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2008年07月31日

『古本屋めぐりが楽しくなる 新・文學入門』岡崎武志と山本善行(工作舎)

古本屋めぐりが楽しくなる 新・文學入門 →bookwebで購入

 「均一小僧」岡崎武志と「古本ソムリエ」山本善行。高校時代からの文学の友であるふたりの繰りひろげる文学漫談。
 岡崎武志の語りにはこれまでも、心からの本への愛と本を読むことのよろこびをしみじみと教えられることがあったが、ふたりの掛け合いはより煽動的。大阪出身のふたりの掛け合いであることにもよるのだろう。「文學漫談」だなんて、このふたりでなければ片腹痛いと思う。
 「漫談」は「新・古本入門」「絶版文庫による文学入門上・下」「新・随筆入門」「新・詩集入門」「新・文學全集をにはたちあげる」の六本立て。巻末の「架空企画! 『きまぐれ日本文學全集』 全八十巻構想」では版元で作成したダミーの写真も披露するという徹底ぶり。ほんと、好きねえ。

 小説を読むばかりが読書じゃない、もちろん、小説から得た感動が本の世界への入り口になってはいるが、「小説を表通りとしたら、随筆は路地の楽しさというか、用もなく、ぶらついてそこで学ぶことがある。それは表通りにまた還元されていくんや。(岡崎)」とあるように、この本じたいにも、学生時代から古本屋をめぐりたおしてきたふたりに連れられて、さまざまな路地をぶらついてゆくような楽しさがある。思いがけないところで横道に入ったり、後戻りしたり、さっき通ったところへまた出てきたり。そんななかで読み手は、案内人のふたりが、ほら、これね、いいでしょう、と示したあれこれのなかに、きっとなにかしら心にのこるものがあるはず。

 「新・詩集入門」の章では、いくつもの詩が紹介されてあるのだが、そこには開高健のサントリーオールドのコピーや、シャンソンの訳詞、中野重治の書いた校歌の歌詞などもあったりする。ほか、宮沢賢治、西脇順三郎、鮎川誠、鈴木志郎康、荒川洋治……そして、ふたりがはじめた出会った生身の詩人、若い頃ともに同人誌をつくり、当時『ユリイカ』の投稿欄に鈴木志郎康の選でその詩が毎回のように選ばれていた森園清隆という詩人の詩。
 「随筆」や「文學」の章よりも作品の引用がおおいのは、詩を語ることの難しさのあらわれだろう。しかし、こうしたふたりのやりとりのなかに置かれても、詩は詩として読み手にせまってくる。詩を紹介した文章はもちろんほかにもたくさんあるが、ふたりの人間の語らいのなかで、つぎつぎと詩が紹介されてゆく、このやりかた、とてもいい。「詩集のこと話すんやけど、やっぱり少し恥ずかしいな。」という岡崎のひと言からこの章ははじまるのだが、そうした照れもまたいい。

 古本について、文学について、思い入れたっぷりに、真剣に、ときに面白おかしくしゃべりたおしているこの本ぜんたいにも、そこはかとないふたりのはにかみが感じられて、そこがなにより魅力だと思う。
 心底笑えたのは、古本ソムリエ・山本善行が、京都・百万遍知恩寺の秋の古書市の最終日、一袋詰め放題五百円の大放出のために、自宅で「袋詰めの練習」をしているというエピソード。そこまでするか?とおおかたのひとはお思いだろうが、さすがは山本さん! などと感心していたら、古本熱がむくむくとわきあがり、近所の喫茶店でこれを読み終えると、その足で古本屋へ駆け込んだ。「古本屋めぐりが楽しくなる」という触れこみはほんものだ。


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