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2004年12月14日

『統計でウソをつく法 』ダレル・ハフ・高木秀玄 (講談社 )

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  ネットワークエンジニアは統計情報をよく扱う。ネットワークに限らず、エンジニアはコンピュータと対話しなければならないが、先方は人間の言葉はしゃべれないため、大量のログという形で情報を下達してくる。「ログを大事にしなきゃいけないよ」というのは、新任SEがたたき込まれるイロハだが、彼女のように大事にするにはちょっと多すぎるのがログである。そこで、必然的に生ログをサンプリングして傾向を把握するようになるのだが、このサンプリング方法に(恣意的にしろ、そうでないにしろ)バイアスがかかると、故障の兆候や不正アクセスの痕跡など、とにかく色々な情報がサンプルから零れてしまい大変なことになる。  別に統計の専門家になる必要はないのだが、「統計というのはきちんと取得しないと、とてもとてもアテにならない」という事実は脳裏に刻印しておく必要がある。そのためのワーストプラクティスが本書である(ベストプラクティスではない)。こういう統計はあてにならない、という事例をこれでもか!と見せてくれる。通読した後は統計どころか隣の住人まで穿った見方で接することができるだろう。アイロニーに富んだ読み物としても秀逸。O.ヘンリやサキと一緒に枕元に並べておくとよい。

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2004年12月13日

『ニューメリカルレシピ・イン・シー 日本語版—C言語による数値計算のレシピ 』(技術評論社)

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数値計算といえば、Fortranですよね!という研究者はまたまだ多い。しかし、Fortranという言語自体の生息例・目撃例が減少していることは周知の事実である。研究者であればまだよい。暇と研究費にものを言わせてどこからでもブツを取り寄せ、環境も構築するだろう。しかし、ちょっと計算したいだけなのに..というライトユーザにはこの方法はあまりおすすめできない。  ということで、手元にあるC開発環境を使ってなんとかしましょうという用途に最適なのが本書である(もちろん、著者はそんな読み方は想定していない)。有名な本であるし、内容的にもちょっと高度である。すべてを理解しようとすると、かなり手こずることになるが、掲載されているソースコードは使える。むしろ、全体を舐め尽くすように味わう人には英語版の「Numerical Recipes in C++」がより大きな感動を与えてくれるだろう。

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2004年12月12日

『デジタル社会の編成原理-国家・市場・NPO 』(NTT出版)

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  ネットワークはその上でサービスが稼働してはじめてユーザに利用してもらえる。通信が繋がっただけで欣喜雀躍できるのは、パソコンおたくとネットワーク屋だけである。それをベースにWebやメールのシステムが稼働し、そこにお客さんがつく。当たり前のことなのだが、これを理解できないネットワークエンジニアは未だ多数生存する。同じ社内でも情報システム部門とユーザ部門の仲が悪いのは、多くこうしたSEの生態に起因する。  「デジタル社会の編成原理」は、さらに話が大きくなってデジタル社会そのものを想定した議論を展開している書籍である。そも「デジタル社会」とは何なのか?そこでは誰がイニシアティブを取って、誰のためにネットワークを構築していくのか? これだけを聞くと、日常業務とは乖離した世界を垣間見する印象を受けるが、実は視点がマクロかミクロかの違いであって、議論の本質に変わりはない。本書を次世代ネットワーク社会構築への最新研究と捉えてもよいし、社内で使える事例集と捉えてもよい。読み方を決めるのは読者の権利であるし、それが読書の醍醐味というものだろう。

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2004年12月10日

『新Perlの国へようこそ』斎藤靖(サイエンス社)

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Perlといえば軽量スクリプト言語の雄である(最近はあまり軽量ではない)。ちょっとしたCGIを作るのに最適だし、多機能化された現在の実装であれば業務システムだって書けないことはない。しかし、Perlを本格的に学ぼうとすると意外に機会がないことに気付く。専門学校でPerlを扱っているところはあまり聞いたことがないし、情報処理試験の科目にだって入っていない。そこで、結局独学することになるのだが、オライリーの動物本を読んで挫折したorちょっと他人の読んでいない書物で攻めてみたい、という人におすすめなのが本書。  言語を学習するための書籍はほとんどがリファレンス的な書きようになってしまうものだが、本書は読み物としても先頭から読める(途中からつらくなる)し、その割にはコマンドの説明なども過不足ない。正規表現など、言語以外のところで必要になってくる知識もばっちりだ。ただし、すぐに使えるスクリプト集はあまり期待しない方がよい。この部分が目当てであれば他にも良書がある。

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2004年12月07日

『伽藍とバザール—オープンソース・ソフトLinuxマニフェスト 』レイモンド,エリック・スティーブン(光芒社 )

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インターネット上で何らかの業務を行う場合、いや個人の趣味の範囲内でインターネットを利用する場合でも、今や著作権関連のさまざまな知識で武装しておく必要がある。下手に知的財産権を侵害しようものなら、いつ何時訴えられるか分からない世の中である(他人を訴えるのを生業にしている人たちもいる)。例えば、画像ファイルの1種であるGIFに使用料が課されるという噂が流れたことがあるが、ネットユーザであればGIFファイルの1つや2つは必ず持っている。いきなり課金されてはたまったものではないが、現実にそうしたことは起こりうるのである。  しかし、「では権利関係の勉強を始めよう!」と思っても、各種の法令や規約が錯綜していて分かりにくいことこの上ない。そこでお薦めなのが本書である。元ネタになっているのはRaymondの論文「伽藍とバザール」。ネットに特有なオープンソース(いまさら恥ずかしくて人に聞けない用語の筆頭格)の中核思想に触れることができる。これ自体はネット上で有志の方々の和訳を手に入れることができるが、その他に有名な「魔法のおなべ」なども収録されていてお得だ。詳細法令の処理は弁護士に任せるとしても、その基本となる考え方はリテラシとして知っておこう。

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2004年12月06日

『欺術—史上最強のハッカーが明かす禁断の技法 』ミトニック,ケビン/サイモン,ウィリアム(ソフトバンクパブリッシング)

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比較的新しい書籍で、しかもかなり売れたので、ここで敢えて紹介する必要はないのかも知れない。しかし、「おれおれ詐欺」(最近の手口と実態に齟齬が生じてしまったので、警察庁は名称を変更するようだ)などが相変わらずはびこっているので、セキュリティ担当者必携の1冊として挙げておく。  クラッキングというと、どうしてもIT技術を駆使してシステムに侵入するイメージが強いが、実際には人の盲点や弱点に付け込んで情報や金銭を得る事例が多い。自分をクラッカの立場に据えてみれば分かるが、その方が圧倒的に楽である。「なんでそんな手口に引っかかるの?」と他人事に構えている人が一番あぶないので、本書を事例集として活用してみるとよい。ただし、これはあくまでベストプラクティスであり、実際に自分の身をどう守ろうか、という点は自分で考える必要がある。基本は「自分以外の全員を疑え」という発想なのだが、相当ぎすぎすした世の中になりそうである。

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2004年12月05日

『NPMによる行政革命—経営改革モデルの構築と実践 』大住 荘四郎(日本評論社)

NPMによる行政革命—経営改革モデルの構築と実践 →bookwebで購入

「せっかくITを導入したのに、いまひとつ効果のほどが分からない」と悩んでいる人はすごく多い。大抵の企業の社長さんはそう考えているし、官僚も同様だ。これから増税が始まると言われている時期に、延べ何兆円も突っ込んできた行政システム投資がどれだけ効果を生んでいるか分からないと言われたら納税意欲がなくなるが、それが現実である。 この原因は主に、手作業で行われている業務の手順をそっくりそのままIT化したことに求められると指摘されている。道具が変われば仕事のやり方も変わるはずなのだが、民間も行政もうまく対処できてないのである。本書はどういう方法論を用いたらこの問題を解決に導けるかについて、貴重な示唆を与えてくれる。タイトルにNPMとあるので、行政に特化した話題が扱われている印象を受けるが(実際そうなのだが)、民間企業で業務に従事されている方にも十分役に立つ内容である。組織を問わず、やるべきことの本質は変わらない。

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2004年12月04日

『ハッカー認定試験—3級合格標準問題 』日本セキュリティ学院【編】(データハウス ()

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最近、セキュリティ、セキュリティと喧しい。2005年4月には個人情報保護法の完全施行もある。今どきのセキュリティ担当者は過大なストレスを溜め込んで引きこもりになりそうな勢いである。いつも攻撃される立場では精神衛生によくないので、たまには攻撃側の気分を味わってみよう、そんなときに最適なのが本書である。 一問一答形式で様々なクラッキング手段を学ぶことができる。クラッキング手段を覚えてどうする!と考える向きもあるだろうが、視点を変えることで防御すべきポイントが把握できることもある。まあ、そこまで考えずに肩の力を抜いて読むのが本書の正しい使い方であろうが。 老婆心ながら書き添えておくと、この認定試験は実在しないし、2級用、1級用の書籍もない。さらに野暮を承知で言えば、ここで学んだことを実践してはいけない。仮に捕まった場合、当方では責任を負いかねるので、あしからず。

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2004年12月03日

『1冊でわかる暗号理論 』パイパー,フレッド/マーフィ,ショーン(岩波書店)

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暗号理論をきちんと学ぼうとすると、数学を避けて通ることはできない ~ と、ここまで聞いて暗号の勉強をやめにしてしまう人がほどんどである。結局暗号の概説書は、数式を書かないようにして(書くと売れないから)上っ面だけをなでて読者を分かった気にさせることに終始せざるを得ない。 その中で本書が秀逸なのは、数式をできるだけ(皆無とは言わない)使わないようにして、なんとか暗号理論を語り尽くしてやろう!という気迫に満ちているところである。これは私も講義でやったことがあるが、へとへとになる。数式一本で済むところを何時間も解説するのは拷問のようですらある。それをやってのけた本書には賛辞を送りたい。暗号の基本理論をおさえておくと、どういう局面が暗号にとってリスクがあるのか、といった判断ができるようになるので、IT時代を生きる上でのリテラシとして理解しておきたい。時間がなければ、9章の「日常生活での暗号」だけでも目を通しておくといいだろう。

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2004年12月02日

『データベースの設計 』ティオリー,トビー・J.(勁草書房)

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ITエンジニアには1つの経験則がある。すなわち、「データベースエンジニアはネットワークが嫌いで、ネットワークエンジニアはデータベースが大嫌いだ」というものである。かくいう筆者もデータベースとはできればお付き合いしたくないのであるが、そもそもエンタープライズシステムというものは、ネットワークとデータベースが適切に連携してはじめて満足に機能するものであり、エンジニアとしての自分を差別化したければ広範囲にわたる学識が必要不可欠になる。  豊かな教養が一朝一夕で身に付くわけもないが、データベースの基礎理論だけは本書で学んでしまおう。内容は決して簡単ではないが、訳書としては読みやすい文体で好感が持てる。翻訳の原田氏が執筆している「データベース構築の理論と実際」(コロナ社)もよい。さらにデータベースを深く知りたくなったら、RDBの生みの親Coddの論文をお薦めする。ネットワークの真髄を知るには、ネットワークの本だけを読んでいては駄目だということがよく分かる1冊。

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2004年12月01日

『待ち行列理論 』大石進一(コロナ社)

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ネットワークの性能を見積もるために、待ち行列は避けて通ることのできない理論体系である。しかし、ポアソン分布、アーランB式、呼損率などを前に討ち死にする人が後を絶たない。特にネットワークエンジニアの一大イベントである10月第3週の情報処理試験TE(NW)を前にした夏の陣では戦死者が多く、兵どもが夢の後の感がある。 待ち行列自体は決して難しい理論ではない。むしろ複雑な利用率などの見積もりをすっきりした数式に抽象化してくれる効果があり、使いこなせれば強力なツールとなるものである。習得に意外に手こずる人が多いのは待ち行列理論よりも、その前提にある確率・統計論が分かっていないことに原因が求められるケースが多い。本書では冒頭で確率に関する章が設けられており、高校以来すっかり失念していた読者でも無理なく待ち行列に入っていける効果がある。マクドナルドでレジに並んだときにケンドール表記がすぐに浮かぶまで読み込めば完璧である。

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