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2006年02月17日

『こんにちはマイコン』すがやみつる(小学館)

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 私がこの業界に足を踏み入れるきっかけになった本である。内容はよくあるハウツーものだが、80年代において小学生向けにマイコン(この言葉自体が泣かせる..)の書籍を出版しようと考えた小学館の蛮勇には頭が下がる。当時、コロコロコミック(だったか?)で人気を博していた「ゲームセンターあらし」がプログラミングを教えてくれる構成になっている。
 ゲームセンターあらしは、ジョイスティックを高速操作することによって自機をワープさせる(そんな操作に対応しているインタフェースがどこにあるのか)「炎のコマ」などの荒唐無稽な技を繰り出す少年だったので、いったいどんな講座が展開されるのか子供心にも不安だったが、意外に論理的かつ冷静な語り口で言語を教えてくれた。
 講座が対象としている「マイコン」はPC-6001なので、取り扱うのは当然N60-BASICである。最終的には、歳の数だけローソクを表示して吹き消すプログラムを作るまでになるので、けっこう本格的だ。私はこの本を読んでどうしてもPC-6001が欲しくなって、お小遣いを何年か分前借りして購入した。今にして思えば、人生の正道を踏み外した瞬間である。
 PC-6001はお世辞にも十分な処理能力があるコンピュータではなかったし、N60-BASICのインタフェースも恐ろしいほど貧弱である。グラフィックはちょっと凝ったものを作ると、食事を済ませてきてもまだ描画しているし、オブジェクト指向プログラミングなんてやろうと思ってもできない。あれに興味を感じて、のめり込む小学生は少数派かも知れない。今の子であれば、最初に触れるプログラミング言語はsqueakあたりか。
 確かに気の利いた石を載せたWindowsマシンで動かす第4世代言語は快適だろう。音も映像も多彩で、キーボードすら使う必要がない。初学者の学習環境は飛躍的に改善された。それは議論の余地がない。しかし、「綺麗な絵が出て、驚くような音声が再生され、マウスを使って遊び感覚で使えるから、プログラミングに興味を持って!」というメッセージによって喚起される子供の好奇心とは、本当の好奇心と言えるのだろうか?

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2006年02月03日

『アイルトン・セナ 最速のドライビングテクニック』アイルトン・セナ(三栄書房)

アイルトン・セナ 最速のドライビングテクニック →bookwebで購入

 アイルトン・セナがイモラに散ってから、もう10年以上が経つ。F1の代名詞であった不世出の天才も、若いF1ファンには過去のドライバーとして映るだけになってきた。
 私にとってセナは特別なドライバーだった。もちろん、感受性の豊かな時期にリアルタイムで観た英雄を特別視することは、誰でも行う誤謬である。私と同様、ニキ・ラウダを、ジル・ビルヌーヴを、ミハエル・シューマッハを特別視しているファンがいるだろう。
 しかし、それを差し引いてもセナは特別なドライバーだったと感じる。聖書を抱いてマシンの眠るガレージに引きこもり瞑想に耽る姿や、決勝で勝つことよりも寧ろ予選で己の最速を示すことの方が彼にとっては重要なのではと思わせる、命を削るようなホットラップは、他の追随を許さない至高の地位に彼を留まらせる。
 本書はそのアイルトン・セナが、存命中に唯一著した著書だと言われている。内容は意外に緻密で、どちらかというと才能だけで走っているように思えたセナの「レースはクレバーに行わなければならない」といった主張に触れることができ(当時、セナはクレバーと最も遠い位置にいると思われているドライバーだった。マンセルを除いて)興味深い。F1マシンの操縦技術を日常生活に活かす機会はないだろうが、亡きセナが最後に残したメッセージである。

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