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2006年09月29日

『ABOUT WRiTiNG』 Delany, Samuel R .(Wesleyan Univ Pr)

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 昨年出版されたディレイニーの創作論集である。

 ディレイニーは1977年に『The Jewel-Hinged Jaw』という評論集を出しているが、フランス構造主義かぶれの文章に辟易した。今回の本は資料のつもりで買ったが、ちょっと読んでみると拍子抜けするくらい平明な語り口で抵抗なく読めた。内容も小説を書きたい人向けの指南書といった趣きで、率直かつ丁寧である。

 第一部は「七つのエッセイ」と題され、1960年代末から1980年代はじめまでに発表された序文、エッセイ、講演、講義が含まれている。ロラン・バルトが言及されたりはするが、どれも創作のコツについて率直に語っていて、作家とは思えないくらい「いい人」という感想をもった。

 第二部は1990年代後半に作家仲間にあてて書かれた4編の書簡が集められている。やけに文学的な描写が多いし小説論や創作論を用意周到に語っているので、後で本にすることを念頭に書いたものだろう。

 第三部には5本の長いインタビューがおさめられている。まだ一本目の「パラ*ドクサ」誌の1998年のインタビューしか読んでいないが、『Atlantis:Model 1924』 という近作の話が主である。

 この小説は17歳でノースカロライナからニューヨークに出てきたディレイニーの父親の体験を書いたものだそうで、父親より3歳年長の夭折した詩人、ハート・クレインの詩を下敷きにしているという。

 ディレイニー自身はブルックリン生まれなのに、彼の作品の主人公は田舎から都会に出てきてカルチャーショックを受けるうぶな若者が多いのが不思議だったが、父親のことを書いていたと考えれば説明がつく。

 相当な自信作だったらしいが、他の作品は15万部から25万部刷ったのに、『Atlantis: Model 1924』は8万5千部しか刷ってもらえなかったとぼやいている(アメリカの作家は桁がちがう)。

 最後に「付録」として作家志望者向けのヒント集が載っている。あまりにも懇切丁寧なので、レッスン・プロになってしまったのかと寂しくもあった。

 なおSF作家としては異例のことだが、ディレイニーの作品は現在でもほとんどの作品が入手可能である。1975年の『Dhalgren』と1976年の『Trouble on Triton』はもとより、1979年から書きはじめられたNeveryon四部作(『Tales of Neveryon』、『Neveryona』、『Flight from Neveryon』、『Return to Neveryon』)はウェズリアン大学出版局から再刊されている。

 他に注目作品としては『Non-stop』と『Riddley Walker』がある。

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