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2008年11月02日

『日本のコンテンツビジネス―ネット時代にどう変わる』猪熊建夫(新風社)

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外国に住んで新聞を読む程度ではどうもその意図や感覚がピンと来なかったが、かつて小泉旧政権下ではコンテンツ立国などということが言われていたように思う。例年その多忙さと、ミーティングに次ぐミーティングの連続に疲労困憊してしまい、その町の名を聞くにもくたびれたドイツ・フランクフルトのブックフェアは世界最大の規模を誇るが、そこで何度か見た当時の日本から出張してきていたコンテンツビジネスの担い手たちの光景も、いわゆるマンガ屋さんといった風情で、セル画や雑誌の見本などを持参して、海外出版社や代理人との版権ビジネスを展開する人の数が急に増えたのが、確かに2006年頃だったと思う。電子ブックスもやっと増えてきた頃で、学術的なタイトル・出版社を中心に、市場や産業の成長見込みについて、色々な出版社の意見を聞いたりしたものだ。

よく言われることだが、携帯とネットの環境バランスの国別格差は大きい。日本のように、携帯電話の通信料が比較的リーズナブルで、月額固定料金が常態化しており、逆にパソコンの個人所有率が低い(世界17位)国では、有料コンテンツを展開し、ビジネスとして成立させるには携帯経由とするか、学術的なデータベースとしての機関購入(例えば朝日新聞の全文データベース「聞蔵」は機関向けを主とする有料サービスである)のどちらかの方法を取ることが普通だ。他の国、例えば、イギリスやEU諸国では携帯電話のプリペイド方式も未だ根強い(イギリス英語ではPay as you goという)し、アメリカは利用料が馬鹿高いと聞くが、そのかわりにコンテンツビジネスは無料サービスの体を取りがちで、野口悠紀雄氏がかつて週間東洋経済で批判していた新聞コンテンツネットサービスの内外格差も、ネットと携帯の国別の環境差によるところも大きい。携帯を取るか、知を取るか、である。

西垣通「ウェブ社会をどう生きるか」を読んで、それ以前にも何人もの外国人と、教育や本や情報について、折に触れ話を重ねてきたわたしは腑に落ちて震撼した。情報概念、世界を検索可能なものと捕らえる見方(google)と、キリスト教思想(「はじめに言葉があった」/ヨハネ福音書)は、社会がフラット化するという見方の根底にある考え方だという。言語はそれでも編集において置換不能な要素であって、日本語の書物をたくさん所蔵している欧米の大学図書館が、「検索可能な世界の一貫行為」としてそれらを電子ブックに変換するときに、日本語のできない人が編集することでどうなるのか、googleで「検索」をすれば一気に体感できるというものだ。外国人(主に西洋人)の頭の中を七転八倒しながら覗いたリアルな体験がないひとにこのことを話しても、カッタルイ天下国家論を話していると思われるのがオチなのは、語りの能力が低いわたし自身が何度も経験している。

そこで、刊行年もやや古いのだが、おおまかなデータを掴む上でも本書はわれわれの産業に属するひとには一応の必読書だと思う。たしかに書籍業は雑誌を合わせても年商2兆円強レベル、本書の言うように「シャープやマツダ一社と同規模程度」の産業だ。しかしそれなりに社会的課題にさらされてもいる。新聞業界のウラ話やマスコミ業界高給の秘密など、下世話に取れるネタも多いが、何より周辺産業を含んだ見取り図を読ませてくれるところはありがたい。何しろデータを無視した感覚的な議論で終始することが多いのだ、こうした業界は。

(林 茂)

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