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2006年08月29日

『ことばの歴史』 ロジャー・フィッシャー (研究社)

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 著者のロジャー・フィッシャーは言語学者で、イースター島のロンゴロンゴ文字やファイストスの円盤文字などの未解読文字に関する論文を書いているそうである。謎の文字に興味をもつ言語学者はあまり多くない。

 本書は話し言葉の歴史を一望した概説書だが、つづいて出版された『文字の歴史』、『読むことの歴史』(未訳)とともに言語史三部作をなしている。

 三部作の一冊目だからか、本書には「アリのことばからインターネットのことばまで」という気宇壮大な副題がついている。しかし、300ページそこそこの分量の本で昆虫やコンピュータの言語まで風呂敷を広げるのは無理があった。

 昆虫や鯨やイルカの「ことば」、さらにはコンピュータのプログラミング言語までとりあげてはいるが、人間の言語と同じ土俵で論じるのは無駄である。はっきりいって、この部分は理系的な雑学をならべただけで終わっていると思う。

 ただし、ヒト以外の人類の言語について考察した部分はおもしろかった。ネアンデルタール人は解剖学的な制約からイ、ア、ウという基本的な三つの母音が発音できなかったろうとか、ホモ・エレクトゥスは条件構文が理解できたとかは、もっと詳しく知りたい。

 三章から六章までは言語の系統を論じており、本書の中核をなす。インド=ヨーロッパ語族偏重におちいらないように、アジアとアフリカの語族に多くの紙幅をさいている点は評価したいが、なじみのない固有名詞がならぶので、百科事典的な印象を受けた。

 第七章「社会と言語」は文系的雑学を披露している部分だが、ここが一番読みでがあった。格好いいという意味で使われるようになった cool は、英語本来の cool とは関係なく、西アフリカの kul(最高、すばらしい)という言葉が起源だというようなトリビアがちりばめられているのである。ジェンダー論争や外来語追放運動をあつかった部分もおもしろい。

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