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2006年11月28日

『量子が変える情報の宇宙』 フォン=バイヤー (日経BP社)

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 邦題だけ見ると量子コンピュータの本のようだが、原題は『情報――新しい科学言語』(Information: The New Langage of Science)で、情報という観点から科学史を読み直そうという壮大な試みらしい。

 著者は大学で物理学を教えるかたわら、一般向けの啓蒙書を多く上梓しているということだが、数式を使わず、たとえ話で解説しようと工夫しているのはわかるが、決してわかりやすくはない。テーマそのものが最先端で、南海ということもあるのかもしれないが。

 本書は四部にわかれている。第一部「背景」では情報という概念がどのように生まれ、科学をどう変えたかを語り、第二部「古典的概念」ではシャノンの情報理論と表裏の関係にあるエントロピー概念を解説している。第三部「量子情報」では量子状態の重ねあわせから「キュビット」(量子ビット)という新たな情報の単位が生まれた経緯を語り、第四部「現在進行中の研究」では、いよいよシャノンを越える新しい情報理論を紹介している。観測者問題と情報の主観性の問題をもっと詳しく教えてほしかったが、シャノンでは等閑にふされていた情報の質を考慮しようということらしい。

 数式を使わずに語ろうという著者の努力はわかるが、たとえ話は必ずしも成功しているわけではない。特に第一部と第二部の出来は今一つのように感じた。噛んで含めるように語ろうとするあまり話がくどくなり、見通しがよくないのである。『冷蔵庫と宇宙』を読んだ直後だったので議論は追えたが、読みとおすのは苦痛だった。情報理論について一般向け解説書程度の知識があれば、本書の前半は読み飛ばしてかまわないかもしれない。

 第三部はのびのびと語られており、かなり読みやすくなっている。第四部は本書の一番の読ませどころで、イアン・コーリーとザイリンガーの新たな情報理論が好奇心をそそる。わたしのような門外漢にはよくわからなかったが、情報理論の最先端の動向を解説した最初の啓蒙書であるのは確かだろう。

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