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2010年02月01日

『貧者の領域――誰が排除されているのか』西澤晃彦(河出書房新社)

貧者の領域――誰が排除されているのか →bookwebで購入

河出ブックス、2月上旬発売のタイトルをご紹介しています。

2点目は、西澤晃彦さんの『貧者の領域――誰が排除されているのか』です。

西澤さんは、東洋大学教授(都市社会学、階級・階層構造論)。ここ数年で、ようやく「貧困」が社会問題として扱われるようになった観がありますが、まったくと言ってよいほど論じられていなかった時期からこの問題に取り組まれてきました。今回の本は、その集大成的な一冊。政権が代わり、年が改まっても、一向に出口が見えない今こそ、多くの人に手にとっていただきたいものです。

西澤さんから読者のみなさんへのメッセージです。

「実に単純な排除の原理が参照されつつ、近代以降の日本社会においては誰が貧者になるのかが決められてきたし決められている。そういう話と、貧者となった人々がそれをどう引き受けどう生きているのか、そういうことを、特に野宿者に焦点をあてて書きました。

読んでいただければ分かると思うのですが、野宿者は特異な例なのではなく、現代において貧困という条件を生きる存在を明瞭に照らし出す「代表例」ともいうべき人々なのです。「特別」な人々についてではなく、近現代社会論としてこの本を書いたつもりでいます。」

目次は以下のとおりです。

まえがき
Ⅰ章 排除による貧困
Ⅱ章 檻のない牢獄――野宿者の社会的世界
Ⅲ章 「非国民的なもの」の排除――東京の都市下層
Ⅳ章 「都市的なもの」と「社会的なもの」
Ⅴ章 「社会」の再構築へ
あとがき

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そして、西澤晃彦の「この〈選書〉がすごい!」

学生時代に、人が群れる(=ムラをつくる)ことの意味を教わった守田志郎『日本の村――小さい部落』(農村漁村文化協会、人間選書、2003年)と近代をたやすくこえられない近代人である私に近代の見取り図を示してくれた桜井哲夫『近代の意味――制度としての学校・工場』(NHKブックス)には、今でも恩義を感じています。

選書ではありませんが、講談社ブルーバックスでかつて出ていた『日本昆虫記』(ブルーバックス版は1967年発行)の第1巻「ハチの生活」を紹介しておきたいと思います。特に冒頭の山本大二郎「青色のハチ ルリジガバチの生活」は、戦前・戦中の重い空気の中で淡々と積み重ねられていくルリジガバチの観察の記録がすばらしく、観察記録の古びなさとともに観察するということが人にとっていかなる意味をもつのかを考えさせられてしまいます。

私見では、現在の新書は、かつての月刊雑誌の代替品でありそれゆえ賞味期限も短くならざるを得ないと思います。選書に新書よりももう少しだけ長い賞味期限が求められているとするならば、対象が虫であれ人であれ、観察の記録性によって時間をこえていくという方法が模索される場にもしてほしいなと勝手に期待しています。

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なお、2月の河出ブックスには、もう1点、片木篤さんの『オリンピック・シティ 東京1940・1964』があります。

片木さんは、名古屋大学大学院教授(建築設計・意匠)。今回の本では、幻に終わった第12回(1940年)と、戦後復興を世界に知らしめた第18回(1964年)の2回のオリンピックで東京はいかに変容したのかを、都市・建築の視点から読み解いていきます。

こちらもぜひご期待ください。


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2009年09月22日

『「格差」の戦後史――階級社会 日本の履歴書』橋本健二(河出書房新社)

「格差」の戦後史――階級社会 日本の履歴書 →bookwebで購入

「河出ブックス」の創刊ラインナップ紹介、続いては、橋本健二さんの『「格差」の戦後史――階級社会 日本の履歴書』です。

橋本さんは、武蔵大学社会学部教授。専攻は社会学。データを駆使して日本社会の階級構造を浮き彫りにする研究を積み重ねられており、また、趣味と研究を兼ねて「居酒屋考現学」を提唱されています。

今回の本は、近年活発になっている格差や貧困をめぐる論議に「戦後」という少し長いスパンの視点を与えると同時に、同じく近年活発になっている戦後史の問い直しという文脈には「格差」という切り口を与える、非常に参照のしがいのある日本社会論必携の一冊です。

橋本さんから読者のみなさんへのメッセージです。

「戦後復興期、高度成長期を経て現代にいたるまで、それぞれの時期にはその時代に特有の格差があり、これが政治や社会のあり方に大きな影響を与えてきました。本書は、格差という視点から戦後日本の全体像を描こうとしたもの。戦後史の概説書としても、楽しく読んでいただけると思います。」

目次(章タイトル)は以下のとおりです。

序 章 舞台装置は階級構造――「フィガロの結婚」と「天国と地獄」をめぐって
第1章 格差をどうとらえるか
第2章 格差縮小から格差拡大へ――戦後日本のメガトレンド
第3章 貧しさからの出発――敗戦から1950年まで
第4章 「もはや戦後ではない」――1950年代
第5章 青春時代の格差社会――1960年代
第6章 「一億総中流」のなかの格差――1970年代
第7章 格差拡大の始まり――1980年代
第8章 日本社会の再編成――1990年代
第9章 新しい階級社会の形成――2000年代

ぜひ押さえておきたいデータも満載です。

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橋本健二の、「この〈選書〉がすごい!」

①石井寛治『日本の産業革命――日清・日露戦争から考える』朝日選書、1997年
日本経済史の大家が、長年の研究成果を惜しげもなく詰め込んだ一冊。近現代史の、まさに必読書です。

②岡本哲志『銀座四百年――都市空間の歴史』講談社選書メチエ、2006年
著者がライフワークとする、銀座研究の成果をわかりやすくまとめたもの。豊富な地図や建物の図解は、文庫や新書には収められない精密なもので、選書ならではの企画です。


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