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2008年10月04日

『日本のNPOはなぜ不幸なのか?』市村浩一郎 (赤城稔 取材協力)(ダイヤモンド社)

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「未来のNPO経営者を応援する書」

NPO法人の経営に関係している人にとって必読書です!

NPO法人の経営をしている人、したいという希望をもっている人は、すぐに購入して欲しい。

 日本のNPO法人(特定非営利活動法人)のほとんどの経営はうまくいっていません。ほとんどの団体が資金繰りに悩み、人材不足に苦しみ、やりたい事業ができないのです。NPO法人の経営がうまくいかないのは、その代表者の手腕が不足しているからである。それはもっともな解釈です。しかし、経営がうまくいっていないNPO法人が多すぎるのではないでしょうか。そのうまくいっていない理由を市村浩一郎・衆議院議員が丁寧に解き明かしてくれました。

 私はNPO法人ユニークフェイスという、ちいさなNPO法人の代表者です。ユニークフェイスという任意団体をつくって、顔面に疾患や外傷のある人たちの支援をはじめました。NPO法人にしたのは2002年。そこから組織づくりと資金ぐりで頭の痛い日々がはじまりました。
 お金は常に足りない。そのことを誠実に会員に説明しても、NPO法人はボランティア活動でしょう、お金儲けが目的ではないはず、という反応。「非営利」法人という名称が、「利益を出してはいけない」ということを意味しているようにとらえられていたのです。現実は活動によって利益を出してもいいのです。この営利と非営利の仕組みについて、説明するほどに、金儲けのためにNPO法人をつかっている、と誤解されたものでした。

 何かヘンです。

 欧米のNPO法人には、数億円の資金を調達する能力がある組織がいくつもあり、その代表者はMBAを取得した筋金入りの経営者だったりします。日本と欧米のNPO法人を比較すると、メジャーリーグと草野球ほどの大きな格差があります。しかし、このような現実は日本国内ではなかなか理解されません。このような内外格差を埋めるためのうごきは、政策をつくる霞ヶ関からは聞こえてきません。日本のNPO法人をとりまく環境を改善しようと、心ある人たちがロビー活動をしていますが成果は乏しい。アメリカのようなNPO法人経営ができる環境になるまでいったいどれだけの歳月が必要なのでしょうか、と何度嘆息したことか。
 市村議員は、現在の法制度のなかでは、NPO法人は、官僚の下請け組織にならざるを得ない構造を明らかにしています。
 「ボランティア活動などをはじめとする」という文言が特定非営利活動推進法にはいったことで、経営という発想が抜けてしまったこと。法律をつくることを優先し、欧米では当たり前になっている、寄付者にたいする税制上の優遇措置の整備をしなかった経緯を市村議員は教えてくれます。
 アメリカではNPO法人に寄付をした人は、そのお金が税金の対象にならない。だから、著名人が災害などで大口の寄付を申し出ることができるのです。寄付によって、必要なサービスがこまっている人に届く。その寄付者は社会的に賞賛される。予算が決まっている役所ではできない、きめ細かいサービスが民間組織によって可能になり、税金の無駄遣いを減らすことができます。
 NPO法人の活動の事例が詳しく紹介されており、資料的価値も高い本になっています。最近、注目されているNPO法人にファザーリング・ジャパンがあります。父親が子育てを楽しむことで、よい家庭をつくり、快適な地域社会を形成する。そうした活動を通じて、ワークライフバランスを考えていこう、というメッセージを出している活動です。
 年間のランニングコスト(事務所や光熱費など)は約150万円。NPO法人の収入は、会費(個人年会費10000円)と代表の安藤哲也氏の講演のギャラ。会員数は約30人(!)。このNPO法人を応援する理事たちはみなボランティア。ファザーリング・ジャパンは非常に活発に活動しており、経営のプロも参画しているNPO法人なので、もっと余裕のある資金を確保していると思っていました。(とんでもない勘違いでした)。これでは、代表者の情熱と資金が枯渇したとき、活動は停止してしまいます。
 NPO法人は自立した経営をしなければなりません。資金がなければ、サービスを提供できませんし、優秀な人材を育てることもできません。しかし、NPO法人のことを、多くの日本人は「ボランティア団体」であると誤解しており、その活動が経営という面で、いかに多くの困難のなかにあるのかが知られていないのです。

 市村議員は、次の3つの活動の柱を立てて、NPO法人(特定非営利活動法人)を活性化しようとしています。

1)「非営利法人」という概念を民法に位置づけます 2)すべての非営利法人を包括的にまとめ、国際的な規準に合致させます。 3)非営利法人の活動資金を激増させる寄附税制改革等を行います。

 この3つの課題を解決すれば、NPO法人に興味を持つ若い世代にとってすばらしいプレゼントになることでしょう。
 本書が、日本中のNPOが、日本の経済力に見合った力強い組織に再生するためのステップになることを願ってやみません。



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