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2008年11月26日

『なぜ、改革は必ず失敗するのか?』木下敏之(WAVE出版)

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「改革派の市長の親族がテロに遭う!? 改革は命がけなのか?」

 妻の出身が九州の佐賀県K市。よって将来の人生設計には佐賀県とのつきあいを考えることになります。地方経済は危機的な状況にありますから、佐賀県の実情を知るために読んでみました。
 本書は、佐賀市(人口は約17万人)市長を1999年から2005年まで勤めた、元市長による「体験的自治体経営論」です。

 6年半で、市役所職員の削減などの改革で税金を約300億円以上の節約を実現。談合防止の徹底。行政サービスのアップが認められて、日経新聞による「行政革新度ランキング」では就任前の350位から13位にまでアップ。

 自他共にみとめる「急進改革派市長」です。

 いまは経営コンサルタントとして、自治体経営の指南役として全国で活動。とくに注目されるのは破綻した夕張市の復興のために尽力していることでしょう。

 その佐賀市元市長からみると、全国の多くの自治体の状況は佐賀市同様に危機的であるといいます。

次の問題が未解決なまま、すべて問題が先送りされれているのですから。

・地域主要産業の衰退、人口減少のため税収入が減少。 ・高齢化が進み、支出は増加 ・巨額の公共事業を行い、借金が膨張。数年後に返済ピークを迎える。 ・地域主要産業=建設業に代わる産業が育っていない ・「国が何とかしてくれる」という依存心 ・人口減少、高齢化の影響という日本社会の構造変化への認識不足 ・人材の枯渇 ・不徹底な行政改革


 佐賀市に乗り込んでいった木下氏は、スピード第一で改革をすすめていった。抵抗勢力が登場すること、この佐賀市の凋落を招いた行政の無策などについては、ある程度予想可能な事実が記録されていました。私が驚いたのが、木下氏の親族に金属バットによるテロがあったということでした。数人の男達が、親族の車を取り囲んで金属バットで襲撃。襲撃中は無言。これはプロの手口でしょう。犯人は捕まらず。(ネットで、「佐賀市」「金属バット」「テロ」で検索しても該当する情報はヒットしません)

 佐賀市のようなのどかに見える地域にも、改革を止めようとする闇の勢力がある、ということなんですね。

 さらにショッキングだったのは、佐賀市の改革の経験から、首都圏が「時限爆弾」を抱えているという指摘でした。

 地方の高齢化スピードはこれから鈍化していき、新たに介護施設を建設する必要は減っています。しかし、首都圏ではこれから20年に渡って、高齢者が激増します。施設の建設は絶対に追いつきません。そして、その首都圏の自治体の財政は、高齢者問題によって破綻の危機に瀕する可能性が極めて高い。

 いわば本書は、自治体経営のノストラダムスの書、です。

 この出口なしの状況を突破するためには、ベンチャー精神があり実績のある人材の抜擢しかない、と木下氏は訴えています。

 地方産業を再興させる。

 首都圏の高齢者サービスを拡充させる。

 これらの難問を解決するためには、優秀な企業がその自治体でよりよい経営ができるための基盤整備が必要不可欠。これに成功した自治体は生き残り、失敗した自治体は夕張のように破綻することになるでしょう。
 


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