──ありがとうございます。ではフェアの質問に戻って、この53ヵ国で樽本さんの気になる国はどこですか?
樽本:あんまり国単位で読んだことはないんですけど、イタリアですかね。イタリアには狂った作家がもっと沢山いると思うんです。これまで紹介されてきた作家たちはまだ穏やかというか。カルヴィーノだけちょっと狂っていますけど、それでもまだ真面目ですしね。もっと変なのがあると思うんです。
──タブッキやブッツァーティは狂っている感じがありませんか?
樽本:そうですね。でも、もっと狂っていていいと思います。あと、フランスももっと変なのがあってもいいですよね。
──今回のラインアップではフランスは古典が多くなりました。
樽本:古典でも変なのがありますよね。国書刊行会では今度『ジャリ全集』を出しますよ。
──本当ですか? 僕、ジャリが大好きなんですよ。
樽本:そうでしたか。800ページくらいで二段組、箱本の形式で、コラムやエッセイも入れる予定です。
──宝物ですね。今まで翻訳の無かった『昼と夜』をずっと読みたかったんです。
樽本:ジャリは変なんですよ。イタリアとフランスと、あとはロシアかな。ロシアも結構紹介されていますね。あ、でもソローキンは入っていないんですね。
──そうなんですよ。棚が狭くて入れられませんでした。
樽本:最近『早稲田文学』でも新しいのが訳されていましたね。ソローキンはすごい作家ですよ。『ロマン』を読んだ時の衝撃は忘れられない。
──イタリア、フランス、ロシアですね。ありがとうございます。では今度は逆に、一般のお客様がこのラインナップを見て、どの国の本を買っていかれると思いますか? つまり優勝国予想をお願いします。
樽本:難しいな。そういう予想が出来ないのが国書刊行会なんです(笑)。でもお客さんの立場になると、装幀が大事になりますよね。見た目が可愛らしいというか、持っていたいと思うのは、そうだな、スペインのリャマサーレスとかかな。『狼たちの月』。ちょっと渋いけど、これもすごい内容だし是非読んで頂きたいですね。
──あれはいい作品ですよね。
樽本:「戦争に次ぐ戦争アメリカ」はヴォネガットが入ってるから強いかな。表紙も可愛らしいし。ボルヘスもいいんじゃないですか。私はあんまり好きじゃないんですけど。あと、新潮社のガルシア=マルケスのシリーズはカバーを取るとチョコレートみたいな色合いで良いですよね。女の子は喜ぶと思いますよ、しっとりした紙を使ってるし。
──誰も書店ではカバーを取らないですよ(笑)。ではそろそろ樽本さんのベストイレブンをお伺いしてもよろしいですか?
樽本:そうですね。守りと攻めでいいんですよね。じゃあ守りの方からいくと、まず一人は先程お話したトレヴァーの次の新刊『アイルランド・ストーリーズ(仮)』ですね。あとはジーン・ウルフの『ブック・オブ・デイズ(仮)』。12篇入っているんですけど、それぞれが建国記念日とかクリスマス・イブとか記念日にちなんだ短篇となっていて、最後がニューイヤーで終わるというSF短篇集なんです。
──面白そうですね。ではその二作をディフェンスの真ん中に置いて、残りの二人は足が速そうな奴をお願いします。
樽本:足が速そう……やっぱりリャマサーレスの『狼たちの月』とパハーレスの『螺旋』ですかね。木村榮一先生の二作品ですね。
──スペインが両サイドを駆け上がる感じですね。
樽本:攻めるのは、一つが『早稲田文学』に紹介されていたソローキンの『青脂』。いずれどこかから出るでしょうね。あとはまた木村榮一さんになるんですが、スペインのキム・ムンゾーという作家の短篇集。いくつかは『新潮』とかで紹介されていますが、この人も面白い作家なので、いつか出したいなと思ってます。
──ありがとうございます。すごいラインナップになってきました(笑)。
樽本:日本人でも良いんですか?
──もちろんです。
樽本:そうか。じゃああとは深沢七郎にしようかな。「絢爛の椅子」という短篇があって、それがすごいんですよ。これを攻めにします。残るは中盤か。
──そうですね、ミッドフィルダー三人とゴールキーパーです。中盤には樽本さんの人生の三冊を入れて欲しいですね。
樽本:じゃあ、大学でずっとジャリの研究をしていたんで『ジャリ全集』と、あとはラブレーの『ガルガンチュアとパンタグリュエル』と『千一夜物語』。この三冊ですかね。
──いいですね。『ジャリ全集』は本当に楽しみです。では最後のゴールキーパーは何も通さない、全てを拒むような作品でお願いします。
樽本:じゃあ、拒むわけではないですけど『デイヴィッド・コパフィールド』で。四冊もあるので、ボールが入りにくいんじゃないかと。
──量の問題なんですか(笑)。
樽本:でも『千一夜物語』のほうが多いか。入れ替えましょう。ゴールキーパーに『千一夜物語』で、中盤を『デイヴィッド・コパフィールド』にします。ぜったいに中野好夫訳の新潮文庫でお願いします。
──恐ろしいチームが生まれましたね。ありがとうございます。では、最後にフェアに来て下さるお客さんにメッセージをお願いします。
樽本:単行本だと結構高いものがあるんですけれど、それを買わないと外国文学はもう出なくなっちゃうので、文庫本ばかりでなく単行本も買って下さい。今買わないと本当に十年後には外国文学が全く出版されなくなってしまいますから。外国文学は読者にかかっています。
──ありがとうございました。


注1:2010年5月刊行予定のアドルフォ・ビオイ=カサーレス『パウリーナの思い出に』を指す。


■樽本さんのベストイレブン

FW:ウラジーミル・ソローキン『青脂』
FW:キム・ムンゾーの短篇集
FW:深沢七郎「絢爛の椅子」『深沢七郎集 第二巻』
MF:アルフレッド・ジャリ『ジャリ全集』
MF:フランソワ・ラブレー『ガルガンチュアとパンタグリュエル』
MF:チャールズ・ディケンズ(中野好夫訳)『デイヴィッド・コパフィールド』
DF:フリオ・リャマサーレス『狼たちの月』
DF:サンティアーゴ・パハーレス『螺旋』
DF:ウィリアム・トレヴァー『アイルランド・ストーリーズ(仮)』
DF:ジーン・ウルフ『ブック・オブ・デイズ(仮)』
GK:『千一夜物語』

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(2010年3月15日、紀伊國屋書店新宿本店にて)
(インタビュー・記事:蜷川・木村)


樽本さん、どうもありがとうございました。来月刊行されるビオイ=カサーレスは勿論のこと、カルヴィーノやトレヴァー、ジーン・ウルフの新刊も楽しみでなりません。そして何より『ジャリ全集』! 『超男性』をフェアに入れることが出来ずに嘆いていたのが、こんなに嬉しい形で慰められるとは思いませんでした。一家に一冊、今から貯金しておきましょう。その他の近刊予定はこちらから見ることができます。目が離せないのはいつものことですが、今年の国書刊行会には大いに注目する必要がありそうです。

2010年04月17日

売上ランキング:第二週

波乱の結果となった最初の結果発表から、
早くも一週間が経過致しました!
第二週の集計結果をここに発表致します!

■ワールド文学カップ世界ランキング集計方法
参加している作品の売上冊数を文庫本1冊=1ポイント、単行本1冊=3ポイントとしてそれぞれの所属チームの得点を集計し、世界ランキングを決定致します。 ランキングは毎週、一週間の売上を集計して「今週のランキング」として発表(「往年の名選手たち」「日本文学代表選抜会」は別枠にて発表)。会期通算のランキングは、途中経過を4月下旬に、会期終了の5月17日以降に最終的なランキングを発表する予定です。

第一週のランキングは一旦リセットされ、
ここに発表するのは4月8日以降の集計結果のみとなります。
果たして王者はタイトルを防衛することができるのか?
気になるランキングは以下の通りです!


売上ランキング(第二週)
集計期間:4/8~4/14


【ワールド文学カップ】
第1位 21pt エロスの大国フランス
第2位 19pt 笑いの帝王イングランド
第3位 18pt 魔法の右足コロンビア
第4位 17pt 子ども心の国ドイツ
第4位 17pt バベルの図書館アルゼンチン
次点 狂気の温床フランス、文明の衝突するインド

【得点王】
10冊 ミヒャエル・エンデ『モモ』
   (所属チーム:子ども心の国ドイツ)

【往年の名選手たち】
第1位 8pt テッド・チャン『あなたの人生の物語』
第1位 8pt サキ『サキ短編集』
第1位 8pt ジョージ・オーウェル『一九八四年』
第4位 6pt カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』
第5位 5pt ジョゼフ・コンラッド『闇の奥』

【日本文学代表選抜会】
第1位 6pt 大江健三郎『性的人間』
第2位 5pt 中原中也『中原中也詩集』
第2位 5pt 色川武大『怪しい来客簿』
第2位 5pt 澁澤龍彦『高丘親王航海記』
第2位 5pt 澁澤龍彦『うつろ舟』


次点まで含めて、何と第一週のランキングに昇ったチームは全て姿を消し、全く新しいランキングが誕生致しました。第1位に登りつめたのは「エロスの大国フランス」。第一週の得点王『閉ざされた城の中で語る英吉利人』のみならず新たなエース『空の青み』が恐ろしい得点力を発揮、超攻撃的な2トップが完璧に機能し、この二作品だけで12ptを獲得しました。2位の「笑いの帝王イングランド」では『ボートの三人男』が一人で駆け上がり、『スナーク狩り』を中心とするルイス・キャロル三作品の二列目からの波状攻撃が得点を量産しています。コロンビアが3位につけているのは“魔法の右足”が縦横無尽に振り抜かれた結果。『百年の孤独』だけで12ptを叩き出しました。「子ども心の国ドイツ」では『モモ』が本領を発揮し得点王となる大活躍、『飛ぶ教室』も良いアシストをしています。同着4位の「バベルの図書館アルゼンチン」は大方の予想を裏切って『創造者』と『エル・アレフ』が爆発、不調のエース『伝奇集』を十分にサポートする結果となりました。

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どこまでも予想を拒むワールド文学カップ。
今後の動向が開催者自身不安でなりません。

2010年04月16日

「ディアスポラ文学フェア」開催中!

現在開催真っ最中のワールド文学カップですが、
連動企画として「ディアスポラ文学フェア」が行われています。


その開催場所とはなんと……お向かいのジュンク堂書店新宿店!

今回はTwitter上でも“ライバル書店同士の枠を超えた!”と話題になった
このジュンク堂書店新宿店の「ディアスポラ文学フェア」を
突撃取材してまいりました。

さて、7階で行われているということですが、どこだろう……

あ!ありました!

おおー!

「ディアスポラ」とは《国外離散/母国の外で 母語の外で 世界の〈あいだ〉で書きつづける人たち》のこと(フェアポップより)。国別になっているワールド文学カップではおさまりきらなかった文学の一面を、この「ディアスポラ」というキーワードによって掬い取っています。

中でもいちばんのおすすめは原章二著『二つの言葉の町 モントリオール──カナダ・ケベック文化紀行』(彩流社)だそうです。

フェアではワールド文学カップのブックレットも配布されていました。小出しにしないとすぐになくなってしまうそうで、「ここに来た人は多分ほとんど帰りにワールド文学カップ覗きにいってますよ」(担当者・阪根さん談)。

担当者の阪根正行さんは「ワールド文学カップを見たらとても面白かったので、もっと盛り上げたいと思いました。たくさんの人に見に行って貰いたい」と、独自にこのフェアを企画されたのだそうです。

同じ新宿地区の書店同士がつぶし合うのではなく、
刺激をし合ってこのような企画が生まれたことにほんとうに感激感動しました。
これも文学の力のひとつなのかもしれません。

「ディアスポラ文学フェア」はジュンク堂書店新宿店7階23番フェア棚にて、
4月30日(金)まで開催予定です。みなさまぜひ足をお運び下さい!

2010年04月15日

Lifeで紹介されました!

紀伊國屋書店は今月、
以前から一緒にイベントにやったり、
新宿本店常設棚「文化系書店紀伊國屋Life堂」でお世話になっている
TBSラジオ・月イチ深夜の生放送番組「文化系トークラジオLife」
のスポンサーになりました。

というわけでさっそく、LifeのWEBサイトでは、
3月末の放送後記動画つきでワールド文学カップの告知をして下さっています!!


2010年3月28日「ライブメディアの現在」~放送後記動画


Lifeは鈴木謙介さんをメインパーソナリティとする「文化系」ラジオ番組で、
仲俣暁生さんや佐々木敦さんなど文学に縁の深い方たちも出演する、
ピクウィック・クラブの強力なサポーターです。

Lifeの黒幕・長谷川プロデューサーとは只今、
「一緒に何かやろう!」と企画を練っています。
ピクウィック・クラブとLifeのコラボレーションにご期待下さい。

さあ、まずは今すぐ動画をチェック!

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◎Lifeのホームページへ◎

2010年04月14日

『青い野を歩く』クレア・キーガン(白水社)

青い野を歩く →bookwebで購入

「寒い日に読みたい憂愁のアイルランド・バラッド短篇集」

 読むだけでこれが北の国であることがわかる。色彩はそう豊かではなく、干し草やナナカマドなど南ではあまり見られない植物が風景の中によく出てくる。装丁の風景が静かなように、小説も静かだった。冬に読んだのが良かった。この寒い時期とアイルランドの風土がマッチしていて通勤時間が豊かになった。

 憂愁のアイリッシュ・バラード短篇集。アイルランドの作家はフランク・オコナー、ジョイス、マグガハン、トレヴァーなどを読んだが、どれも憂愁漂う作品だったように思う。この物語もどこか憂愁漂う孤独な物語が多いのだけれど、最後の最後で毎回救われる気持ちになる。特に表題作「青い野を歩く」のラストシーンは秀逸。

神はどこにいるのか、と彼は問うた。今夜、神はその問いに答える。あたりの空気は、野生のアカスグリの茂みの独特の香りに満ちている。一頭の子羊が深い眠りから目覚め、青い野を横切る。頭上では、星が転がって位置におさまる。神は、この自然だ。(P.50)

 ここでも静かな北の風景が見える。子羊が青い野を横切る。青い野というのがまた良い。夜明けが来て子羊が横切り、神父が救われ、読者も救われる気持ちになる。
それが削ぎ落としたような簡潔な文体で作られている。解説にもあるが、書かれているものよりも書かれていないものが行間から浮かび上がってくる。登場人物は決して多くは語らないのだが、ある瞬間に堰を切ったように過去や思いを語り始める。沈黙があるからこそ、その思いが強く印象づけられるのだろう。「青い野を歩く」でこういう場面がある。

彼女は、語りつくしてはじめて、人は自分を知ることができると言った。会話の目的は、ひとつには、自分はすでになにを知っているのかを発見することにある。(P.48)

 黙っていても己を知ることができないということ。キーガンにとって書くというのは己を知るための読者との会話なのかなと思った。ならば読者は気合いを入れなければ。言葉が少ない中でこんなことを言われると、そうだなあと思ってしまう。
ところどころでキーガン本人が垣間見えるときがある。小説は虚構のものだが、そこにキーガンが実際に見たであろう瞬間を見つける楽しみがこの小説にはあると思う。美しい描写を探すのも良い。ほとんどがそれだ。けれど、くだらないというか、この場面を抜かしても小説として成り立つのだけれど、この場面は見てないと体験してないと書けないのではないかと思える場面がいくつかある。そこにキーガンの素があるのでは。

彼女は帽子を脱ぐが、どこに置けばいいかわからなくて、また頭にかぶる。(P.29)
体をかがめて探すと、フライドポテトと卵が二個載った大きなほうろうの皿が、オーブンのなかで干からびていた。(P.92)
若者はサーモンの身を骨からほんの少しはがす。(P.146)

 細かいところまで行き届いたキーガンの眼には脱帽。蛇足と感じられないのは語りの妙だと思う。こういう箇所がキーガンの素を垣間見る瞬間じゃないかなと思った。こういう箇所が出てくると、こっちも無防備になりキーガンとの会話がぐいぐい進んでいくような気がした。

 ベスト短篇は「波打ち際」。人生の波打ち際という話である。青年の祖母は若い頃に「どうしても海が見たい」と冷酷無比な祖父に頼む。そこで一時間で戻ってこなければ祖父は先に車で帰るという。祖母は祖父に置き去りにされそうになりながら、どうにか車に乗り込んで、自分を置き去りにしようとした男と一生添い遂げることになる。それが人生の波打ち際だったのだ、と祖母は青年に語る。短篇としてびしっと決めてきやがった。そして、青年も今、人生の分岐点に身を置いている。

 こんな末恐ろしい祖父なんてやめとけと思うが、ずっと一緒にいなければならない。大きな強制力のような力に突き動かされる瞬間ってある。なぜか、自分がこうしたいわけではないのに、そうせざるを得ないときがある。祖母の憂愁が青年の未来をより憂愁にさせてしまう暗い話だ。好きだ。

 「クイックン・ツリーの夜は」はもはや呪術。ヤギが大好きな男スタックと火のような女マーガレットのラブストーリー。

あたしたちを突き動かすのは、心じゃなくて、胃袋なのね(P.194)

 これ名言だと思いました。対して、スタックは異常なほどヤギを愛していて、かわいく思えてくる。ケルト民話をからませたアイリッシュ・マジック・リアリスモのような作品。

 生まれた場所がその文学の世界観を決定づけることがよくわかる名作だった。語ること、言葉、会話、沈黙がこの短篇小説のキーワードになると思った。


(紀伊國屋書店ピクウィック・クラブ 榎本周平)


■ワールド文学カップ参戦中!
  『青い野を歩く』と合わせて読みたい本■

・アリステア・マクラウド『冬の犬』新潮クレストブックス
カナダ作家。極寒、厳冬の地に生きる人々の話。冬に読みたい小説ベスト1。
・ウィリアム・トレヴァー『聖母の贈り物』国書刊行会短篇小説の快楽
アイルランドの短篇作家。トレヴァーは登場人物を盛り上げといて、最後に彼らを打ち落とす恐ろしきスナイパー。
・ガブリエル・ガルシア=マルケス『エレンディラ』ちくま文庫
実は一番最初にこの小説が思い浮かんだ。キーガンを読むとすぐに北の物語だとわかるように、『エレンディラ』を読むとすぐに南だとわかる。キーガンにはケルト民話、マルケスにはマジックリアリズムという幻想性もある。共通項は土地に根付いた話。

※『青い野を歩く』は立川読書倶楽部の第一回課題図書でもあり、倶楽部メンバーの方々の他の書評は立川読書倶楽部WEB会報からも見ることが出来ます。非常に楽しいホームページです。(蜷川)


→『青い野を歩く』をbookwebで購入

2010年04月11日

売上ランキング:第一週

皆様大変長らくお待たせ致しました。
開催第一週の売上ランキングを
ようやくまとめることができましたので、
ここに公表させて頂きます。

■ワールド文学カップ世界ランキング集計方法
参加している作品の売上冊数を文庫本1冊=1ポイント、単行本1冊=3ポイントとしてそれぞれの所属チームの得点を集計し、世界ランキングを決定致します。 ランキングは毎週、一週間の売上を集計して「今週のランキング」として発表(「往年の名選手たち」「日本文学代表選抜会」は別枠にて発表)。会期通算のランキングは、途中経過を4月下旬に、会期終了の5月17日以降に最終的なランキングを発表する予定です。

それでは記念すべき第一回、今週のランキングです。


売上ランキング(第一週)
集計期間:4/1~4/7


【ワールド文学カップ】
第1位 30pt 諸外国の文学:タイ
第2位 25pt 反逆の国アメリカ
第3位 20pt ウリポを生んだフランス
第3位 20pt ロマンスの宝庫イングランド
第5位 19pt フーリガンだらけアルゼンチン
次点 短篇小説ランドアイルランド、カルヴィーノ万歳イタリア

【得点王】
12冊 ピエール・モリオン『閉ざされた城の中で語る英吉利人』
   (所属チーム:エロスの大国フランス)

【往年の名選手たち】
第1位 12pt テッド・チャン『あなたの人生の物語』
第2位 7pt グレイス・ペイリー『人生のちょっとした煩い』
第3位 6pt ポール・ヴァレリー『ムッシュー・テスト』
第4位 5pt ジャック・フィニイ『ゲイルズバーグの春を愛す』
第5位 4pt ギュスターヴ・フロベール『紋切型辞典』
第5位 4pt チャールズ・ディケンズ『ディケンズ短篇集』
第5位 4pt ヴァージニア・ウルフ『灯台へ』

【日本文学代表選抜会】
第1位 7pt 内田百けん『ノラや』
第2位 6pt 幸田露伴『五重塔』
第2位 6pt 中上健次『重力の都』
第4位 5pt 横光利一『上海』
第4位 5pt 田村隆一『腐敗性物質』
第4位 5pt 幸田文『台所のおと』
第4位 5pt 古井由吉『野川』
第4位 5pt 米原万里『オリガ・モリソヴナの反語法』
第4位 5pt 車谷長吉『塩壺の匙』
第4位 5pt 町田康『告白』


一体誰がこんな結果を予想したでしょうか。孤高のエース、ラッタウット・ラープチャルーンサップを擁するタイが2位に5ポイントの差をつけて独走しています。Twitterで話題沸騰、その効果がランキングにも表れた模様です。2位の「反逆の国アメリカ」はサリンジャー、トウェイン、ブコウスキーの3トップがバランス良く得点を挙げた結果で、3位の「ウリポを生んだフランス」は、売上冊数こそ他国に比べて多くないものの、ジャック・ルーボー以外は単行本なので3倍速で得点を挙げました。同着3位の「ロマンスの宝庫イングランド」では、放送禁止用語が飛び交うスウィンバーンの傑作『フロッシー』が大健闘。マキューアンの新刊『初夜』のアシストも忘れてはいけません。5位の「フーリガンだらけアルゼンチン」ではビオイ・カサーレスの『モレルの発明』が盟友ボルヘスをぶっちぎって絶好調。プイグやコルタサルといった職人も揃い、ボルヘス不在の中でも十分に闘えることを証明する結果となりました。

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さあ、波乱のスタートを切ったワールド文学カップ。
次週は一旦リセットして、新たなランキングをお届け致します。
ご期待下さい。

2010年04月08日

ブックレット掲載:第六回

ブックレット掲載も今回で第六回目。
とうとう「日本文学代表選抜会」に入ります!
ちなみにこれまで紹介してきたページは
蜷川がレイアウトデザインを行ったものですが、
このセクションは小木曽が担当しています。

冊子となったブックレットは4月1日より
紀伊國屋書店新宿本店2階中央催事場にて無料配布中!
予想を遙かに上回るスピードで減っているので、
お求めの方は是非、お早めにお越し下さい。


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■ピクウィック・クラブ田川のベストイレブン

FW:J・D・サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』
FW:ジョージ・オーウェル『1984年』
MF:レイモンド・チャンドラー『長いお別れ』
MF:ジョルジュ・ペレック『煙滅』
MF:ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』
MF:ブノワ・デュトゥールトゥル『幼女と煙草』
MF:ミカエル・ニエミ『世界の果てのビートルズ』
DF:アントニオ・タブッキ『インド夜想曲』
DF:フィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』
DF:ヤスミナ・カドラ『昼が夜に負うもの』
GK:ギュスターヴ・フロベール『ボヴァリー夫人』

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「司令塔チャンドラーがこれをどうまとめるかが鍵。でないと、各々がトリッキーなプレイをしてチームはバラバラ」(田川)

2010年04月04日

『白の闇』ジョゼ・サラマーゴ(NHK出版)

白の闇 →bookwebで購入

「盲人の世界と小説の親和性」

初めてノーベル文学賞を受賞したポルトガル人、それがジョゼ・サラマーゴである。今大会に参加した彼の作品『白の闇』は「ブラインドネス」のタイトルで映画化されたことから、知っている方も多いだろう。目の前が真っ白になる病気が伝染し、世界中の人たちが失明する、という話だ。パンデミックという言葉を用いればカミュの『ペスト』とも並べることができるが、この作品は是非ともストーリーよりもその描き方に注目して読んでもらいたいものである。

ページを開いて最初に目に飛び込んでくるのは、びっしりと敷き詰められた文字の海。改行もほとんどなく、ちょうどガルシア=マルケスの一部の小説を開いたときのような威圧感に圧倒されることだろう。しかし読み進めてみると、ページを繰るスピードが存外速いことに気付く。サラマーゴはメルヘンのように小説を書くのである。つまり心理描写や風景描写など、意味を捉えるのに時間を要する箇所は極力排除されていて、あるものはひたすら動作、動作、動作。さながらシャルル・ペローやグリム兄弟の童話を読んでいるかのような疾走感がある。改行が少ないのは、会話文が括弧で括られていないからだ。ある者が発言しある者がそれに反応する、その応酬が途切れることなく連続するため、ここにもただならぬ速度が生まれる。つまり、これは読みやすくするための工夫が随所に凝らされた作品で、文字の海はその結果として生まれたものなのだ。さらに、『白の闇』のストーリーならではの文体的特徴として、登場人物たちが名前を持たないことも挙げられる。誰もが視覚を失った世界では、名前など何の意味も持たない。医者、医者の妻、最初に失明した男、サングラスの娘といった言葉がそのまま固有名詞となる。『白の闇』はこれほどまでに技巧的な文体をもって練り上げられた作品なのであり、そしてこれらの文体的特徴とは絶対に映像化できないものなのである。

目が見えないということがどれほど我々の生活を破壊するものなのか、サラマーゴはそれを執拗に追い求めた。感染症としての失明は世界から忌避され、隔離された患者たちは使われなくなった精神病院に収容される。そして、誰も見ていないという確信は、ここにいる人びとを野性の世界へと連れ去ってしまうのだ。ここで起こる凄惨な出来事の数々はグロテスクとしか言いようがなく、サラマーゴの執拗さはそのまま寓話性とも読むことができる。なぜならそこには、一人だけ目の見えるものがいるのだ。読者はその存在に強く惹きつけられていくことだろう。

視覚を失った世界では音だけが我々の指標となる。会話文と地の文が溶け合うこの特異な文体も、それを計算した上で編み出されたものに違いない。そこまで辿り着くと、一つの疑問が浮かび上がることに気付くだろう。つまり、盲人にとって世界は小説のようなものなのではないか、ということである。視覚的に閉ざされた空間において、我々を導いてくれるものは取捨選択され発せられた言葉だけなのだ。小説に描かれなかったものは想像することしかできないのと同じなのである。思えばホメロスもボルヘスも目が見えなかったのではなかったか。盲人の世界と小説の親和性を、考えさせられる一冊である。


(紀伊國屋書店ピクウィック・クラブ 蜷川美峻)


■ワールド文学カップ参戦中!
  『白の闇』と合わせて読みたい本■

・ギルバート・アデア『閉じた本』創元推理文庫
眼球を失った作家が執筆のために助手を雇い入れるものの、助手を通じて語られる世界の姿がだんだん信じられなくなる、という話。ほとんど会話文だけで構成された奇妙な小説。
・H・G・ウェルズ「盲人国」『タイム・マシン』岩波文庫
失明する伝染病(!)の流行から何年も経ち、先祖代々目の見えない人びとが暮らす閉ざされた国に、目の見える男が迷い込むという話。視覚を使わないことに慣れきった人びとの新たなる常識を描いた傑作短編。


→『白の闇』をbookwebで購入

2010年04月02日

ブックレット掲載:第五回

さあ、いよいよワールド文学カップも開幕しました!
こちらのブログでは引き続き書評などを続けていくほか、
大会中の売上ランキングも発表していく予定です。

さて、今回は第五回目のブックレット掲載。
実物は4月1日より、
紀伊國屋書店新宿本店2階中央催事場にて
無料配布しています!
数量に限りがあるため、お求めの方はお早めに!

今回の掲載で「往年の名選手たち」は終了、
続く「読書案内」の全ページも収録できました。
残るは「日本文学代表選抜会」!
ご期待下さい。


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■ピクウィック・クラブ梅崎のベストイレブン

FW:檀一雄『火宅の人』
MF:イーユン・リー『千年の祈り』
MF:レーモン・クノー『文体練習』
MF:林芙美子『放浪記』
MF:谷川俊太郎『夜のミッキー・マウス』
MF:尾辻克彦『父が消えた』 
DF:山田詠美『蝶々の纏足・風葬の教室』
DF:武田百合子『日日雑記』
DF:小澤實『セレクション俳人 小澤實集』
DF:庄野潤三『プールサイド小景・静物』
GK:小島信夫『抱擁家族』

控えFW:太宰治『二十世紀旗手』
控えDF:ドストエフスキー『地下室の手記』

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「監督は埴谷雄高。常人には理解不能の作戦を繰り出す。コーチの高橋源一郎がそれを噛み砕いて通訳。途中からGKの小島信夫を含めた庄野潤三以外全員が攻め上がってしまい守備が手薄に。最終的に「試合なんかやめて酒のもうよ」と盛り上がり大団円。年間通算試合数は三回くらいの超マイペースチーム」(梅崎)

2010年04月01日

本日よりワールド文学カップ開催!

いよいよこの日がやってまいりました。
本日よりワールド文学カップがスタートします!

前日の3月31日は会場の設営作業。
会場の様子を作業風景とともに少しだけ公開いたします。
設営作業にはたくさんの方々が駆けつけて下さいました。
心より御礼申し上げます。


空っぽの棚。ここが数時間後、本で埋め尽くされます。

よーし、並べるぞー。

カラマーゾフも並べて、並べて……

うん、埋まってきました。

各国の棚には分かりやすいように国旗入りのポップがついています。

あ、忘れちゃいけない、
ピクウィック・クラブ公式Twitterもすぐに見られるように、
バーコードリーダーポスターも貼ってあります!
ボルヘスも後ろから見守り中。

数時間後……

!!

!!!(早川書房の山口さん、ポップ読み中!)

!!!!

ぎっしり!!!!!

世界各国の文学作品が皆様のお手に取られるのを今か今かと待ちわびております。
運命の出会いを期待しつつ、ぜひ会場へとお越し下さい。
文学の祭典、スタートです!