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2007年11月29日

『多世界宇宙の探検』 ビレンケン (日経BP社)

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 著者のビレンケンは旧ソ連出身の宇宙論研究者で、本書はサスキンドの『宇宙のランドスケープ』とほぼ同じ立場で書かれている。「多世界宇宙」とはサスキンドのいう「メガバース」にあたり、そこに無数の「島宇宙」(サスキンドの「ポケット宇宙」)が生みだされている。

 『宇宙のランドスケープ』を読んだ後だったので、それほどひっかからずに読めた。サスキンドがひも理論というミクロの世界の研究者なのに対し、ビレンケンは宇宙論というマクロの世界の研究者である。サスキンドの理論は無数の島宇宙が存在するようになってからの話が中心で静的な印象を受けるが、ビレンケンの方は永久インフレーションにより無数の島宇宙が生みだされていく生成過程に重点をおいている。光速を越える速度のインフレーション過程が今でもつづいているという頭がクラクラするようなビジョンはビレンケンの独擅場だ。仮説のぶっとび具合は『宇宙のランドスケープ』をしのいでいる。

 『宇宙のランドスケープ』と本書はアプローチの仕方が対照的であり、二冊を合せ読むことでよくわからなかった部分がかなりわかってきた。しかし依然としてわからないところも多い。たとえば永久インフレーションによって生みだされていく無数の島宇宙と、量子力学の多世界解釈で分岐していく無数の平行宇宙がどうして結びつくのだろう。『宇宙のランドスケープ』で一番疑問だったのがそこだったが、本書を読んでも疑問は晴れなかった。

 なお、多世界宇宙の中には、われわれの宇宙とまったく同じ宇宙が無数に存在するという仮説はサイフェの『宇宙を復号する』にも書かれていたが、サイフェが島宇宙の情報量の有限性という切口から論証するのに対し、本書では量子論の多世界解釈という切口から攻めている。異なる観点から出発しているのに、同じ結論に達しているのである。

 われわれの分身は多世界宇宙のどこかに存在しているのだろうか。存在してもおかしくないという気になってきている。

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