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2006年08月26日

『図説 アジア文字入門』 東京外大AA研編 (河出書房)

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 「ふくろうの本」シリーズから出た文字図鑑で、漢字、アラビア文字、インド文字などアジアの多彩な文字が一望でき、ため息が出てくる。

 編纂は東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所で、同研究所が2001年から進めている「アジア書字コーパスに基づく文字情報学の創成」(GICAS)というプロジェクトの一環として生まれたという。プロジェクト名は厳めしいが、中味はビジュアル中心で、大学の研究所の産物とは思えないくらい楽しい本に仕上がっている。

 おそるべきは知識量だ。わずか100ページそこそこの本で、半分以上が図版だが、アジアの文字に関する限り、数倍の分量のある欧米人の書いた文字の概説書より、桁違いの量知識が詰めこまれている。

 欧米で出ている最近の文字の概説書はアルファベット中心主義から脱却しようとしているが、せいぜい漢字を重視するくらいで、アラビア文字やインド文字はアルファベットの歴史の一挿話としてしかあつかっていない。なまじ表音文字であるだけに、欧米人の目にはアラビア文字やインド文字は出来そこないのアルファベットと映るらしいのだ。

 しかし、アラビア文字文化圏やインド文字文化圏は広がりにおいても、人口においても、伝統においても、アルファベット文化圏や漢字文化圏に決して引けをとっていないし、今後、いよいよ重要になっていくだろう。

 日本はアラビア文化やインド文化と直接の接触がすくなかっただけに、偏見なしに接することができる。街を歩いてもハングルやタイ文字、デーヴァナーガリ文字を普通に目にするようになってきたし、地域によってはアラビア文字も珍らしくなくなっている。

 日本でGICASのようなプロジェクトが進められているのは非常に意義深い。アジアの文字文化の気の遠くなるような厚みにふれ、欧米起源の偏狭な文明観から脱するためにも、ぜひ多くの人に手にとってもらいたい本である。

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