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2008年11月28日

『世界一利益に直結する「ウラ」経営学』日垣隆、 岡本吏郎(アスコム)

世界一利益に直結する「ウラ」経営学 →bookwebで購入

「理想から現実をみるな! 現実からの変化を読み行動するのが経営」

 倒産したアスコムという出版社が、民事再生手続きにはいったとき、刊行されたのが本書です。凄腕経営コンサルタントと、ベテランのジャーナリストによる対談本です。
 この数年、私の専門分野であるユニークフェイス問題よりも、経営書を読むことが増えました。金を稼ぐとはどういうことなのか。このメカニズムを知ることが面白くなってきたからです。  経営について勉強するには、本を読むよりも実践が一番ではありますが、不勉強な経営者では生き残ることは難しい時代ですから、やはり読んでおくにこしたことはないでしょう。  日垣隆さんは私がもっとも尊敬するジャーナリストのひとり。少年犯罪事件のノンフィクション、世間の無知をちくりと刺す辛口コラムを読み続けてきました。彼が発行する、有料メルマガ「ガッキィファイター」の読者でもあります。日垣さんがすごい点は、文筆業をビジネスのひとつととらえて、収益性を確保するためにまっとうな努力をしている点。私を含めておおくの物書きは「取材対象への思い」「文筆業はかるあるべし」という固定観念にとらわれて、収益性へ意識を振り向けることができないまま、執筆活動をしていると思います。そんなことに意識を向けているうちに、出版メディアの構造変化による不況のなかで立ち往生している人がなんと多いことでしょう。

 今ちいさな会社に生まれて初めて就職して、経営の現場を間近に見るようになり、収益とはなんぞや、経営者とはどういう人種なのだろうか、と生で勉強させてもらっています。

 経営者の生態は、生で見ると非常に面白いです。借金まみれでも前向きに発言し、笑顔を絶やさない。いまの私にはできない芸当です。この芸当を習慣化して、社員のモチベーションを上げていく社長たちはどういう神経をしているのだろうか。


 岡本さんはこう語ります。


「(経営者が)はたから見て天真爛漫というのはあるかもしれないですれども、本人が天真爛漫というのは絶対にないと思います」
「天真爛漫という状態にずっといられるように常に目指し続けなければいけない」

 
 こうやって、身を粉にして働き続ける経営者たちが最終的に行き着くのは、家族の問題である、と岡本さん。
「コンサルを続けるうち、経営者はいかに今まで家族を無視していたかが見えてくるようになります。家を守っている奥さんの苦しみに気づくようになる」

 40歳過ぎて結婚したばかりの私には、想像できませんが、おおくの経営者は家族を顧みることなく馬車馬のように働いているようです。(そりゃあ、離婚が多いわけです)
 短時間で集中的に仕事をするノウハウをメルマガで公開してきた、日垣さんはこう答えてます。

「家族のためには、仕事の時間を少なくして売り上げを伸ばすのが一番いいわけです。そうすると、単価を上げて、お客さんを増やすのがベストということになる」 「つまるところ、どれだけ時間を短くして効率よく利益を上げるかということに行き着く」

アメリカが震源地の世界恐慌のなかで、どうやってビジネスを展開していくべきか。ひとつの解はありませんが、本書に述べられていることは、おおくの気づきを与えてくれます。
 お二人に共通しているのは、資本主義という環境を熟知したうえでビジネスをやれ、理想から現実をみるではなく、現実から変化を読み取っていけ、というメッセージ。
 経営者をやっていると、見たくもない現実が次々と現れる。そこから目を逸らしている経営者は沈没していきます。経営者はおおくの社員の生活を守らなければなりませんから、判断ミスは命取り。不況のなかで、極限状態になる経営者、社員が増えていくことでしょう。そんな人たちには是非読んでいただきたいです。 重要な箇所は太字になっているので、さくさく読めますよ。


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2008年11月27日

『勝間和代の日本を変えよう』勝間和代(毎日新聞社)

勝間和代の日本を変えよう →bookwebで購入

「日本を少しずつ確実に変えるための知恵」

 経済評論家の勝間和代さんの新刊です。私はこの人の著作の多くに目を通しており、「もうそろそろ勝間さんから卒業かな」と思っていたのですが、書店で本書を手にとって、即購入してしまいました。
 びびっときたのは、資本主義の限界を超えようとする動きが、世界中の意識の高い人たちのなかで巻き起こっており、その主役がNPOやNGOという組織を運営している社会起業家たちであるという記述でした。そしてその後の分析が秀逸でした。

 どういう人が社会起業家になっているのでしょうか。
 勝間さんの分析によれば、第一に、夢に燃えた高学歴な人たち。給料は度外視しても、社会的に意味のあることをしたいという人たち。特徴的なのは女性が多いと言う点。これは日米共に共通していることだという指摘でした。第二に、多くのお金を儲けた人たち。ビルゲイツ氏のようなビジネスの成功者です。

 「結局、ある程度お金から自由になれる立場か、あるいはすでに稼いできたということで余裕がある人でないと、このような活動に参加するのは難しいということです。そこにこういったNPOやNGOが継続して活動していくうえでの難しさがあります。金銭的な報酬のリターンに限界があるため、NGOやNPO内でキャリアが積みにくく、数年で辞めていく人がどうしても多いのです。これは、日本でも、他国でも、同じ状況です

ああ、やっばたそうだよね!
 小さなNPO法人の代表者として、これらの分析はひとつひとつ納得できるものでした。
 社会起業に投資するファンドもあるのですが、投資に値する動きそのものが少ない、ということも教えられました。

 まだ始まったばかりの社会起業のあら探しは簡単ではありますが、その分析をする手際の良さには、正確な情報に基づく分析と、資本主義の先にあるものを見通して、若者に引き継いでいこうという誠意がありました。

 いまや格差社会問題の論客になった作家、雨宮処凛さんとの対談、ワーキングマザーの漫画家、西原理恵子さんとの対話。それぞれ個性的な人生を送ってきた人たちに、スーパーキャリアウーマンである勝間さんがどう切り返すのか、という好奇心も満たすことができて、たいへんお得な一冊になっています。
 勝間本に流れるメッセージは多数あります。本書では、資本主義と女性の関係について教えられました。
 資本主義が円滑に運営されるためには女性が働くべきなのに、日本社会は厳しく女性を差別し雇用を保障してこなかった。そのツケが回ってきているということでした。
 少子化とは、女性たちが自分の人生を守るために、日本社会から静かに退場するという行動の結果のあらわれ。勝間さんとて、その退場者の一員であるという記述にはため息が出ました。外資で働く女性とは、日本社会のルールから解放されるのですから。日本社会の女性差別を変えるためのコストはとんでもなく高くつきます。そのコストを払うことは、自分の人生を棒に振ることになるかもしれない。それならば、日本のルールが通用しない海外移住、外資就職、または、専業主婦、という選択をすることになるわけです。日本の男性優位のルールで決められた会社は、女性には働きにくいことこのうえなし。変わるとしたら、自然に上の世代が亡くなっていくことを待つしかないのかもしれません。
 もうすこし勝間本のブームを楽しもうと思います。


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2008年11月26日

『なぜ、改革は必ず失敗するのか?』木下敏之(WAVE出版)

なぜ、改革は必ず失敗するのか? →bookwebで購入

「改革派の市長の親族がテロに遭う!? 改革は命がけなのか?」

 妻の出身が九州の佐賀県K市。よって将来の人生設計には佐賀県とのつきあいを考えることになります。地方経済は危機的な状況にありますから、佐賀県の実情を知るために読んでみました。
 本書は、佐賀市(人口は約17万人)市長を1999年から2005年まで勤めた、元市長による「体験的自治体経営論」です。

 6年半で、市役所職員の削減などの改革で税金を約300億円以上の節約を実現。談合防止の徹底。行政サービスのアップが認められて、日経新聞による「行政革新度ランキング」では就任前の350位から13位にまでアップ。

 自他共にみとめる「急進改革派市長」です。

 いまは経営コンサルタントとして、自治体経営の指南役として全国で活動。とくに注目されるのは破綻した夕張市の復興のために尽力していることでしょう。

 その佐賀市元市長からみると、全国の多くの自治体の状況は佐賀市同様に危機的であるといいます。

次の問題が未解決なまま、すべて問題が先送りされれているのですから。

・地域主要産業の衰退、人口減少のため税収入が減少。 ・高齢化が進み、支出は増加 ・巨額の公共事業を行い、借金が膨張。数年後に返済ピークを迎える。 ・地域主要産業=建設業に代わる産業が育っていない ・「国が何とかしてくれる」という依存心 ・人口減少、高齢化の影響という日本社会の構造変化への認識不足 ・人材の枯渇 ・不徹底な行政改革


 佐賀市に乗り込んでいった木下氏は、スピード第一で改革をすすめていった。抵抗勢力が登場すること、この佐賀市の凋落を招いた行政の無策などについては、ある程度予想可能な事実が記録されていました。私が驚いたのが、木下氏の親族に金属バットによるテロがあったということでした。数人の男達が、親族の車を取り囲んで金属バットで襲撃。襲撃中は無言。これはプロの手口でしょう。犯人は捕まらず。(ネットで、「佐賀市」「金属バット」「テロ」で検索しても該当する情報はヒットしません)

 佐賀市のようなのどかに見える地域にも、改革を止めようとする闇の勢力がある、ということなんですね。

 さらにショッキングだったのは、佐賀市の改革の経験から、首都圏が「時限爆弾」を抱えているという指摘でした。

 地方の高齢化スピードはこれから鈍化していき、新たに介護施設を建設する必要は減っています。しかし、首都圏ではこれから20年に渡って、高齢者が激増します。施設の建設は絶対に追いつきません。そして、その首都圏の自治体の財政は、高齢者問題によって破綻の危機に瀕する可能性が極めて高い。

 いわば本書は、自治体経営のノストラダムスの書、です。

 この出口なしの状況を突破するためには、ベンチャー精神があり実績のある人材の抜擢しかない、と木下氏は訴えています。

 地方産業を再興させる。

 首都圏の高齢者サービスを拡充させる。

 これらの難問を解決するためには、優秀な企業がその自治体でよりよい経営ができるための基盤整備が必要不可欠。これに成功した自治体は生き残り、失敗した自治体は夕張のように破綻することになるでしょう。
 


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2008年11月25日

『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』町山智浩(文藝春秋)

アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない →bookwebで購入

「ブッシュ政権の暗闇時代を笑うべし!」

 アメリカという国はじつに面白い。
 21世紀型の世界恐慌の震源地として世界中の金融システムを揺るがせている。

 国内産業の要である自動車、保険、銀行が破産寸前にまで追い込まれている。

 アメリカという国家を破壊するのは、アルカイダという世界中に分散するテロリスト集団ではなく、アメリカの権力中枢にいる産業界のエリート、ということになるのではないか、と思えてくる。

 それほどにアメリカが直面している課題は大きく、そして自業自得である。

 本書『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』で町山智浩さんは、自業自得で苦悶するアメリカを、ユーモアたっぷりに描いている。

 日本のニュースをみても、アメリカの現在がさっぱり分からない、と思っている人にはオススメ。

 笑いながら、現代アメリカの闇を知ることができること間違いなしだ。

 日本にも国家としての自業自得という現象は起きている。

 いわずとしれた年金問題である。社会保険庁の組織的な過誤によって年金記録が改ざんされ、国は国民からの信用を失った。

 こんなひどい国は日本だけではないか、と思っていたら、町山さんによれば、アメリカではすでに年金制度が破綻しているという。これには驚いた。アメリカの医療制度が破綻していることはよく知られているが、年金制度まで破綻していたなんて。

 老後の不安に直面したアメリカ人たちは、終の棲家としての家を求めた。低所得者にサブプライムローンで家を提供した企業の無法ぶりには目が点になる。

 ケイシー・セリン。年収360万円、24歳のウエブデザイナー。クレジットカードの負債は200万円。このような人が、わずか1年で7件の家を購入できた! 「自己申告ローン」という所得を自己申告(ようするに収入を偽ることができる)すればローンが組めるのだ。セリンは、住宅バブルブームのなかで家を転売しようとしたがバブルは崩壊していたため家は売れない。当然のことながら破産。破産総額は約2億円。セリンは破産の経緯をすべてブログで公開し、アメリカ中が、住宅ローン会社のいい加減さを知ることになった。そしてこのサブプライムの破綻が、世界恐慌の引き金になっていったのである。アメリカ中で破産して、家を差し押さえられ、ホームレスが急増している。

「バカな奴らだと責めてはいけない。アメリカ人は住宅以外に老後を託すものがなかったのだ」(町山)

 ブッシュ大統領は、アフガニスタンとイラクで戦争を始めただけでなく、アメリカ国民の生活をも破壊していたのである。

 このような閉塞感のなかで、アメリカ史上初の黒人大統領のオバマが登場した。この柔軟性がアメリカの強さだと思う。しかし、本書を読むと、黒人にチャンスを与える国である前に、無知であることを尊ぶキリスト教の福音主義が多数派を占める、いびつな宗教国家という素顔が真実に近いことが分かるのである。


 アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない。

 8割はパスポートを所持していない。

 国民の半分は自国の年金危機それ自体を知らない。

 過半数が新聞やテレビでニュースを見ない。

 ・・・・・
 
 なお、町山さんはカリフォルニアという、アメリカのなかではリベラルな人たちが多く住む地域に暮らしている。だからこそ、アメリカのなかにいながらにして、アメリカを客観的に観察することに成功しているのだろう。

 いまテレビニュースでブッシュ大統領の映像が流れている。

 ノーテンキに笑っている。

イラクとアフガンで戦争を起こし、自国の年金制度を崩壊させ、世界経済をパニックにした権力構造の中枢にいた人間とは思えない、軽薄さが表情からにじみ出ている。この軽い人物がトップになれるのがアメリカである。

 もっとも日本のいまの政治状況では、アメリカを笑うことができない。

 


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