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2011年06月18日

『仕事がない! 求職中36人の叫び』増田明利(平凡社)

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「失業したときこそ、失業ノンフィクションを読もう!」

 先日、失業した。45歳の中年。妻1人、子ども2人(2歳児とゼロ歳児)。こういうときこそ、失業ノンフィクションを読むときだ。
 本書のタイトルは「仕事がない!」。ストレートである。著者はホームレスや失業問題をテーマにしているルポライター。不動産管理会社に勤務しながら副業としてライターをしている。生活を安定させている書き手である。

 20代、30代、40代、50代の失業者36人の聞き書き。1人あたり4頁で構成されている。文体は事務的である。ストーリーテリングの手法はない。インタビューイは、普通の人々である。高校中退、高卒、短大卒、四年制大学卒。エリートはひとりもいない。会社から見れば、置き換え可能な労働力である。だからリストラにあったり、雇い止めにあう。その人達がそれぞれ体験している現在進行形の失業ノンフィクションである。

 著者が書いているように、本書には「笑える話、元気になる話はひとつとしてない」。まるでハローワークの窓口で、失業者が苦悶の表情で語っているかのような語りである。

 私は45歳なので、40代と50代の失業者の体験を熟読した。

 まずは40代の人から。

 石浜さん(仮名)。妻と二男。44歳。高校卒業後、化学薬品メーカー20年間→食品雑貨スーパー4年6ヶ月。失職の原因は閉店にともなう整理解雇。現在の収入、アルバイトをかけもちして月収15万円。就職活動状況、正社員での採用は絶望的。
 中年フリーターとしてかつかつの生活している。「自分でも日に日に意欲が失われていくのがわかる。お先真っ暗だ」。と、悲観的な文章でまとめられている。
 こんなにまじめに勤務した人が絶望的状況にあるのだ。言葉がでてこない。

 次は、50代の人。

 坂井さん(仮名)。51歳。妻、一男一女。前職は中堅ゼネコン管理職。四年制大学卒業。大学卒業後建設会社に入社し28年勤続。早期退職制度に応募して依願退職。再就職の見込みなし。失業期間は2年を超えた。「まさかこんなことになるなんて思っていなかった」と、やはり絶望的な筆致でまとめられている。ひとつの会社をまっとうした真面目なサラリーマンの末路がこれである。なんということだ。

 求人情報誌を見ると、正社員の募集はほとんどない。あるのは短期のアルバイト、それも肉体労働系である。または、高いノルマを課せられる営業職。ハローワークも同様である。いい仕事があったとしても35歳までという年齢制限や、有資格者に限るものとなる。

 日本人自身が、中高年を労働市場から構造的に排除している。これは統計データですでに既知の事柄である。この労働市場のいびつさが、ひとりひとりの多様な失業と絶望をうみだしている。本書を読むと、日本では自殺者数が減ることは当面ないだろう、と思わざるを得ない。

 本書は2011年2月に刊行されている。したがって、東日本大震災と福島原発の影響については言及されていない。それでも十分に絶望的だ。

 311後はもっと「仕事がない!」人が増える。今夏から年末にかけて、よりいっそう失業者の状況は悪化していく。

 他人事ではない。



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