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2008年01月31日

『図説 アステカ文明』リチャード・F.タウンゼント(創元社)

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 アステカ文明を簡潔に紹介した概説書である。著者のリチャード・タウンゼントはメキシコ先史時代美術の専門家で、シカゴ美術院で主事をつとめているということだが、本書のあつかう範囲は美術のみならずアステカの歴史・文化全般におよんでいる。「図説」をうたうだけに図版が多く、眺めているだけでもおもしろい。アート紙に印刷しているので鮮明だが、その代わり本が重くなった。電車の中で読むのはきつい。

 前半は歴史をあつかっている。コルテスによる征服と帝国の終焉を語った後、先行文明であるテオティワカン文明から説き起こし、メキシコ盆地に遅れて移住してきた四部族が連合して建国した経緯を語り、帝国の全盛時代に筆を進めていく。帝国といっても服属する諸部族の連合体にすぎず、つねに内部対立をはらみ、それが少数のヨーロッパ人にやすやすと征服される遠因となった。

 後半は時間軸を離れ、共時的な視点からアステカ人の生活を描いている。まず、神話手がかりに精神世界の深みにわけいった後、庶民の日常を紹介し、支配階級である祭司・戦士・貴族を語っている。

 中央アメリカのピラミッドはエジプトと違って、古いピラミッドを覆うように新しいピラミッドを築き、何重もの入れ子構造になっている。こんな建て方をするのは労力を節約するためと説明されることが多いが、著者によるとそれには霊的な意味あいがあった。

 メソアメリカのピラミッドに特有の特徴のひとつが、何十年、何百年にもわたって、古いピラミッドの上に次々と新しい層を重ねていくことであった。最初は聖地には小さな建物があるだけだが、やがて外側が新しい構造物で覆われて、もとの建物は彫刻や供物や宗教用具もろとも「埋まって」しまう。このような建造物は、内部に何代にもわたる「蓄積」があるため、造る側の人々にとっては霊的な力の宿る特別な建物と感じられるようになる。

 この説明はよくわかる。古いピラミッドを破壊しない理由はこれ以外に考えにくいと思う。

 アステカには絵文字もあったが、基本的には語りの文化であり、学校ではもっぱら説得力のある語り方を教えた。語りをつきつめていくと詩になるが、アステカの詩は隠喩が中心であり、隠喩の体系が図像や儀式、絵文字をも決定しているという。たとえば「ヒスイのスカート」は水の隠喩だが、湖水の女神チャルチウトリクエはヒスイのスカートをはいた姿であらわされ、儀式でチャルチウトリクエに扮する神官は緑色のスカートをはいたということである。北米インディアンの詩集を読んだことがあるが、やはり隠喩が中心だったように記憶している。アステカは北米インディアンとも交流があったわけで、共通する語法をもっていたのだろう。

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