2008年11月30日

『アップルを創った怪物―もうひとりの創業者、ウォズニアック自伝』スティーブ・ウォズニアック(ダイヤモンド社)

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「Wozに訊け!」

Apple創業者のひとりSteve Wozniak(Woz)の自伝である。
Gina SmithというライターがWozに55回もインタビューして本にしたらしい。 もうひとりの創業者であるSteve Jobsは超有名であるが、 WozはAppleを成功に導いたApple IIの設計者であるスーパーエンジニアであるということはエンジニア以外にはあまり知られていないようである。 Wozの凄さを知るために、ぜひ多くの人に読んで欲しいと思う。

Wozは父親の影響をうけてエンジニアリング魂に目覚め、 小学生のころからアマチュア無線をやったり発明工作賞みたいなのを獲りまくったりしていたのだが、 中学のころからは論理回路や計算機に目覚めてその方向のハッキング力を炸裂させてたらしい。 Wozはとにかく論理回路をエレガントに小さく作ることに執念を燃やす人物で、 回路を実際に作ってみるだけでなく、実在する計算機を独自に紙の上でエレガントに再設計する練習をしたりしていたらしい。 そういう素養を見込まれてヒューレットパッカード(HP)で電卓などを設計する仕事をしていたのだが、 そのころ新たに出現したマイクロプロセッサに出会い、 キーボードつきでBASICが使えてカラー表示できるパソコンを作りあげたのだそうである。

WozがApple IIを作っていたころ、私は高校のクラブでチップからマイコンを組み立てたりしていたので、 彼の当時の行動や技術について非常によくわかる。 当時はマイコンが出始めた頃で、電子回路マニアはこぞってマイコンに手を出したものである。 私のクラブではメンバ数人で手分けしてBASICの動くマイコンをIntelの8008というチップで作りあげたものだが、 同じころWozははるかにエレガントなApple IIを独力で作ったというから度外れている。 HPから帰社後に回路設計からBASIC言語の実装まで全部ひとりでやったということが驚きであるし、 Apple IIの回路のエレガントさやカラー生成回路の無茶さは感動的であった。

一方、Apple IIのケースについては全く言及が無い。 Apple IIが売れたのはケースが格好良かったことが大きな理由だと思うのだが、 Wozにとっては回路やソフトウェアがコンピュータのすべてであり、 ケースの形などはどうでも良いことだったのであろう。 このあたりが非常にWozらしくて興味深い。 Wozにとってはケースなどまったくオマケにすぎないのだろう。

本書はAppleの歴史全体を知るためには有用な本ではない。 Apple IIを設計するに至るまでの話が全体の2/3ぐらいを占めており、 Jobsとどうやって知り合ったかとかどういう話をしたかなどについてはほとんど出てこないし、 Apple IIの成功の後の話もほとんど書かれていない。 「Macintosh」という単語がそもそもほとんど出てこないし、Lisaという単語は最後に一度だけしか出てこなかった。 Macintoshという単語が出たのは、Macintoshの開発に金が回された結果Apple IIの部隊が冷遇されたという文脈の中でだけであった。 また、 離婚に至るまでの前妻との喧嘩については書いてあるのにJobsとの喧嘩についてはほとんど書かれていないのが少々気持ち悪い。 Apple IIのスロット数の話で喧嘩したのが最初の喧嘩だったとか書いてあるにもかかわらず、その後の喧嘩については一言も書いていない。 Jobsに序文を書いてもらうつもりで悪口を書かなかったのかもしれないが、結局Jobsは序文を書くのを断わったそうである。

最近の話については書かれていないものの、 Appleの初期のストーリーは実にワクワクする。 Wozに見習って、 まだまだ新しいITベンチャー会社を作りたいと思う人が増えてもらいたいと思う。

ちなみに様々なApple本やドラマには嘘が多いということである。 有名人となると色々な噂が先行して大変らしい。

  • JobsとWozは同時に高校に行っていない。歳がかなり違う。
  • Wozはコロラド大をドロップアウトしていない。
  • AppleIもAppleIIもすべてWozが設計した。共同作業ではない。
  • WozはAppleをやめてはいない。社員バッジをまだ持ってるし最低限の給料を貰っている。
  • 何か不満でAppleをやめたわけではなく、Cloud9という会社を作りたくて会社を離れたのである。

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