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2009年05月25日

『子どもの最貧国・日本』山野良一(光文社)

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「子どもの貧困を、しっかりと「発見」するために」

『子どもの貧困』(阿部彩)で、詳細に引用された子どもの貧困についてのデータ、そして論旨があまりにもショッキングだったため、現場のレポートを読もうと思い手に取りました。阿部氏は研究者でしたから、「本当の貧困の現場を知らない」といえなくもありません。神奈川県内の児童相談所に勤務し、アメリカで貧困問題の研究をした山野氏は、現場と理論の両方を熟知した人ということになります。
「現在のわが国の政府は、子どもたちの貧困問題にまったく関心を示さず、その問題自体を放置しているとさえ言えるでしょう。この本でも指摘しているように、それは世界的に見れば例外中の例外なのかもしれません」

 冒頭に出てくる言葉は、日本政府と社会が、子どもの貧困に無関心だったという事実です。阿部氏と同じ見解です。

 日本国内にはきちんとしたデータがほとんどないため、引用されるデータはアメリカ国内のものが多いのですが、その内容は衝撃的。日本国内での、子どもの貧困を類推するには十分なデータです。

 たとえば、アメリカでは児童虐待が貧困家庭で起こりやすいことについてはコンセンサスができています。貧困ライン以下の所得の家庭では、豊かな家庭の子どもに比較すると、児童虐待・ネグレクトなどが約25倍に跳ね上がる、というデータがあります。

 社会的な孤立の度合いも貧困家庭ほど強いことも明らかになっています。貧しい人に対して、もっと早く相談に乗ってくれたらどん底にならなかったのに、と思ってしまいがち。しかし、貧困のなかにある人たちに共通しているのは、相談する人がいない、または相談機関があることを知らない、そんなことを相談してもいいの?という自尊心の低さです。人間関係の貧困。自分が求める情報にアクセスする力が乏しい・・・このようないネットワークの脆弱さ、知的なハンディキャップがある人ほど貧困になりやすい。そして貧困になると、普通の生活に戻ることが困難になっていきます。

 アメリカには、貧困解決のためのNPOなどの社会貢献団体がたくさんあるではないか、と社会起業に興味をもつ人たちは思うのではないでしょうか。
アメリカ人は基本的に子どもが大好き。寄付を尊ぶ文化があり、寄付への税制優遇措置もあります。子どもの貧困解決のための研究の蓄積もあります。政策もあります。
アメリカの民間福祉機関を支えているのは個人からの寄付。その額は年間10兆とも20兆円ともいわれます。巨額です。しかし、子どもの貧困は解決していません。そのアメリカを見た山野氏は「アメリカという社会のあまりにも巨大すぎる貧困や不平等という現実」を指摘しています。

 日本は、最近になってようやく、子どもの貧困問題への関心が芽生えはじめた状態。いろいろな研究者と実践者が問題解決のために動き出しています。アメリカのような「子ども貧困大国」にならないために、本書は必須文献の一つです。


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