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2008年01月30日

『衝撃の古代アマゾン文明』 実松克義 (講談社)

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 いかにもという題名と著者が考古畑でない点で損をしてるが、南北アメリカ大陸の歴史のみならず、今後の環境問題を考える上できわめて重要な意義をもった本である。

 著者の実松克義氏は宗教人類学者で、現代のシャーマンの聞きとり調査をもとに古代マヤの精神世界を探るという興味深い研究を行なっている人である。考古学プローパーのマヤ学者から見ればエッジな試みであり、敬遠する向きもあるかもしれないが、『マヤ文明 新たなる真実』をはじめとする一連の著書は驚くべき洞察にみちており、マヤに関心があるなら一読する価値がある。

 実松氏は現代アンデスのシャーマンから、インカの最もすぐれたシャーマンはスペイン人から逃れるためにアマゾンに向かったという口碑を教えられ、アマゾン上流域に関心をもっていたという。2000年にはじめてペルー・アマゾンを訪れるが、そこでアマゾン中流域のボリビアのモホス平原に謎の遺跡群があるという話を耳にし、8月にボリビアのトリニダードに旅行する。わずか数日の滞在だったが、大規模な水利施設とおぼしい遺跡と現地の考古学者の話から古代モホス文明の存在を確信し、翌年から予備調査をはじめ、2005年から考古学者の参加をえて、ボリビア国立考古学研究所と共同の「モホス・プロジェクト」を立ちあげている。

 モホス・プロジェクトはロマと呼ばれる遺構から身長180cmで、額の位置に金属円盤をつけたシャーマンとその従者とおぼしい人骨を発掘するなど成果をあげており、TBSによって2006年3月、2007年5月、12月の三回、特番が放映されているが、本書は著者がプロジェクトに着手する前年の2004年に出版されているので、独自の調査内容といえるものは含まれておらず、あくまでモホス文明を紹介した紀行文にとどまっている。

 わたしは本書をTBSの最初の特番が放映された直後に読んだが、今回再読して『1491』と重なる部分が多いことを確認した。テラ・プレータの話題はもとより、アマゾン河口のマラジョー島で大規模な農業遺構を発見したアンナ・ルーズベルトと保守的なベティ・メガーズの確執もちゃんと書いてあった。モホス文明のくだりはどちらもウィスコンシン大学のデネヴァンの"Cultivated Landscapes of Native Amazonia and the Andes"(2003)の業績をもとにしているということなので、ニュアンスの差こそあれ大体同じことが書いてある。専門家の「常識」を書いたという『1491』の著者の断り書きがはからずも裏づけられたわけだ。

 モホス文明を日本に最初に紹介した意義は大きいが、あれもこれも盛りこみすぎているし、写真が不鮮明でテレビの迫力ある映像にはおよびもつかない。モホス・プロジェクトの成果を一日も早く出版してもらいたい(付記:2010年に『アマゾン文明の研究―古代人はいかにして自然との共生をなし遂げたのか』が刊行された)。

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