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2009年11月16日

『twitter社会論』津田大介(洋泉社)

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「twitterのつぶやきで世界は変わる」

 twitterにはまるとは思っていなかった。僕がtwitterのアカウントを取得ししたのは1年以上前。アメリカで流行しているというネット情報を知ったときだった。日本人のユーザーが少ないということもあり、英文を書き、海外の人と単文のやりとりをしてみるか、というノリだった。
 それがどうだろう。今年になってから、twitterの爆発的な流行が始まった。その中心人物が、本書を書いた津田大介だ。ITジャーナリストとして活躍する彼のブログ「音楽通信メモ」をときたま見ていた僕は、ある時から、彼がエントリーを書き込むステージが、twitterに変化したことに気がついた。「津田大介」で検索すると、twitterでのつぶやきがヒットする。140字以内という文字数設定があるため、一瞬でその書き込みの要旨を理解できる。どこで誰と会った、いま眠い、腹減った、原稿の督促がtwitterを通じてきたから焦っている、というような、些細なことがつぶやかれている。長文を書くならばブログのほうがいい。津田はジャーナリストなのだから、長文を書くスキルはある。それなのに、断片的なメモのような言葉をtwitterに書き込んでいる。  ある時から津田は、自分が取材をする現場にノートパソコンを持ち込んで、オンライン状態でその現場の生中継をtwitterで始めた。twitterはメールと違って、そのリアルタイム性が特徴。現場で会議をしている人たちの肉声を、津田はtwitterで外部世界に中継していく。これが大好評となり、twitterで取材の中継をする行為が「tsudaる」と呼ばれるようになった。  ぽくはこの書評をオンライン状態のノートパソコンで書いている。twitterにつなぎっぱなし。いままさに気になるシンポジウムが東京で開催されており、その会議を「tsudaる」人をフォローしている。シンポジウムの息づかいを画面で確認しながら、エディタで入力しています。  twitterのタイムラインからざわめきがわかる。世界は動いていると感じ取れる。僕もがんばろう!という元気が出てくる。  そんなことを書くと、twitterって専門家のコミュニケーションツールなの? 難しそう!と思ってしまうかも。違うんだ。

 twitterって聞いたことがあるけれども、どういうものかを知らない。少し使ったけれども、なにがおもしろいのかさっぱりわからない。本書はそんなtwitter初心者のためのよき入門書になっています。

 僕もtwitterのおもしろさがわからずやめようかな、と思ったときがありました。100人くらいフォローをして、その100人のつぶやきを読んで、なんだ時間の無駄だな、と思いました。書き込みの大半が日常的なこと。ブログのようにまとまった文字量で表現できる主張や解説になっていないのですから。
 しかし「tsudaる」技術をもった、さまざまな人たちが、それぞれのこだわり、仕事、趣味の事柄についてのつぶやきを選択的に、読むことができるフリーソフト(たとえば、TweetDeck)を導入して、twitterの見方ががらりと変わりました。
 ある特定の分野を得意とする集団の雑談に参加している感覚になったのです。
 政治家が自分の現場で感じた不条理をつぶやく。主婦が子育てのなやみをつぶやく。社会起業家がアジ演説をする。それぞれ深みのある事柄なのですが、なにしろ1エントリーあたり140字ですから気軽に読める。気軽に感想を書き込める。しかも、そのつぶやき群は、ブログのコメント欄のように固定されることなく、瞬時に流れていく。映画のテロップのようなスピードで動いていく。言葉が通り過ぎていくスピードが、雑談を聞くスピードと同じように感じられてストレスフリー。不作法なつぶやきをする人についてはその言葉を読めないようにブロックすればいい。誹謗中傷が起きにくい適度な距離をもてる。
 このtwitterをオバマ大統領のような世界を動かす権力者も活用している。大統領のつぶやき読みたい!という人たちが全世界からフォローしています。

 twitter社は10億人のユーザー獲得を目指しているらしい。実現したらそのつぶやき群によって世界を変える可能性もあります。(デマが瞬時に拡大する危険性もあるので、その使い方には注意が必要になっています)

 津田が巻末に書いた言葉がいい。この言葉を書いた津田を賞賛するつぶやきがtwitterであふれたけれど、改めて引用しよう。

「社会なんてなかなか変わるものじゃない。変えるには、個人個人がリスクとコストを取って実際の社会で何かしら動く必要があるからだ。変わらないことに絶望してあきらめてしまった人もたくさんいるだろう。それでも、人々が動くための一歩目を踏み出すツールとして、ツイッターは間違いなく優秀だ。何かをあきらめてしまった人が、ツイッターを使うことで「再起動」できれば、少しずつ世の中は良い方向に動いていく。そんな希望を持ちたくなる、得体の知れない力をツイッターは持っている」

 僕のツイッターとのつきあい方を紹介しましょう。起床すると生後8ヶ月の息子の面倒をみます。テレビはつけない。朝っぱらから猟奇殺人事件や覚醒剤使用の報道をしている。そんな映像を子供に見せたくない。息子の成長をtwitterでつぶやく。ブログで書くような主張はない。今日はよく泣くなあ。それだけのことが、twitterにふさわしい。静かな日常をつぶやきながら、希望をもって生きているということをでゆるく伝えるメディア。twitterで僕が書く言葉は軽い。その軽い言葉が、いまその瞬間を共有する友人とつながっていく。
 twitterがすべてだとは思っていない。朝のテレビニュースにかわる有意義な時間を僕はtwitterに振り向けた。まえは文庫の読書だったけれど、息子の成長を伝えたいという親ばか意識をすくいあげるメディアとしてtwitterは使えた。
 こういう使い方が世界を変えるって? ええ、変えると思います。
 twitterをするとき、人は詩人になるから。そうなるような仕様になっているから。140字という字数に思いを込めると詩になってしまう。できが悪い詩でも、単文で詩は詩ですよ。事務連絡のつぶやきは読まなきゃいい。

 10億人の詩人が登場すれば、世界はいまよりもよくなっていくでしょう。そう思いませんか?

 この続きはツイッターで!(と津田も書いていたっけ)。


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