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2010年01月31日

『朗読 Lolita』 Nabokov & Jeremy Irons (Random House)

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 『ロリータ』の朗読CDである。アメリカは通勤に鉄道よりも車を使うことが多いので運転しながらでも楽しめる録音書籍が普及しているが、これは並の録音書籍ではない。朗読しているのはなんとエイドリアン・ライン版の『ロリータ』に主演した名優ジェレミー・アイアンズなのである。

 抜粋版も出ているが、こちらは完全版で全部で10時間以上ある(なぜか抜粋版よりも安い)。本の付録ではなく純然たる10枚組のCDだが、書籍扱いで販売されており ISBNもついている。

 CD1枚につき 10前後のトラックにわかれており、WMPでリッピングすると xxChapterというファイル名になるが(xxは数字)、トラックと章割りは一致しない。"Lolita, light of my life, fire of my loins..."という有名な書きだしは 1枚目の第2トラックの60秒目からはじまる。第二部のはじまりは 5枚目の第8トラックの40秒目からだ。なぜ章割りと一致させなかったのかはわからないが、原書を参照しながら聞く場合は注意が必要だ。

 携帯用のデジタル・オーディオ・プレイヤーで聞くためにリッピングしたが、320kbpsのmp3では1.5G近くになる。語学教材と割りきって128kbpsにすれば 600Mくらいでおさまるが、それではもったいない。

 というのも、ジェレミー・アイアンズは単に読みあげるだけでなく、演技しているからだ。架空の序文はいかにも学者然としたもったいぶった読み方だが、ロリータに呼びかける条では一転して情感たっぷりの甘い声になる。生い立ちを語る条では夢見るような響きがまじる。アナベルの思い出にふれた条のなんと甘美なこと。

 アイアンズの声は麻薬的で何時間でも聞いていたくなる。大体は淡々と読んでいくが、その声は時に激し、時に冷笑的、時に悲しみをたたえる。目で活字を追うだけではわからなかったが、ナボコフの文章はこんなにも表情豊かに千変万化していたのだ。

 語学教材としては高級すぎるが、こんな素晴らしい録音が2000円ちょっとで手にはいるのである。円高も悪くない

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