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2009年12月24日

『竹内好――アジアとの出会い』丸川哲史(河出書房新社)

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河出ブックス創刊第3弾、来年1月上旬発売のタイトル2点をご紹介しています。
2点目は、丸川哲史さんの『竹内好――アジアとの出会い』です。

丸川さんは、明治大学政治経済学部准教授(東アジア文化論・台湾文学)。20世紀東アジアの視点から、現在の大陸中国、台湾情勢についても活発に発言していらっしゃいます。

今回は、戦後思想史において独特の光彩を放ち、ナショナリズムやアジア主義の問題を考える上で不可欠な仕事を残した竹内好の思想を、魯迅、周作人、武田泰淳、京都学派、毛沢東、岸信介という6つの思想的出会いをとおしてアクチュアルに問い直します。

なお、本書は、河出ブックスのシリーズ内シリーズ、【人と思考の軌跡】の最初の1冊として刊行いたします。人物とその思想にスポットを当てたものを1つのラインとしてまとめていきます。続刊準備中ですのでご注目ください。

丸川さんから読者のみなさんへのメッセージです。

「21世紀はアジアの時代だ、と言われている。しかしアジアは、想定されるほど自明なものではない。それは、(漢語で)亜細亜とも(カタカナ語で)アジアとも表記されるなど、多分に縁遠いものなのだ。だからその意味で、アジアは、思考の前提であると同時に思考する対象そのものでなければならない。アジアと出会うこと、その出会い方が重要なのだ。」

目次(章タイトル)は以下のとおりです。

はじめに 竹内好と出会うということ
第一章 魯迅との出会い――「支那」と「中国」
第二章 周作人との出会い―― 日中戦争の文化空間
第三章 武田泰淳との出会い――人間と歴史
第四章 京都学派との出会い――「世界史」の書き換え
第五章 毛沢東との出会い――現代中国と「近代の超克」
第六章 岸信介との出会い――六〇年安保闘争と不服従の遺産

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そして、丸川哲史の「この〈選書〉がすごい!」

①白井聡『未完のレーニン――<力>の思想を読む』(講談社選書メチエ、2007年)
ソ連・東欧などの「社会主義圏」崩壊後の世界を読み解くためには、是非ともレーニンを読む必要がある。しかしそれは、従来の読み方ではなく、レーニンの思想が持った内在的な「力」をとりだすことを通じて可能となる。

②毛利嘉孝『ストリートの思想――転換期としての1990年代』(NHKブックス、2009年)
2009年は派遣村により始まった。80年~90年代にかけて廃れてしまったように見えた階級の構図は、空間を思想の対象とすることによって蘇るかもしれない。ストリートに宿る力を可視化することが、今求められている。

③小林敏明『廣松渉――近代の超克』(再発見日本の哲学、講談社、2007年)
マルクスの思想は、もはや外来思想ではない。マルクスの予言を参照枠として、日本も含む現代世界が構成されてきたからだ。日本においてマルキストたることが孕む豊かな経験(思想経験と実践経験)を理解することは、まさに近代日本を理解することに繋がる。


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2009年12月21日

『心霊の文化史――スピリチュアルな英国近代』吉村正和(河出書房新社)

心霊の文化史――スピリチュアルな英国近代 →bookwebで購入

ご無沙汰いたしました。
今月は、長山靖生『日本SF精神史』 、飯沢耕太郎『写真的思考』の2点を刊行いたしました。ぜひお手にとってご覧ください。

また、創刊ラインナップの橋本健二『「格差」の戦後史』が、昨日の朝日新聞書評にて絶賛されました。こちらもぜひご覧ください。

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さて、河出ブックス創刊第3弾となる、来年1月上旬刊行予定の2点をご紹介していきます。

まずは、吉村正和さんの『心霊の文化史――スピリチュアルな英国近代』です。

吉村さんは、名古屋大学大学院国際言語文化研究科教授(西洋神秘思想史・ヨーロッパ文化史)。『フリーメイソン――西欧神秘主義の変容』(講談社現代新書)というロングセラーもお持ちです。

19世紀後半のイギリスを席巻した心霊主義。降霊会、骨相学、神智学など、広い裾野を持ちながら、現在は懐疑的な目で見られがちなこの現象が、ダイナミックな精神運動として存在していた時代を多面的に読み解くのが今回の本です。

吉村さんから読者のみなさんへのメッセージです。

「これまで心霊主義へのアプローチは、あまりにも興味本位に傾きすぎていたという印象があります。心霊主義は文化史・思想史上では主流となったことはありませんが、たとえば19世紀末から20世紀初頭の抽象絵画、分析心理学(ユング)、レッチワース田園都市などが登場してくる精神的マトリクス(母胎)の役割を果たしています。同じように周縁的なテーマである「フリーメイソン」の場合もそうでしたが、本書がヨーロッパの主流文化を見直す契機になればと思っています。」

目次(章タイトル)は以下のとおりです。

序 章 心霊主義の誕生
第1章 骨相学、人間観察、催眠術
第2章 心霊主義と社会改革
第3章 神智学とオカルト
第4章 心理学との融合
第5章 田園都市と心霊主義

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そして、こちらもお楽しみください。

吉村正和の「この〈選書〉がすごい!」

①森孝一『宗教からよむ「アメリカ」』(講談社選書メチエ、1996年)
アメリカ合衆国の建国過程において「宗教」はさまざまな形で関与したが、その傾向は現代においてもなお継続しているという視点から、モルモン教、アーミッシュ、人民寺院などを読み解いている。多民族国家アメリカの統合原理について理解を深めてくれる本。

②川崎謙『神と自然の科学史』(講談社選書メチエ、2005年)
普遍的な学問であるように見える近代自然科学も、西欧文化が独自に生み出した個別文化の出来事であることを、平易な語り口で説いている。科学を日本語と日本文化という文脈の中で認識しようとすることの危うさについて気づかせてくれる。

③青木保『文化の翻訳』(東京大学出版会UP選書、1978年)
本書によると、異文化理解とはたんに他者を理解し、他者の文化を自国文化に翻訳することではなく、文化の多様性と差異性の中に人類の純粋文化の可能性を求めていくという姿勢が必要である。表層的な異文化理解のあり方に警鐘を鳴らす一書。


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