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2005年12月04日

『九マイルは遠すぎる』ハリイ・ケメルマン(早川書房)

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「九マイルは遠すぎる、ましてや雨の中ともなれば」
 このフレーズからいったいどれだけの思索を導き出すことができるだろうか。
 ミステリに登場する探偵役はいくつかの類型に分類することができる。マッチョもいるし、変人もいる。数多の推理作家が個性的な主人公を登場させようと苦心するが、安楽椅子探偵というのも確立された探偵類型の1つである。
 安楽椅子探偵は、現場に赴かない、動かない、聞き込みもしない。もちろん、こうした原則を遵守して小説にするのは大変な労苦を伴うため、本人は動かなくても協力者がやたらとまめに聞き込みや現場百回をやってくれる安楽椅子探偵もいる。
 しかし、『九マイルは遠すぎる』の安楽椅子探偵っぷりは純度100%の本物である。協力者さえ安楽椅子探偵の前を動かず、伝聞だけで推理が進行していく。
 少なすぎる情報量から推論を積み重ねていくので、牽強付会があるのはやむを得ないが、蓋然性があるように読ませてしまう作者の力量は確かである。ケメルマンは特に本書が有名だが、気に入ったら『金曜日ラビは寝坊した』も読んでおきたい。
 たまにはこんな話を読み、師走の多忙でどれだけ自分の想像力が減衰しているか、確かめてみるのも一興だ。

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