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2008年02月15日

『「社会を変える」を仕事にする-社会起業家という生き方』駒崎弘樹(英治出版)

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「痛快でほろ苦いNPO法人経営者のノンフィクション」

 病児保育という社会問題を解決する事業を進めている、NPO法人フローレンス代表駒崎弘樹が、このビジネスを着想しビジネスにするまでの奮闘記である。
 病児保育とは、病気になった子どもを一時的に預かること。育児をしている女性にとって、この病気になった子どもを預ける保育所やベビーシッターの確保は大問題だった。ほとんどの保育施設は、病気になった子どもを預かってくれない。となると、母親は、病気になった自分の子どもの面倒を見なければならない。子供の病気が治るまで仕事ができなくなってしまう。いまの日本では、子供が病気になったとき、職を失うおそれなしに休める職場で働いている女性はほとんどいない。駒崎は、病気になった子どもの面倒をみるために会社を休んだために解雇された女性の話を聞き、この社会問題の存在に気がついた。  駒崎は、この病児保育を、ソーシャルベンチャーという手法で解決するために、NPO法人フローレンスを若い仲間たちとともに立ち上げる。  この病児保育は、保育関係者にとっては、やりたくてもできない、できたとしても赤字になることがわかっているために参入できなかった領域だった。  全国に点在する病児保育サービスの多くは、行政からの補助金によってかろうじて運営ができているというありさま。いわば「見捨てられた領域」に、男性、独身、子どもをもった経験なしの、IT学生ベンチャー社長あがりのアンチャンが、事業化していく!と宣言し、この難問を周囲の暖かい理解と、もちまえの行動力によって解決していく。

 と、書くと順調に事業化できたように見えてしまう。

 問題山積のNPO法人フローレンスである。

 駒崎は、病児保育をしてきた保育業界の諸先輩に「独身」「未婚」「子供がない」ことを理由に「できるわけがない」と言われてへこんだり、NPO法人の助成金獲得にアドバイスができる、という自称プロにダマされたり、という経験をして「NPO業界」の後進性に気づいていく。

 その体験を駒崎は楽しそうに書いていく。その楽天性が、多くの人を惹きつけて、フローレンスという病児保育事業を大きくしていったのだ。うらやましいと思ったし、こういう行動力のある若者が登場したことで、日本のNPOを取り巻く環境が変わりつつあることがわかった。


 NPO法人ユニークフェイスという、異形の顔をした当事者の支援という、無謀な活動をしてきた私は、この本の中で展開されている駒崎の活動を我がことのように追体験してしまった。
 「あ、ここは俺と似ている体験だ」、「ああ、この場面でこういう強力な助っ人が登場するのか! 運がいいなあ。羨ましいなぁ」、「日本のNPO法人の土壌のなかで、新卒学生を採用するなんて無謀きわまりない! でも出来るのか!」。

 隣の芝は青く見えるものである。

 私もがんばらなくては・・・・。


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