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2008年08月19日

『霧のむこうのふしぎな町』柏葉幸子(講談社)

霧のむこうのふしぎな町 →bookwebで購入

「心がやわらかいうちに。」

夏休みも佳境にはいり、子どもたちの宿題がちょっぴり気にかかるようになった今日この頃。本屋さんの児童書コーナーにも、あきらかに読書感想文狙いの親子が出没している。
(あぁ、あれこれ推薦したい)

新たな目で子どもと本を探していると、眼に留まったのが本書。わぁ、なつかしい、と思って手に取ると、挿絵が違う。
挿絵が竹川功三郎さんから杉田比呂美さんに変わっていた。
そうか、今の子どもたちはこの絵のイメージで記憶されていくんだな・・・とちょっと不思議な感覚ももちつつ、私の大推薦で子どもが購入。
私と息子ののやりとりを、横でちろちろ気にして、耳がダンボになっているお母さんあり。
(あぁ、あれこれ推薦したい)

もっともっと、本選びが「苦痛」でなくなるといいのにな。

子どもが大きくなってくると、親とは別の世界をつくっていく。
その一歩を大きくささえてくれるような存在の一冊。

私が繰り返し読んだそのわけは、きっと、
親や地域という自分をわかってくれる狭い世界から”霧のむこう”へ一人で踏み出していく、
その勇気をくれた本だからだと気がついた。

こころがやわらかい、今のうちに、出会って欲しい。
自分が変化することを恐れないこと、変化を認められること。
取り返しがつかないわけではないだろうけれど、
やはり大人になってから出会っても遅い本ってあるな。

子どもたちの小さな冒険を支えてくれる、こんな本との出会いが
もっともっと日本中でおこりますように。



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2008年08月15日

『学びをつむぐ<協働>が育む教室の絆』金子奨(大月書店)

学びをつむぐ<協働>が育む教室の絆 →bookwebで購入

「学びあう場のデザイン」

けっして、高校の授業に興味があったわけではない。
<協働>の文字にひかれた。

生徒たちのみずみずしい感性が金子さんによって切り取られていき、
その場のグループダイナミックスを感じつつ読み進める。

学校という限られた空間の中で、
たとえば、座席を変えるだけで変化が起きる。
おもしろいと思ってぐっと入っていく生徒がいる。
乗り切れなかった生徒の変化をじっと見つめる。

なにより、先が読めない展開だ。
それを受け入れていく度量が教師にもとめられ、
「アイデンティティの危機」を感じながら
「協働学習」に挑戦しているという。

高校時代の私を思い浮かべてみる。
けだるい午後の教室は、
「静かに!」という教師の大声と
くすくす、こそこそ、おしゃべりとのせめぎあい。

教室の中のちいさなつぶやきや隣の生徒とのささやかなやりとりを
根気強く見守って、ひろいあげてこその<協働学習>なのだという。
おしゃべりの質が違うのだ。
一方通行の、耳から聞いて、黒板をノートに写すだけの一時間とは
全く異質の、時間と空間のデザインだ。

授業はLIVE、そう表現した先生に会ったことがあるが、
きっと、金子さんの授業はLIVEなんだと思う。

金子先生は、世界史の授業をする。
しかし、そこには、「世界史を学ぶ」以上の学びがある。
この授業をうけたことによって、
自分の中に変化を感じることができた生徒は
それが「世界史の知識を身につけた」だけではないことを
きっと知っている。

「学びあう」場のデザインとその手法は、
もう「学校」には通うことのなくなった
私たち大人にも必要だと感じた。

隣人と、こんな風に感じたこと、考えたことを
語り合う時間を、大人はとっくに失くしている。

学びあい、育ちあう場を、
地域社会の中にも、取り戻せるだろうか。



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