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2012年01月20日

三浦しをんさん特別寄稿
『辞書は「言葉」という希望を乗せた舟 』

 キノベス!2012 第1位『舟を編む』


「いままで生きてきたなかで、『第1位』という事態を経験したことあったっけな」と考えてみたのですが、該当する記憶がまったくありませんでした。脳内の空白地帯を埋めてやろうというシナプスの粋なはからいなのか、徒競走で万年ビリだった映像がよぎりだす始末。これが噂に聞く走馬灯? だとしても、その記憶は再生してくれなくていいから。はじめての事態に直面し、緊張と動転のためか現在腹具合が悪いです。

『舟を編む』は、辞書を作ろうと奮闘する人々の物語です。読者と本との仲を取りもつ最前線にいらっしゃる書店員のかたが、辞書と言葉にまつわる『舟を編む』を「オススメしたい」と思ってくださったこと、とても光栄でうれしく、我が腹なぞいくらでもピーピー言うがよい、という心境です。本当にどうもありがとうございます。

 作中では話がややこしくなるので、電子辞書については触れませんでした。しかし実際は、電子辞書の中身も、紙の辞書があるからこそ成り立っています。だらだらと単語を費やしてもいいのなら、言葉の意味を説明するのは比較的容易です。けれど、できるだけたくさんの言葉の意味を、いかに簡潔に、正確に、紙という有限のスペースのなかに凝縮させていくか。そこに辞書づくりの技と苦悩と楽しさがあり、辞書の魅力もそこから生まれているのではないかと思います。

 紙の辞書はもちろんのこと、それをもとにした電子辞書にも、「辞書」という書物の魅力、個性は息づいています。

 もし本書をお読みになって、辞書への興味を抱いてくださるかた、言葉の持つ力に思いを馳せてくださるかたがいらしたとしたら、これ以上の喜びはありません。


三浦しをん(みうら・しをん)
1976年生まれ、東京都出身。2000年、『格闘する者に○』でデビュー。2006年、『まほろ駅前多田便利軒』で第135回直木賞受賞。小説作品に『風が強く吹いている』『神去なあなあ日常』『まほろ駅前番外地』『天国旅行』『木暮荘物語』『舟を編む』などがある。エッセイ作品に『あやつられ文楽鑑賞』『ふむふむ おしえて、お仕事!』ほか多数。最新刊はエッセイ『黄金の丘で君と転げまわりたいのだ―—進め マイワイン道!』(岡元麻理恵さんとの共著)。


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