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2008年06月16日

『我らクレイジー☆エンジニア主義』 リクナビNEXT Tech総研 (講談社)

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「天才科学者たちの研究哲学」

 ここのところ読書をしていなかったわけではなく、紹介できるような気持ちになれる本を読んでいなかったので、ブログの更新を怠っていました。
 資料集めのための読書というのは、砂を噛むような時間の連続で、私の場合はどうしても、後味の悪い書物を選択的に読んでいく作業であります。いやあ良い本もあるけど、見るも嫌な本も相当数出版されています。 それで嫌な読書を繰り返すうちに、自分は本当は読書が大っ嫌いなのではないかという錯覚に陥り、次に襲ってきたのは脱力。面倒なことなどほっときたい気持ち、前向きになれないネガティブな感情なのでありました。 だから、肌に合わない本はたとえ仕事であろうと何であろうと、読んではいけない。これがここのところ得た教訓でした。

~*~

 人工呼吸療法の介護とは、本当に厄介であって、昨今、よく取り上げられますように、無駄に長く生きているなどとさえ言われている人々の自立支援(文字通り)を、24時間365日休むことなく行っているのですが、こう言っただけでも何も知らない人々には、相当な矛盾を撒き散らしたのではないかと思うのです。でも、そのように一般には理解されがたいマイノリティの受難でしかなかった「当然受けられるはずの医療が自己決定、自己責任に押し付けられる体験」が、この4月からの後期高齢者医療制度の開始に伴い、一般の高齢者に広がっていく予感がして、あちこち意見をし、新聞やテレビニュースのインタビューにも答えてきました。そもそも75歳(障害者は65歳)で一定の線を引くことが、年齢ではなく貧富による差別につながる恐れがあること、そのサービスの中身としては、主治医制度の導入や終末期医療相談料の設定が、患者や高齢者の選択の自由を狭めること、終末期の定義が所詮は医師の裁量でしかないことなど、まあ手短に言えば身近な患者さんたちの実体験から「制度がこうなったら、一般の高齢者や重症患者もこういう目にあいますよ。危ないですよ」という風に述べてきました。しかし私のような者が何を言っても舌足らずで、「風が吹けば桶屋が儲かる」風の説明にしかならないのです。悔しいことです。

 でも、負けん気だけで、いくつか短い文章を書かせていただきました。終末期医療関係では『季刊福祉労働』に「65歳から始まる後期高齢者医療制度?」、日本プランニングセンター、『難病と在宅ケア』7月号に「家族からみた在宅人工呼吸療法の終末期ケアと療養上の注意点」。終末期医療に関しては書くよりあちこち口頭で述べたほうが多かったのですが、同時進行で脳神経倫理系の原稿依頼が重なって、青土社『現代思想』6月号の特集、ニューロエシックス―脳改造の新時代に、「ブレインマシンの人間的な利用」、岩波書店『科学』8月号の特集、生と死の脳科学に「心を伝えるブレインマシンへ」。両者とも重度障害者の意思伝達装置としてのブレインマシンインターフェースのあり方に関する提言のつもりでしたが、ご笑覧ご批判いただければと幸甚です。生命倫理学の新しい流れとしての脳神経倫理学は、文系も理系もない学際的で多面的なアプローチが可能ということで、名だたる執筆者の論文の中に私の安易な文書が紛れ込んでいます。そしてそこだけ場違い感は満点なのですが、重度障害者がブレインマシンの第一受益者であるべきとの良心的な編集者様の信念からの抜擢と思って、有り難く書かせていただきました。

 それで背伸びついでに申しますと、脳を基点とする人間改造の目指す方向は,全体としては明るいのです。まず、QOLが低いから死んだほうがいいという医療倫理にありがちな死への傾斜感はないのですし。無論、エンハンスメントとの境界についてはいろいろ議論の余地もあるでしょうが、ことや脊髄損傷やALSのような微動さえできない人に限っては、その脳や皮膚から直接生体信号を取り出しコンピューターにつなげ、QOLを拡張しようとチャレンジしているのですから、目的なりっぱな福祉です。それで、この分野もALSに関連していることから、少しまじめな読書はいたしましたが、本日、やっと紹介するのは、一言で言えば、現代日本におけるカリスマ天才科学者のインタビュー記事を集めたお堅くない本であります。私の周囲にも秀才はかなりいますが、天才となるそうそういません。でもこの本を読めば天才とはどういう脳を持っているのかよくわかりますよ。時々、テレビ番組でダビンチの偉業に驚いて、「うっそー!」などと叫んでしまうことあるけれども、苫米地英人さんも東京京都間の新幹線の中で医学用語3千くらいはすぐ覚えちゃうんだそうです。彼はオウム真理教事件で信者の脱「洗脳」を手がけて話題になった人。まだ人工知能「AI」が日本では知られていなかった頃にエール大学大学院で人工知能の父と呼ばれるロジャー・シャンクに学んだ人。胸が大きくなる、モテるようになる「奇跡の着うた」で話題になった人。どれもすごすぎて、脈略なく並べられているようにさえ思われますが、脳機能的にはつながった技術なんでしょ。この先は「戦争」や「差別」の概念を人間の脳から消したいそうです。消さないとなくならないから。社会悪となる思考の消去も、一種のエンハンスメントであり、苫米地さんなら、なんだか本当にできそうに聞こえるので、そうなれば、これはこれでとても恐ろしいことなのではありますが・・・。

まあ、そういう天才エンジニアたちの偉業がたんたんと綴られている本なので、ここで私などが書評めいたことなど書けません。爽快なこの方々が、どのようにして世界的な科学者に育ったのか、努力型もあれば天才型もありますが、共通しているのは彼らが寝食よりも実験が好きで、社会というより人類に対する貢献を目標にしていて、大変に好奇心旺盛でポジティブなところです。この時代を作っているという圧倒的な自負と臨場感に、しばし世を憂えてネガティブになっていた私も励まされました。

 凡人もできる範囲でがんばろうっと。

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