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2005年08月29日

『複雑な世界、単純な法則』(草思社)

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 「知り合いの知り合いをたどっていくと、6ステップで世界中のどの人とも繋がる」という考え方をご存じだろうか。これを聞くと「そんなばかな」と思う人がほとんどである。6人分の知り合いをたどっていったら伊東美咲やチャン・ツィイーに会えるのであれば、原稿書きなどほうっておいて今すぐにでも出発したいところである。
 これは数字上のトリックであるし、実感としてそんなことはあり得ないと分かっている。1人に24人の友達がいると仮定すれば(最近は総人口が増えているので、25人の方が安全かも知れない)24の7乗はだいたい総人口になる。だから、「世界中のどの人とも6人を隔ててお友だち」というわけだが、これは「知り合いの知り合いが重複しない」ことが前提になっている。友達の友達はたいてい自分自身とも友達なので、現実は数式通りにはいかないのだ。  ここまでが一般的な常識。だが、「ほんとに6ステップで誰とでもつながるかも」という理論づくりに挑戦している研究者がいる。例えばインターネットでの通信は、ほとんどの場合「距離6」の範囲でおさまる。インターネットで「距離」という場合、それは送信者と受信者の間にいくつルータ(ネットとネットを結ぶ結節点)が挟まっているかを意味するが、世界中に無数のルータがあるにも関わらずほとんどの通信が「距離6」内で処理できるのはミステリである。本書はここから遡及して、金持ちがますます豊かになる謎まで解いてくれる。読書好きの夏の夜のお楽しみはミステリと相場が決まっているが、このミステリにも是非挑戦して欲しい。元ネタの原著論文を読むのは大変だが、本書は訳も含めて非常に分かりやすい良書である。

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