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2005年10月04日

『スローなユビキタスライフ』関根 千佳(地湧社)

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「本当のユビキタスコンピューティング」

「ユビキタスコンピューティング」という言葉が流行している。最先端技術の開発で有名なXerox PARCの研究者が将来の計算機環境を予言した言葉だとか、いつでもどこでも計算機が使えるようになるとか、計算機を身につけて生活するのだとか、大袈裟な宣伝が行なわれている割にはユビキタスコンピューティングの便利さが実感できる話を聞くことは少ないので、ユビキタスコンピューティング環境をエンジョイできるのはパソコンやガジェットを愛するオタクだけだろうとか、実際にはほとんど役にたたないだろうとか、否定的な解釈する人が増えているんじゃないかと心配である。
しかし! 本書を読むとこれが全くの誤解だということがよくわかる。本書には数年後のフツーの家庭のフツーの人々が登場し、仕事や娯楽や恋愛やその他フツーの出来事がいろいろ起こるのだが、彼等がたまたま訪れた温泉町の若干フツーではない研究者が開発したユビキタスコンピューティング環境の力によって誰もが幸せになっていく様子が描かれている。計算機など全く縁のなかった老夫婦はこの環境におけるコミュニケーション支援のおかげで新しい生き甲斐を発見するし、仕事第一の夫婦はより豊かな人生のあり方に気付くし、ユビキタスコンピューティング環境のおかげであらゆる人々が生き生きした生活を取り戻していく。
「ユビキタスコンピューティング」とは、計算機オタクの趣味のためのものではない。計算機やネットワークの力を借りることにより、頭や体の能力の違いに関係なく、真に誰もが幸福に暮らすことができるようになるための技術である。人間を幸せにするためのコンピュータ技術とはどういうものなのかを本書でぜひ実感してもらいたい。

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