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2008年05月02日

『おうちで楽しむにほんの行事』広田千悦子(技術評論社)

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「暮らしの中のにほん」

私は日本で生まれ、日本で育っている。
でも、どれだけ日本のことを理解して紹介できるかな、と思ったとき なにも難しく考えることはひとつもなく、何気ない暮らしのなかにたくさんのにほんの文化が息づいている、とあるとき悟ったのだ。むしろそれを伝えていく使命さえ感じたのだ。

丁寧なおだやかな暮らしを端折らずやろう、と思った瞬間、その「にほん」が顔を出す。まだまだ、自分の中に残っている、祖父母、親世代が与えてくれたものを感じるのだ。
それは、ある見方からはもしかすると「無駄」だったり「ただの迷信」などど一笑に付されることもあるかもしれないが、毎日の暮らしを紡いでいるものたちにしてみれば、そういったちょっとした「ハレ」があることが生活のリズムをつくりだしてきたのだ。行事とはそういうものだったのだ。

手に取ったそのてざわりから、丁寧でおだやかな「気」がながれてきて、急に息が楽になったような気分になる。本をひらけば、あたたかなイラストとコメントが実にほっこりと、はりつめた気持ちをゆるめてくれる。

もうすぐこどもの日。
こどもの日ってこいのぼりと菖蒲湯。かぶとださなくちゃ。
かしわもちはみそあんがいいな。

・・・そんな、「グッズ」や「イベント」でつなぐような一日ではなく
ゆったりとした気持ちでこどもといっしょに楽しめますように。


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2008年05月01日

『ちいさいおうち』バージニア・リー・バートン文・絵 石井桃子訳(岩波書店)

ちいさいおうち →bookwebで購入

「石井桃子さんありがとうございました」

4月2日に、とうとう石井桃子さんが亡くなられた。昨年の春には100歳の記念のブックフェアなどが開催され、楽しんだものだった。
悲しみにくれていてもあっというまに5月になってしまう。時は残酷。 しかし、絵本には悠久のときがながれていて、いつだって桃子さんが残されてきたお仕事には出会うことができるのだ。

ちいさいおうち。
桃子さんの膨大なお仕事のなかでも、
印象的な絵本。
小さいころから慣れ親しんだものもたくさんあるが、
どうしてだか、この本にはあまりなじめなかった。
自分の育った環境とシンクロしていたからかも、と最近思い至った。
甲州街道の高速道路の騒音はすごく、気のいい京王線も、すました銀色のアルミの車両にかわり、高架で走り去るようになって、私の育ったまちの変身ぶりは、この絵本のなかのまちのようで、心が痛かったのかもしれない。
そんなわけで、ずいぶん成長してからあらためて出会った絵本であった。

石井さんがされてきたことは、まさに文化の構築。そう思っている。
この本が700円もしないで手に入る日本は本当にすばらしい。

「石井桃子訳」
という文字をとにかく画像で知っていた幼いころ。
意識して桃子さんのお仕事をたどるようにして読んだ青年期。
それぞれに様々な思い出が付随して、甘酸っぱい記憶ではあるが、
「私」を構成するひとつの重大な要素として「石井桃子」という人の仕事があったのだと、あらためて確認する一ヶ月であった。

桃子さん、たくさんの愛をありがとうございました。
ご冥福をお祈りいたします。


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