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2010年03月31日

『ツイッターノミクス』タラ・ハント著 村井章子訳(文藝春秋)

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「鼻くその噂、タイムライン、モントリオール」

 昨年からのツイッターブーム。多くのツイッター関連書籍が出版されていく。日本の出版界の宿痾である、柳の下にドジョウが100匹いる、という読者不在のマーケティングのもとに、内容が伴わない書籍が出ているんだろう。健全な愛書家のひとりとして、二度とツイッター本を手に取ることとはないだろう。世界にはもっとしるべきことがある、と考えていた。
 twitterのタイムラインを見ていると、文藝春秋から『ツイッターノミクス』が出版されるという、つぶやきが流れてきた。書籍を売るための販促アカウント http://twitter.com/twnomics を取っての情報発信。ふうん。文春もか。私は個人の名前がついていない情報は信用しない。担当者の名前は「下山進」。ふーむ。パソコン前で腕を組んでうなった。文藝春秋、本気だな。下山進氏と言えば、文藝春秋社のなかでは米国のジャーナリズムに詳しいノンフィクション編集の鬼。集中して仕事をしすぎるために、無精髭を放置、打合せで鼻くそをほじくることもある、という伝説を聞いたことがある。  著者のタラ・ハントのことは知らなかったが、下山本として一気に興味を持った。

 本書の構成としてはシンプルである。ひとりのカナダ人女性が、twitterを始めとしたさまざまなソーシャル・メディアサービスを使いこなして、自分の表現活動のファン・支持者(本書では「ウッフィー」と称されている)を増やして、ビジネスチャンスを拡大していった。ソーシャルメディア時代の、twitterシンデレラストーリーである。

 このサイトの読者はすでに承知しているように、既存の紙媒体の影響力は低下するばかり。ソーシャルメディアでの情報のなかにこそ、リアルな情報のおもしろさがあり、ビジネスの勝機がある。しかし、そのソーシャルメディアのなかみは玉石混淆のカオス。これまでのマーケティングの手法は通じない。人々は広告情報を見抜き、嫌悪する。カネで雇われた広告野郎はソーシャルメディア村では、さげすみの対象となる。しかも、いまのtwitterユーザーには、目利きの人間がひしめく。偽物はつぶやきでぐさぐさと刺される、またはフォローがつかず無視される。

 ウッフィーとは何か。タラハントは「ソーシャルネットワークで結ばれた人同士の間に時間をかけて育まれる信頼。あるいは尊敬。あるいは評価」と書いている。ネットワーク上での表現活動によって得られる評価である。

 ウッフィーを増加させることで、人生や仕事で成功するチャンスが増えていくことを具体的な事例で紹介。そして、twitterをはじめとするソーシャルメディアの海を泳ぎ、目的の対岸にたどり着く方法を指南してくれる。

 その方法論のすべてがソーシャルメディアというお金のかからないツールによって出来上がっていた。不況になったいま、このノウハウをほしがる人は多いだろう。時節にかなった出版だ。

 私は平日は、地方企業の会社員として少ない予算でライフスタイルカーというコンセプトを発信することを職務にしている。あるときはユニバーサルデザイン関係の会合に出る。別の日は浜松市の福祉予算の勉強会に参加して情報収集。あるときは浜松で活躍する社会起業家たちとシンポジウムに参加。雑誌や新聞に広告出稿するという従来の広告宣伝費はほとんど使わない。イレギュラーなPRをすることで認知度を高めようとしていた。浜松にはソーシャルメディアの達人はほとんどいない。タラハントのノウハウのほとんどは、地方の中小企業の広報担当者にとって有益なものばかりだった。

 さらに、副業でやっているNPO活動にも応用できるノウハウが満載だ。驚いたのは、本書のなかでインタープラストというNPOが紹介されていたことだ。このNPOは口唇口蓋裂の子供を無償で手術する活動をしている。日本ではたいへんマイナーな活動なのだが、twitterでその活動を知ってフォローしていた。その直後に、本書でインタープラストの広報戦略の一端を知ることができたのだ。

 へ? ひょっとして俺のやっていることって最先端かも? そんなプライドをくすぐる仕掛けが張り巡らされているのだ。孤独な地方会社員としてはノックアウト!!

 100年に1度の大不況によって、資本主義経済が崩壊するかのような言説が溢れているが、そんななか、インターネットのなかでは、新しい人々のつながり=「絆」が生まれようとしている。

 タラハントはそれをウッフィーと呼ぶが、日本人としての私の語感では「絆」のほうがしっくりくる。

 インターネットの登場によって、人間関係とコミュニケーションの作法が変容していく中、タラハントが打ち出した「ウッフィー」という信頼通貨という考え方は面白い。しばらく有効な概念だと思う。

 本書の内容とは別に、印象に残ったのはタラハントの今の生活である。米国のカリフォルニア州で会社を3つ設立し、いまはカナダのモントリオール在住であること。キャリアを積むには最高の環境であろう西海岸から、スローなライフスタイルが可能な町へ。地方都市在住者からみて、タラハントの生き方は、まさにウッフィー満点である。
 


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2010年03月30日

『俺たち訴えられました!』烏賀陽弘道、西岡研介(河出書房新社)

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「名誉毀損で勝ち抜いたジャーナリストの警鐘」

 名誉訴訟で訴えられた二人のジャーナリストが、それそれの訴訟体験を赤裸々に語る対談本である。正確にいえば「対談」ではない。片方のジャーナリストが、もう一方にインタビューをするという形式をとっている。ゆえに、対談にありがちな予定調和がない。奇妙な味わいの、ふたりのジャーナリストの「対話」が一冊にまとまっている。
 ひとりのジャーナリストは、烏賀陽弘道。朝日新聞記者を経て、フリージャーナリストに。月刊誌「サイゾー」に、音楽ランキング会社オリコンについてコメントをしたところ、オリコン社長から名誉毀損だとして総額5000万円の損害賠償請求訴訟を起こされた。この訴訟の特徴は、サイゾー編集部、その版元であるインフォバーン社ではなく、雑誌記事のコメントをしただけの烏賀陽だけをねらい打ちにしたことにある。

 もうひとりのジャーナリストは、西岡研介。神戸新聞記者を経て、スキャンダル雑誌『噂の真相』の突撃記者となり、その後フリーに。週刊文春や週刊現代などの週刊誌を舞台に、権力者のスキャンダルをあばく取材をしている。西岡は、日本最大の公共交通機関、JR東日本の労働組合を事実上牛耳っている「革マル」(日本革命的共産主義者同盟 革命的マルクス主義派)について、週刊現代で報じた。その記事が、名誉毀損であるとして、全国で50件の名誉毀損訴訟を起こされた。

 私はこの二人の名誉毀損訴訟の動きについては、硬派ニュースサイトMyNewsJapanでインタビューを掲載したことがある。

オリコンうがや訴訟3 いよいよ反訴! アルバイトでもできる質問しかしないマスコミ記者たち

オリコンうがや訴訟7 JR「革マル派」告発の西岡研介氏、48件の“訴訟テロ”に反訴へ


 連載中は、現在進行中だった裁判も、いくらか時も経過し、おおかたの結果が出てきた。烏賀陽氏は、オリコンに対して事実上の全面勝訴。西岡氏も革マルからの訴訟のうち47件が片付き(原告の請求棄却)、のこり3件を残すだけになった。

 つまりふたりとも名誉毀損訴訟について、公に語るべき時がやってきた、というわけである。

 二人は訴訟の当事者である。そのため、すべての裁判資料が手元にあるため、対話の内容は詳細である。名誉毀損やジャーナリズムに興味のある人しかすべてを理解することはできないかもしれない、という難点はある。それでも、本書をひろく読んで欲しいと思うのは、大企業が、市民に対して名誉毀損訴訟を起こして、その言論を封じようという動きがある。このことに二人は警鐘を鳴らしているからである。

 このような嫌がらせ訴訟のことをSLAPP(スラップ)という。

 烏賀陽氏のホームページではこう紹介されている。

“Strategic Lawsuit Against Public Participation”の略語。

「公の場で発言したり、訴訟を起こしたり、あるいは政府・自治体の対応を求めて行動を起こした権力を持たない人物や団体に対して、企業や政府など、力のある側が恫喝、発言封じ、場合によってはいじめることだけを目的に起こす、報復的な訴訟」のこと。

 烏賀陽氏、西岡氏のふたりは、まさにSLAPPのターゲットにされた。二人とも、ジャーナリストだから、SLAPPに対して対抗することができたが、一般市民だったらひとたまりもない。実際に、新銀行東京の不正融資について内部告発した元行員は、銀行から名誉毀損で訴えられた。彼のコメントを報じたテレビ局、週刊誌は訴訟の対象とならなかったのである。
http://www.mynewsjapan.com/reports/1026

 しかも、このような重大な社会性のあるSLAPPについて、日本のマスメディアは報道しない。烏賀陽氏も西岡氏も、それぞれのやり方で、身を守るしかなかった。二人に共通しているのは、いまのメディア業界はライターを守らない、育てない、滅びゆく恐竜だ、という認識である。
 
 西岡氏は、革マルを取材すると決めたときから、訴訟対策、生活防衛(襲撃から家族を守るための引っ越し)などを周到に準備している。それでも、名誉毀損訴訟の対応はしんどい、という。裁判官の考える真実と、ジャーナリストの考える真実とは違うのだ。そのことが裁判官には分かっていない。また、メディアに対して、いい加減なことを書く、というバイアスもある。
 烏賀陽氏は、雑誌編集部のコメント取材を受けただけという、いわば受け身。突然の名誉毀損訴訟で判断ミスをして一審で敗訴。二審で逆転するまでの顛末を振り返る。
 ジャーナリストと大企業の戦いのドラマとしては、西岡氏の言葉のほうが面白いし迫力がある。なにしろ、もし革マルが妻子を傷つけたら、ペンを捨ててテロリストとなる、物理的に復讐する、と明確に宣言しているのだ。JR東日本労組問題は、ヤクザ取材を得意としてきた西岡にしてもたいへんな覚悟を要するテーマなのだ。
 烏賀陽氏の体験のほうが、一般人にはありうる。オリコンについてどう思いますか、と編集部からの電話取材を受ける。そのコメントが活字になり編集部からファクスで送られてくる。自分の発言した内容と違うので、訂正を申し入れても、印刷の関係でそれが聞き入れられないまま雑誌になる。そして訴えられる。版元の社長は、訴訟費用の負担を拒否。すべての訴訟費用を自腹でまかなうことになり、生活が危機になる。
 ブログやtwitterで個人的な意見を簡単に表明できる時代になった。それを資金が豊富な企業が名誉毀損で訴えてくることは十分にありうる。このふたりはジャーナリストである。いかにして訴訟に勝つか、という情報収集力があるため、訴訟を跳ね返すことができた。一般の人ならば、屈服するしかないだろう。
 
 この二人の経験した名誉毀損の経験が、一般の人にとって必要となる時代が来ている


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2010年03月09日

『2020年の日本人』松谷明彦(日本経済新聞社)

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「猪突猛進の戦争経済体制がやっと終わる。」

 人口減少減少時代をどう生きるか。
 日本は、世界最高速度で、高齢化が進行しており、なおかつ少子化も進んでいる。この不況で若者の就職内定率は下落しているので、経済的な不安を理由に結婚して子供をつくることを先送りする人も増えそうだ。自殺は年間3万人をキープ。自殺大国としての国際的な知名度も定着してしまった。

 僕が東京に住んでいたとき、人口減少はリアルに感じなかった。子供をみかけない。独身の男女が多い、という東京の特殊性はあるものの、日本全体を俯瞰して考えることはなかったと思う。
 浜松に移住して、人口減少がひたひたと実感されるようになった。静岡県で若者が多いのは静岡市と浜松市くらい。仕事が多い地域である。それ以外の地域は軒並み高齢化が進行している。当然、子供もすくない。去年の夏、伊豆半島に行ったときは、かなりの過疎が進行していることがわかった。浜松市の北部の天竜区も過疎が進行している。
 駅前商店街はどうか。浜松駅前の商店街は、人が歩いていない。がらーんとしている。シャッターを閉めて営業をやめた店舗が多い。
 駅前の賑わいは消え、中山間地は過疎で集落が消えつつある。人々は自動車に乗って、イオン、ファミリーレストラン、ガソリンスタンドというわかりきった移動パターンの中で暮らしている。
 日曜日になると、酔っぱらい運転のような自動車をみかける。車内をみると、高齢者のドライバーが、よろよろとハンドルを握っている。老眼なのだろう。条件反射も衰えているのだろう。しかし、浜松には公共交通機関は発達していない。浜松の人間はめったなことでは歩かない! 文句があるか。ほかに移動の方法はないのだ! 
 これでも浜松は地方都市の中ではにぎわっている方だ。
 他の地域はどうなっているのだろう。そしてこれから10年、20年後、日本の超高齢社会はどうなっているのだろう。人類の歴史のなかで、空前のスケールで展開される超高齢、超少子社会。しかも、日本は島国であり、一貫して移民を拒否してきた。ほかの先進国では移民によって、人口増加と経済発展させるという選をしてきた。日本は頑固なほどにその選択はしなかった。

 事実上の、鎖国状態のなかで、高齢者が激増し、労働者人口が減少していく。それが誰の目にも明らかになるのが、2020年前後である、と本書は説く。
 
 本書を読みながらtwiterでつぶやいたことを時系列で並べみた。一部加筆してわかりやすくした。


# 「2020年の日本人」松谷明彦著。高齢化と人口減少、都市と地方の格差、総合的に分析されていておもしろい。日本の働く高齢者の多さは異常なほどという国際比較など勉強になる。第二次世界大戦の戦争経済でできた年功序列の体制がいまも残っている、ということも分かった。 2:01 PM Mar 6th via HootSuite

 一括採用、年功序列とは、戦争中という特殊な政治体制でできた制度だった。僕はこの事実をまったく知らなかった。いまの若者もほとんど知らないのではないか。


# これから10年で地方自治体の財政破綻が顕在化していくので、将来性のある自治体への転居・移動が増加する。独身世帯は都市集中。家族世帯は中規模都市。過疎地域については、農林業による地産地消直販の高度化で対応か。トリックスターの役回りを演じさせられるのは移民だろう。 3:08 PM Mar 6th via HootSuite

 人口が減少すれば、経済が縮小し、税収もダウンする。自治体破産から逃げ出す国内移住者が出てくる。


# 2020年を境に、だいたいの産業転換、世代交代が終わると理解。そのころには、東京エリアは独居高齢者過密都市となり大増税となる。若い人は東海道などの交通便利な地方都市への移住をはじめると予測。それまでに東海道のネットワークをつくっておくとベストか。 2:41 AM Mar 7th via HootSuite

#

東京、名古屋、大阪という高齢者集中都市における社会保障費の急激な増大。これにたいする税負担。住環境の悪化から、子供をもつ世帯がどういう形であれ、脱 3大都市をしていく流れができることは確実。となると、新幹線がとまる東海道がその避難先になるのかな。ずっと考えるべきテーマ。 12:40 PM Mar 7th via HootSuite

 あまりにも悲惨なシナリオが続くので、少しでも希望があるとしたら、東海道ではないかと考えた。本書では、これからは地域の中小企業の「ものづくり」が地域経済の核になる、という見通しを立てる。ハイテク産業では優秀な若者しか働けない。多様な雇用はつくれない。サービス業は他地域に移動できない。ヒト・モノ・カネが動くのはモノづくりである、という指摘。グローバル企業はどうか。高収益をもとめて製造拠点を変えていくから、当てにはならない。


# 日本の近未来ひじょうに危機的ということになる。社会起業が拡大しないとまずい。2020年頃にはアジアも高齢・成熟社会になるので日本の下請けとはならない。日本は高齢者大国として孤立するシナリオが考えられる。 5:01 AM Mar 7th via HootSuite

 2020年頃には、日本以外のアジア諸国も高齢化問題に直面。その頃には、日本を頼りにしなくてもよいレベルの成熟産業が自国で育っている。日本が貿易大国として成功するチャンスは相対的に減少していく。


 都心居住組と、地方中核都市居住組。前者だと、高齢者の介護施設をつくりたくてもつくれない。都市の過密性ゆえに。よって、要介護老人を抱える家族は脱都心を転居を考えるようになる。地方都市ならば、自動車で30分圏内に施設はみつかる。問題は介護労働者の確保。
12:44 PM Mar 7th via HootSuite

 首都圏の高齢者人口の激増。これが何度も本書で言及されています。いま首都圏は独身の若者、子供のいないカップルにとって、好きな仕事が選べる快適な場所ではありますが、これから10年で激増する高齢者負担をすることになり増税しかない、というシナリオ。


 

日本は人口が多い大国のひとつ。インド、中国はスーパー人口大国だが、日本は十分に人口大国。自国内での介護労働者の確保ができないのは、純粋に内政問題。介護労働者の確保は先進国にとって共通の課題。外国人の介護労働者をめぐる争奪戦がはじまっている。食料のような戦略的な資源になっている。
12:46 PM Mar 7th via HootSuite

 外国人の介護労働者をめぐる争奪戦については、人材派遣業に詳しい経営者から聞いた話。日本は豊かで平和だから、外国人が住みたくなるのではないか、という期待は修正しないといけない。


# もともと高付加価値、高利益率のビジネスを遂行できる人たちはどの国でも少ない。そういうビジネスを目指すよりも、地元の中付加価値ビジネスに着眼することのほうが現実的。どのビジネスも供給過剰、薄利多売、横ならびの発想のために、自縄自縛になっているけど方法はあると思う。 12:49 PM Mar 7th via HootSuite

 日本経済が発展したのは、先進国になった1970年代になっても、途上国のような薄利多売のビジネスモデルを続けたから。だから、欧米先進国で日本製品は破竹の快進撃ができた。しかし、日本国内のサラリーマンは全体的に低賃金だった。得をしたのは高品質で低価格(お買い得)な日本製品を購入した海外の消費者。国際比較すると日本人は、低賃金、長時間労働という、戦時下の特殊な経済体制のなかにいた。プロジェクトXとは、そのような経済体制のなかでの男たちのドラマだったのだ。

 そして、年寄りが増えて、人口ががくんと減ったとき、ようやく、やっと、ついに、とういう、無理に無理を重ねた、日本の戦争経済体制が止まるのだ。
 




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